目には目を
藤村と田原を加え無実調査隊を再結成させた郷田達は早速聞き込みを開始した。夢宮達はキュライオスの目撃情報を聞くついでに松田について街の人に聞く。
「素晴らしい人だよ。優しくて正義感が強い人だ。」
「いつも笑顔でみんなと接してくれるよ。」
「胡散臭い。」
「怪獣と戦う時も前線に立って仲間を鼓舞してくれる人。」
「強い剣士ぐらいしか知らん。」
「異世界から来た戦士だ。」
「カッコよくて正義感が強い人です。」
「なんか裏がありそうな気がする。」
道行く人達に聞いてみる。粗方聞いた郷田達は再び部屋に戻り報告する。
「どうだった?」
「聞いた人達のうち、約8割は松田を好意的に捉えていた。」
「実際松田は怪獣を倒した実績がある。好意的に思う人も大勢いる。」
ホワイトボードにいろいろ書き込んでみるがなかなか二人の冤罪を証明する方法が見つからない。すると、佐古水が提案してきた。
「なぁ、俺に考えがあるんだが。…」
翌日、ホテルの前に佐古水と郷田がいた。そこに溝霧がやってくる。
「どうしたの?」
「すまん。ちょっと用事が入った。郷田と一緒に自分の部屋の前で待っていてくれ。」
「うん。分かった。」
佐古水は去り二人は部屋の前に立つ。その様子を陰から見ている人物がいた。しばらくして佐古水が夢宮と一緒に来た。合流した佐古水達はドスドレードを観光している。エルギルの塔に入った夢宮達は中を上がっていく。螺旋状の階段が壁に沿って作られていて中央は空いていた。途中、広いスペースがあったり不思議な模様の壁があったりと元の世界の遺跡とは違う雰囲気を醸し出していた。中を見ているうちに夢宮と郷田がいなくなり佐古水と溝霧の二人っきりになっていた。すると、そこに松田達が現れた。
「この前ぶりだねぇ。」
「何の用だ?」
佐古水が溝霧の前に立つ。すると、溝霧の夢の中で彼を連れて行った担任と思われる女性が溝霧に近付いた。
「ねぇ。本当のことを言って。あの時盗んだのは本当?」
溝霧は首を横に振る。しかし、彼女は彼を訝しげに見ている。佐古水が何か言おうとする。そこに松田が来て佐古水に耳打ちした。
「忠告だよ。彼を信じるとどうなるのか。私は優しいから教えてあげてるのさ。近いうちに分かるよ。」
松田はニヤニヤしながら佐古水の肩を叩き溝霧を睨み仲間と一緒に去っていく。その様子を夢宮とスマホで誰かと会話している郷田といつの間にかいた空咲が見ていた。
また翌日、松田達が泊まっているホテルに郷田がいた。隣には藤村もいる。
「よし。やるか。」
郷田はスマホを取り出してホテルに入って行った。
一方、昨日溝霧が待っていた部屋に誰かが入ってきた。その誰かがベッドの上にあるバッグを見つけると懐から何かを取り出してバッグに入れようとした。その瞬間、電気がついた。
「何しているんだ?」
電気をつけたのは佐古水。そして、その誰かは松田だった。しかも、大きめのブラジャーを持っていた。
「何を持ってる?」
「こ、これは…そう!溝霧がどんな奴か教えるためにこの部屋に入って調べたんだ!そしたら見てみろ!このバッグから女性の下着が出てきた!これは溝霧が下着を盗んだ証拠に…」
「そのバッグ、俺のだぞ。」
「え?」
「それにこの部屋、俺の部屋だ。」
佐古水の発言に松田は黙ってしまう。
「もう一度聞く。何故溝霧が怪しいと言ったお前が俺の部屋でそれを持っている?」
松田は黙ってしまう。
「な、き、昨日お前溝霧に自分の部屋で待つやうに言っただろ!?」
「昨日…ああ、そういえば言ったな。自分の部屋で待ってと。」
「あ•••」
松田はブラジャーを落とし汗をかいた。
「ひ、卑怯だろ!」
「お前が溝霧や藤村にやったことに比べればかわいいものだろ。」
「あ?あ〜。そういうこと。あいつから聞いたか?」
佐古水が話すと松田は髪を掻き上げて開き直った。
「お前も分かってないなぁ。正義とは悪を討つためにある。なら正義でいるためには悪が必要。あの時のバカがなんか場違いなこと言ってたがあんな綺麗事に何の意味がある?」
「俺はその綺麗事の方が好きだ。」
佐古水が松田の言い分に対して言い切る。
「やっぱお前らお人好しのバカだ。今の状況を分かってない。溝霧を嵌めるのには失敗したがお前が下着ドロと俺が言えばこの街のみんなが俺を信じる。」
松田がニヤニヤしながら喋る。
「よく考えてみろ。お前と俺、みんなどっちを信じるかな?」
「じゃあ聞いてみるか?」
「え?」
松田が顔を吊らせる。佐古水は机の上に置いてある布を取る。すると、そこにスマホが置いてあった。
「お前ら、どっちの言い分を信じる?」
佐古水はスマホに向かって話しかけた。その映像は郷田が用意したスクリーンを通してジャスティスフォースのメンバー達に見られていた。




