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怪奇シリーズ 1575年の怨霊

 タイタンホークの修理中、佐古水はセイビスに来ていた。セイビスは金属や武器などの加工でも有名で佐古水は刀の研磨や手入れを依頼していた。仕事が終わる間、一緒に来ていたエメラナと空咲の買い物に付き合っていた。

「佐古水〜!どう?これ可愛くない?」

「悪い。俺、可愛い物とかあまり詳しくない。」

「も〜、可愛いは知識じゃなく感性だよ!ホラッ、どうエリー?」

「はい!可愛いです!」

 服を選んで楽しそうにしている2人。その様子を見ているとこそこそ話している人達の声が気になった。佐古水がその人達の話を聞いていると幽霊という単語が聞こえた。気になった佐古水はその人達に聞いてみる。

「どうかしました?」

「あらイケメン❤…じゃなくて、幽霊よ。見たことない格好の幽霊がまた昨夜出たみたいなの。」

「幽霊。見たことない格好っていうのは?」

「鎧…とも違うような変な格好で片側が刃じゃない剣を持っていたわ。」

「変な兜も着けていたわよ。」

「警官隊がその幽霊を調べようとしたけど”のぶなが…のぶなが“と呟きながら襲ってきて大変だったって。」

「のぶなが…」

 佐古水はお礼を言って空咲達の買い物に付き合った。

 その夜、佐古水が1人でその幽霊を探している。しかし、気になったのか空咲とエメラナが跡を付けていた。

「どうした?」

「うっ!バレてたか。なんか佐古水が知らない人と話してたから気になって。」

「それで誰かと待ち合わせでしょうか?」

 2人が佐古水に近付く。

「待ち合わせというより捜索だな。最近、噂になっている幽霊探し。」

「ゆ、幽霊…」

 幽霊という単語に空咲はビビる。けど、エメラナは目をキラキラさせていた。

「幽霊!ゴースト!私好きです!そういうオカルト!」

「嘘でしょ。」

「どんなゴーストですか!?」

「格好はよく分からんがのぶながと呟いていたらしい。」

「信長?あの織田信長?」

 空咲が?を浮かべている。すると、ピーという笛の音が聞こえてきた。3人は急いでそこに向かう。そこには蒼白な顔に口は大きく裂け目は赤く吊り上がった落ち武者みたいな人物が警官隊に向かっていた。警官隊もライフルや魔法で攻撃するが全てすり抜けてしまっていた。

「え?あれ完全に落ち武者じゃん。まさか、異世界に来て初めて落ち武者を見ることになるとか。」

「ジャパニーズホラー!落•ち•武•者!」

 引いている空咲。興奮しているエメラナ。佐古水はそんな2人を置いて前に出る。落ち武者は腰を抜かしてしまった警官の前で止まり刀を振り上げた。そこに佐古水が銃を撃つがすり抜けてしまう。落ち武者が刀を振り下ろす。佐古水は危機一髪で警官を助けた。

「まさか、異世界で落ち武者を見ることになるとはな。」

「•••お前…は誰…だ…」

「話せるのか。俺は佐古水剛介。日本人だ。」

「織田の手先か…」

「いや。そういうお前はどこだ?」

「俺は武田軍内藤昌豊隊冬里乱次郎。」

 落ち武者は冬里乱次郎と名乗った。

「なるほど。武田軍、織田信長…お前、長篠の戦いで戦死した武士か。」

「「?」」

 佐古水の言っていることが分からない警官隊は?を浮かべた。同じように空咲とエメラナも?を浮かべる。

「お前らは知っておけ。1575年に起きた徳川・織田連合軍と武田軍との間で繰り広げられた、三河長篠城を巡る攻防戦だ。」

「日本の歴史、難しいです。」

「その前に死んで異世界に来たら私達のように生き返らない?なんであいつ異世界に来てまで幽霊なの?」

「そこは知らん。」

 冬里は刀を構え襲ってくる。佐古水は刀を避ける。冬里の連撃を避ける。避けながら銃を撃つがやっぱりすり抜ける。そこに空咲が剣を横に振り払う。すると、冬里は刀て受け止めたのだ。

「あれ?効いた?」

「どうやら、剣とかなら効くようだ。空咲、ここは任せた。」

「え?ちょっとどこ行くの!?」

「すぐ戻る!」

 佐古水はそう言って走って行く。冬里には剣が効く。それを知った警官隊はサーベルを取り出して冬里に向かう。しかし、硬い鎧と荒々しい攻撃は空咲や警官隊をあっさり返り討ちにしてしまう。エメラナが風を起こして攻撃するもすり抜けてしまう。

「鉄砲…そう鉄砲さえなければ俺は敗けずあの方に勝利を届けることが出来た!武田殿が…最強の武田軍が敗けることはなかった!」

 冬里はユラユラ揺れながらエメラナに近付く。そこに空咲が来て応戦するも魔法が効かずパワーで圧倒してくる冬里に苦戦してしまった。冬里に弾き飛ばされ倒れる空咲。冬里の刀が空咲目掛けて振り下ろされる。その時、佐古水が来て刀を受け止めた。その手には手入れが終わっている刀が握り締められていた。

「遅い!」

「悪い。これを取りに行ってた。」

 佐古水は冬里を弾き飛ばす。冬里はズサササと音をたてて下がる。佐古水は刀を構えると深呼吸した。

「•••俺は日比野軍佐古水隊隊長佐古水剛介!冬里乱次郎殿に一騎討ちを申し込む!」

 佐古水が名乗りをあげ布告する。冬里はうっすら笑みを浮かべると刀を構えた。

「•••武田軍内藤昌豊隊冬里乱次郎。いざ、尋常に…」

「「勝負!」」

 佐古水と冬里が同時に飛び出す。2人の刀がぶつかり合い激しい火花を散らす。鍔迫り合いを制したのは冬里だ。冬里は佐古水を押し出すと刀を激しく振った。怨霊となった彼にはスタミナがなく無限に刀を振れる。しかし、佐古水にはスタミナがある。このまま戦いが続けば佐古水が負けてしまう。そう思い援護しようとすると佐古水で来るなと目で訴えた。

「だ、大丈夫なの?」

「今は佐古水さんを信じましょう。それに…」

「それに?」

「漢と漢の一騎討ち。ワクワクします!」

「エリーってそんなキャラだっけ。」

 警官隊も2人の一騎討ちに手出し出来ずにいる。そんな中でも佐古水と冬里の激闘は続いていた。手に汗握るバトルもいよいよ終盤に差し掛かる。佐古水が冬里から離れると刀を鞘に納め構えた。

「あれは…」

「知ってるの?」

「漫画で何度も見ました。居合いです!」

「•••」

 キラキラさせながら解説するエメラナ。冬里は佐古水を見ると刀を高く上げた。風だけが音をたてる。全員が息をのみ見守る。空咲の汗が地面に落ちた。その瞬間、冬里が走り出した。それに合わせて佐古水も走り出す。そして、互いにすれ違う瞬間に刀を振るった。冬里の刀は佐古水髪を斬り佐古水の刀は冬里の首をはねた。

「•••佐古水剛介…見事。」

「長篠の戦いにはあんたのような忠義の武士がいたと覚えておくよ。」

「•••感謝する。もう思い残すこと無し…」

 そう言って冬里は消えた。いや、成仏した。佐古水は刀を鞘に納める。こうして、幽霊騒ぎは幕を下ろした。


「何したら一晩で刀が刃毀れするんだい!?」

「すみません。」

 翌日、鍛冶師に怒られる佐古水がいた。

今回祓った怪獣


怪獣名 堕武者

別名 怨霊武士

身長 1.7m

体重 65kg

特徴

 長篠の戦いで織田•徳川連合軍の鉄砲隊に敗れ名前すら残すことが出来なかった冬里乱次郎という男の怨念が異世界に来て実体化したもの。誰にも覚えられることのない悲しみで強くなり幽霊として自分の存在を知ってもらったことで実体化した。

 武器は怨刀戀丸。鉄砲隊に敗れた怨念からかあらゆる銃火器や魔法をすり抜けてしまい刀や剣しかダメージを与えることが出来ない。

 最後は佐古水との一騎討ちに満足して成仏した。

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