表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
241/314

悲しいマラソン

 WISHは今シャールという軍事施設にいる。

 時を遡ること半日前

 サンティーラで補給をしていると偶然芹沢と出会った。

「久しぶりです芹沢さん!」

「君達、こんなところにいたのか。…丁度いい。」

「?」

「君達に見せたいものがある。」

 芹沢は日比野達の案内のもとタイタンホークに入る。オペレーションルームに着くと懐からUSBメモリを取り出しセットする。モニターに映し出されたのは人型ロボットが島に向けて光線を放つところだった。その光線は凄まじく島を1瞬で消し飛ばしてしまった。

「す、凄い…」

「これは1週間前にシャールで開発されたデストロイレールキャノン通称DRCだ。」

「これがどうしました?」

「この兵器には核が使われている。」

「「「!」」」

 芹沢の言葉に日比野達は驚愕する。元いた世界では核によって大きな被害を受けた歴史がある。そのためその新兵器に対していい印象はなかった。

「この兵器のお披露目を明日シャールで行われる。そこに君達も参加してみないか?」

「俺達が参加ですか?」

「そうだ。シャールの代表コルドウェルは怪獣退治のためなら他の被害や倫理観など考えないマッドサイエンティストだ。奴にこの兵器の危険性を問わなければこれから核の被害が増える可能性がある。」

 芹沢に誘われ少し悩むと日比野はみんなを見回して確認した。みんな、黙って頷き参加する意思を見せた。

「分かりました。俺達も参加します。」

「よし、決まりだ。君達は私の護衛として連れて行く。」

 こうして、WISHは芹沢と共にシャールへと向かった。

 そして今に至る。

 シャールの会議室では新兵器DRCの説明会が開かれている。説明している男がコルドウェル。いかにも科学者という風貌をしている。モニターにはある島を消し去るDRCとそれを搭載した人型ストレイザーが映っていた。コルドウェルが説明を終わらせ質問に移る。すると、立派な服装をしたゴブリンが挙手した。

「はい、ゴーシュ議長。」

「君の兵器は素晴らしい。威力に関しては申し分ない。しかし、その威力と放射能は市街地や避難民がいる場所では使えないのでは?」

「問題ありません。DRCは威力の調整はもちろん、放射能の調整も可能です。しかし、放射能に関しては核融合によるエネルギーを使用しているため完全に0にすることはできません。ですがご安心を。ネオフェイザーにはDRCの他に右腕に取り付けている伸縮自在のクローシザーズ、クローシザーズに内蔵しているクローレイ、左腕に付いているフィンガーガトリングやDRビーム砲、背部ユニットの連装ミサイルでも充分に怪獣を駆除することが可能です。」

 コルドウェルが別の映像に切り替える。そこには他の武装でソードザウルスを倒しているネオフェイザーの姿があった。それを見た芹沢が挙手する。

「どうぞ。」

「もし、今の武装よりも強力な怪獣が現れた場合どうする?」

「それもご心配なく。そもそもDRCに耐えれる怪獣がこの世界に存在しないことは確認済。それに今後そんな怪獣が現れたとしてもそれよりも強力な武装を開発すればいいのです!」

「そんなの血を吐きながら続ける···、悲しいマラソンですよ。」

 夢宮の言葉に隣にいた星雲寺はただ黙って見ていた。すると、夢宮が挙手した。コルドウェルは夢宮を差して質問を受け付ける。

「何故あの島を実験に使ったのですか?」

「質問の意図が見えませんが答えるとしたら都合がいいからです。」

「都合がいいですか?」

「そう。ヒバナクロウ島は人間がいない。絶滅危惧種や島特有の生物もいない。そして、放射能による被害が及ぶ範囲に人は住んでいない。これらの理由によりヒバナクロウ島を実験場として利用しました。」

「その島にいる生物は?」

「もちろん死んでいるでしょう。しかし、科学の発展のためには致し方ない犠牲です。」

「そんな!」

「人間は常に犠牲を払って進歩してきました。犠牲なくして新しい力は手に入らない。それが…」

 コルドウェルが夢宮の質問に答えている時、突然警報が鳴った。何事かと状況を聞いているとモニターに怪獣が映った。シンプルな二足歩行で頭と腕に角が生えている怪獣だ。怪獣は泣いているような悲しい鳴き声をあげながら施設を破壊しこちらに向かってくる。

「あれは?」

「はい。先程スキャンしたところアルマドンと細胞、遺伝子情報が一致しましたがあの怪獣、放射能を発しています。」

 科学者の1人がモニターに怪獣に似ている恐竜型モンスターとスキャンした結果を映した。

「ってことはあの怪獣はあんたのDRCが原因で誕生したというわけだ。」

「それは結果論だ。だが丁度いい。ヒバナクロウ島のアルマドンか…あの怪獣をヒバドンと名称しネオフェイザーはヒバドンの討伐に向かえ。」

『了解しました。』

 コルドウェルの命令でネオフェイザーの操縦士はヒバドンを倒すために向かった。それを見た夢宮は1人会議室を出て行った。

「夢宮君!?」

「どこへ行くんだ!?」

「まさか…」

 夢宮は芹沢達の制止も聞かず外へ出た。

「故郷を失って同じ兵器で死ぬなんて…そんな悲しい運命、止めて見せる!レックスー!」

 夢宮はウルトラレックスに変身し空を飛んでヒバドンのところに向かった。

 ヒバドンはネオフェイザーのフィンガーガトリングの攻撃に怯みながらも口から放射熱線で対抗した。しかし、ネオフェイザーは前面にシールドを張り防いだ。そして、胸を開けDRCを放とうとした。そこにウルトラレックスが現れヒバドンの前に着地した。

「あれは…」

「勇輝!」

 モニターにはヒバドンとネオフェイザーの間に立ちヒバドンを落ち着かせようと奮闘するウルトラレックスが映っている。

 ウルトラレックスはネオフェイザーの攻撃をイージスラッガーで防ぎながらヒバドンの角攻撃を受け止め押し出した。

《レボリュートルナウェーブ》

 そして、ウルトラレックスは向かって虹色光線をヒバドンに放つ。その光線はヒバドンに命中するとヒバドンは少し大人しくなった。ウルトラレックスも大人しくなったヒバドンを見て安心しているとネオフェイザーがクローレイでヒバドンを攻撃したのだ。

「何故です!」

 その様子をモニターで見ていた芹沢がコルドウェルに突っかかる。コルドウェルが操縦士に命令したのだ。コルドウェルは悪怯れることもなく淡々と話した。

「奴は施設を破壊した怪獣だ。それに我々に恨みがあるというのなら尚更ここで叩き潰し復讐の芽は摘んでおかないとな。」

 その理由に芹沢は絶句する。コルドウェルはスマホを取り出し既に向かっていたWISHに命令した。

『このままヒバドンの排除作戦を続行する。お前達はウルトラレックスが邪魔しないようにしろ。』

「ふざけんなよ!どう考えてもあの怪獣に非はねぇだろ!」

 郷田が文句を言う。日比野は新庄に急がせるがこれが精一杯だった。もうすぐでウルトラレックスが見える。すると、エメラナがエネルギー反応をキャッチして至急日比野に報告した。

「大変です!ネオフェイザーから高エネルギー反応です!」

「まさか、DRCか!」

 日比野の予想通りネオフェイザーはDRCをヒバドンに放とうとしていた。攻撃されたヒバドンは怒り狂いネオフェイザーに向かう。ウルトラレックスは何とか抑えたいがコスモミラクルウェーブが効かなくなっていた。刻一刻とDRC発射のタイムリミットが迫る。ウルトラレックスは苦渋の決断をした。レクシウムソードを出し放射熱線を吐くヒバドンの首を斬ったのだ。

「!?」

 ヒバドンは悲鳴ともとれる鳴き声をあげながら倒れる。ウルトラレックスはゆっくり近付きヒバドンの目を閉じる。その目からは涙が流れているように見えた。

「フッ。結局ウルトラレックスが殺したか。」

 その様子をモニターで見ていたコルドウェルは笑っていた。ウルトラレックスはヒバドンの亡骸を抱えると空を飛んで行った。タイタンホークが追いかけて行くともう既にクレーターだけになっていたヒバナクロウ島の中心にヒバドンの亡骸を置いた。

「あいつ…」

 何も出来ず殺してしまったヒバドンを見て悲しむウルトラレックス。日比野達はその様子を黙って見ていた。

今回倒した怪獣


怪獣名 ヒバドン

別名 復讐怪獣

全長 57m

体重 3万2千t

特徴

ヒバナクロウ島に生息していたアルマドンというモンスターが被爆した影響で怪獣化した。口から吐く放射熱線と角が武器。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ