正義って何?
松田はこちらに気付くと笑顔で近付いてきた。
「初めまして。私は松田康平。ジャスティスフォースのリーダーだ。よろしくね。」
松田は笑顔で手を差し伸べる。一番近くにいた夢宮がそれに応じる。握手を交わした松田は少女の腕を掴む。少女は必死に抵抗する。そこに郷田が割り込んできた。
「ちょっと待った!いきなりそれだと可哀想じゃないか!?」
「いや、彼女は私達のお金を盗んだんです。彼女はそのことを認めずに逃亡してましてね。」
「そんなことする子に見えねぇんだけど。」
「でも事実です。」
松田が笑顔で郷田に話している。すると、松田の後ろにいた男子が溝霧に気付いた。
「あれ?溝霧じゃん!」
男子の声に反応した松田は溝霧を見てニヤリと笑う。
「こんなところで会うとは奇遇ですねぇ。」
「なんだ?溝霧の知り合いか?」
郷田が聞くと松田がニコニコしたまま答えた。
「彼は元私が通う中学校の生徒でしたが彼はそこで窃盗しましてね。」
「え?」
「しかも彼女のスクール水着を盗んだんですよ。」
「は?」
郷田がチラッと溝霧を見る。溝霧は黙ったまま何も言わない。
「いやいや、それはない!溝霧に限ってそれはない!」
「そうだ。そんな変態行動するのは郷田だけだ。」
「いや、さすがに俺もしねぇよ!」
橘が郷田を睨む。郷田が慌てて弁明していると松田が溝霧に手を伸ばしてきた。溝霧は昔のトラウマが甦り目を瞑ってしまう。その時、夢宮が松田の腕を掴んだ。
「ん?何かな?」
「その手を離してください。それと溝霧さんに近付かないでください。」
夢宮が松田を睨む。松田はニコニコしたまま話を続ける。
「私は親切心で助言しているだけですよ。彼がどんな人間なのか。それを教えてあげようかと。」
「いりません。」
「それに私は正義のためにやっている。君に私の正義を邪魔する権利が…」
「黙れ。」
「は?」
「正義はみんなの心に光を灯す勇気の言葉。私利私欲のために使うものじゃない。」
そう言った夢宮は松田の腕を力いっぱい握った。その瞬間松田は悲鳴をあげ少女から手を離して夢宮の腕を掴んだ。しかし、全く動かない。なんとかして夢宮から解放された松田は腕を押さえ下がる。
「私にこんなことして絶対後悔しますよ。」
松田はそう言って去って行く。一番後ろにいた男子生徒がこちらにお辞儀して去って行く。郷田達がビビって夢宮を見ている中、溝霧と少女は彼を違う目で見ていた。
それからしばらくしてタイタンホークに戻って報告をする。
「それで星雲寺の方はどうだった?」
「駄目ね。一応最近まで誰かいた痕跡はあったけどもぬけの殻よ。」
「こっちも同じだ。近くの遺跡全部探してみたが誰もいねぇ。」
「そうか。聞き込みはどうだった?」
「情報ゼロ。この街にはいないみたい。」
日比野が星雲寺、飛鳥崎、舞沢にそれぞれ聞く。そして最後に郷田に聞いた。
「どうだ?」
「夢宮が怖かったです。」
「は?」
郷田の報告に日比野は?を浮かべた。郷田は夢宮を見てガクガクしている。日比野は仕方なく佐古水と橘に聞いた。
「意味分からん。佐古水、橘。どうだった?」
「「夢宮が怖かったです。」」
「嘘だろおい!?」
二人の報告に日比野達が驚愕する。
「待って!佐古水と橘がビビるってどういうこと!?」
「夢宮何やった!?」
「いやぁ~え〜と…あはははは…」
礼崎達が質問攻めするが夢宮はから笑いしながら誤魔化した。それによってさらに郷田達がビビっている。星雲寺に至っては言葉も出ず同じように驚愕しているルギリナとルージュの顔を交互に見た後に夢宮を見るという変な行動をしていた。
その夜。日比野達は捜索のためタイタンホークで待機する組と聞き込みのためドスドレードのホテルに泊まる組に別れて一夜を過ごすことにした。
夢宮は夜風を浴びるためにホテルの屋上にいると隣に溝霧がやってきた。
「ありがとう。」
「ん?」
「あの時僕のために怒ってくれて。僕は声も出なかった。あの時のトラウマがまた甦った。」
溝霧は夢宮と一緒に星空を眺める。
「今まで正義が分からなかった。正義ってなんだろうと思ってた。けど夢宮君のおかげで正義が少し分かった。みんなの心に光を灯す勇気の言葉。僕もその言葉を胸に正義と少し向き合ってみたい。」
溝霧は夢宮を見てクスッと笑うと部屋に戻って行った。
同時刻、別のホテル。
「クソッ。あの野郎、思いっきり握り締めやがって。」
「どうするんだ?」
「このままで終わらせるわけないだろ。何がみんなの心に光を灯す勇気の言葉だ。そんなガキのアニメみたいな台詞吐く奴なんて初めて見たぜ。」
松田は立ち上がると窓に向かって外を眺めた。
「見てろよ。あのガキと溝霧に俺に楯突いたらどうなるか分からせてやる。正義ってのは弱者という悪を強者のことだ。それを教えてやる。」
松田はニヤニヤしながらそう喋った。




