共闘戦線
「お帰り。随分遅かったみたいだけど…」
サーガノアへ帰ったウルトラレックス達。帰り着くとご機嫌斜めなフェーラが出迎えてくれた。
「例の失神事件を解決したらすぐに戻るんじゃなかったのかしら?」
フェーラはミラグライが起こした事件を解決したらすぐ戻ると聞いていたみたいだ。彼女とクニンはミラグライの事件を調査するためにウルトラレックス達が出発した後、他の怪獣についていろいろ尋問されていたためかなり参っているらしい。
「毎日毎日どんな怪獣がいるのかとかマルチワールドへはどうすれば行けるのかとか尋問の嵐よ。私達もそっちに着いて行けば良かった。」
フェーラはグチグチ文句を言っている。実際彼女達が知っている怪獣のほとんどはこちらのデータにも載っている怪獣だった。しかし、二人はある怪獣の情報だけは誰にも話していない。そんなことは知らず日比野が彼女を宥めていた。
「まぁまぁ。こっちもいろいろあってね。」
「いろいろって何?」
フェーラが聞くとウルトラレックスの中からモルフィナが出てきた。
「「!?」」
「初めましてね。私はモルフィナ。元ティモスラニアの妖精女王よ。」
突然の登場に二人は目を丸くした。モルフィナは二人にこれまでの経緯を話す。二人ともまだ理解出来ていないようだが考えるのをやめた。
その時、警報が鳴った。何事かと日比野はギーラに確認するために連絡した。
「ギーラさん!何があったんですか!?」
『怪獣だ。今監視部隊からの映像を•••なるほど、君達と因縁のある怪獣だ。』
そう言ってギーラは日比野達に映像を見せる。そこにはこちらに真っ直ぐ向かっているバルトロスがいた。
「バルトロス!」
「まさかこいつが来るか。」
バルトロスに以前苦戦していたウルトラレックス達は険しい表情になった。しかも、バルトロスは以前よりもデカくなっていて攻撃力も上がっている。
ここで考えても仕方ない。そう判断した日比野はみんなを引き連れタイタンホークに乗り込みSTORCHのストレイザー部隊と共に出撃した。
こちらへ進撃してくるバルトロスの前まで来たウルトラレックス達。バルトロスもウルトラレックスを確認するとうこを止めた。
「ここに来た目的は何?ナンバーズの指令?」
「いや。ナンバーズは既に解散した。ここにいるのはウルトラレックス、貴殿に再戦を申し込みにきた!」
「僕に!?」
バルトロスがいきなり再戦を挑みにきたことにウルトラレックスは驚く。
「なんで僕!?」
「貴殿と我との差を知っておきたいのだ。」
「どうする?」
オペレーションルームで日比野達が会議する。
「バルトロスは卑怯な手段とか使わないし騎士道精神もある。被害を広げないためにも受けた方が良さそう。」
日比野達の会議はモニター越しにギーラも聞いていたようで彼も賛成した。
『すまないレックス。私からもこの挑戦を受けてほしい。私達も出来るだけ援護はする。』
「え、え〜っと•••」
日比野やギーラ達にお願いされたウルトラレックスは渋々受けて立つことにした。巨大化しバルトロスの前に立つ。
「分かりました!その挑戦受けて立ちます!」
「礼を言う。」
バルトロスはお辞儀すると軽めのジャブとして小さなファイアボールを連射してきた。ウルトラレックスはバリアを張って跳ね返す。そのまま突撃しバルトロスの頭にスターライトストレートを打ち込む。しかし、スターライトストレートには効かず跳ね返されてしまう。
「さすがに硬い。なら、燃〜え〜滾れ〜情熱!レックスー!!」
ウルトラレックスはバーンスマッシュタイプに変身しバルトロスを真っ向から迎え討つ。バルトロスも負けじとファイアボールを撃つがウルトラレックスはそれを拳で粉砕した。
「強い。あの時より断然強くなっている。」
「ありがとうございます。」
再び両者ぶつかろうとしている。それを観戦していた日比野達のところに連絡が入る。
『大変です!サーガノアが怪獣に襲撃されています!』
「何!?」
日比野達は急いで映像を見る。そこにはがっしりした体に骨みたいな突起が剥き出しになっており顔は湾曲した角が生えた悪魔みたいになっている禍々しい姿をしていた。
「ギーラさん!この怪獣は!?」
『6年前、近くの村を襲い村民を全て捕食した怪獣だ。我々はその怪獣をスカルバーンと名付け討伐そようとしたがあと一歩のところで逃げられた。しかし、あの時は10mほどだったのに遥かに巨大になっている。』
ギーラは焦りながら説明した。今サーガノアは対バルトロスのために主戦力を回していて今いる戦力では強化されたスカルバーンに対抗出来なかった。
「夢宮!決闘は中止!すぐにサーガノアへ帰投し怪獣を倒す!」
「わ、分かりました!すみません!急用です!」
ウルトラレックスはすぐにサーガノアへ戻った。バルトロスはその場に残されポツンと立っていた。
急いでサーガノアに戻るとスカルバーンが防衛装置を破壊しながら街を蹂躙していた。長い舌を伸ばして次々と人々を捕食していく。そこにウルトラレックスが駆け付けスカルバーンに体当たりする。そこにタイタンホークとストレイザーが攻撃を仕掛ける。しかし、スカルバーンは怯むことなく不気味な声をあげウルトラレックスに攻撃を始めた。
「効いてねぇぞ。」
「あの怪獣、ギーラさんから受け取ったデータよりもデカく、禍々しくなっているよ。」
「体表も硬くなっているのか。」
ウルトラレックス達はスカルバーンの進攻を阻止するべく攻撃を続ける。しかし、ウルトラレックスよりも大きいスカルバーンは圧倒的なパワーでウルトラレックスを押し始める。しかも、角から電撃を放って辺り一帯を焼け野原にしてしまう。
(ヤバい。もう魔力が•••)
スカルバーンの激しい攻撃にウルトラレックスは徐々に疲弊していく。そして、口から放つ破壊光線を受け魔力切れとなり元の大きさに戻ってしまった。
「夢宮!」
すぐに姫樹がウルトラレックスを抱えスカルバーンから離れる。しかし、スカルバーンは口から破壊光線を発射して二人を撃ち落とすとコスモスやストレイザーを電撃で攻撃しながら近付いてきた。
「やべぇ。」
すかさずフェルクニモンが逃げ遅れた人達を救出しながら二人の前に立ち瓦礫をサイコキネシスで持ち上げぶつける。そこにキュアリアスもやってきて攻撃するがスカルバーンは怯むことなく向かってくる。ルギリナやルージュもスカルバーンの背中の鰭を折るが効果がない。スカルバーンは舌を伸ばしウルトラレックス達を捕らえようとした。
その瞬間、ファイアボールがスカルバーンに命中しスカルバーンは倒れた。ウルトラレックス達がファイアボールがきた方向を見る。そこにはバルトロスがいた。
「なるほど。そいつのせいか。」
「バルトロス!」
起き上がったスカルバーンは狙いをバルトロスに変え電撃を放ちながら突進する。しかし、バルトロスには電撃が効かない。バルトロスはスカルバーンに体当たりして仰け反らせる。そこにファイアボールを連射して攻撃する。それでも怯まないスカルバーンはバルトロスの首に噛み付いた。
「バルトロス!」
「•••無駄だ。」
ウルトラレックス達が叫ぶがバルトロスは表情を一切変えず尻尾をスカルバーンの首に巻き付けた。バルトロスにはスカルバーンの鋭い牙すら通さなかった。バルトロスは無理矢理引き離すとサーガノア郊外へスカルバーンを投げ飛ばした。
「すげぇ。」
「あそこなら本気が出せる。」
バルトロスはスカルバーンを投げるとサーガノアから出て行く。ウルトラレックスが追いかけようとするとルギリナがやってきた。
「少し待て。今から魔力を供給する。これで少しは戦えるだろ。」
「そんなことも出来るんだ。」
「魔王は万能なのだ。」
「じゃあ私も手伝うわ。さすがにあいつ相手じゃ私はどうにも出来ないしね。」
ルギリナはウルトラレックスの胸に手を当てると魔力を送り込んだ。それと同時にウルトラレックスから出てきたモルフィナが光を放つ。すると、ウルトラレックスは魔力が溜まるのを実感した。
「二人ともありがとう。」
ウルトラレックスはルギリナとモルフィナにお礼を言う。モルフィナがウルトラレックスに入るのを確認すると再び巨大化してバルトロスを追いかけた。
バルトロスに追いつくとバルトロスとルージュがスカルバーンと交戦していた。ウルトラレックスはすかさずバルトロスの隣に並ぶ。
「さっきはありがとうございました。」
「決闘の邪魔をした奴は排除するだけだ。」
ウルトラレックスとバルトロスはこちらに走ってくるスカルバーンに向かって走り出す。ウルトラレックスとバルトロスがスカルバーンに体当たりする。スカルバーンは電撃を放ち攻撃する。
「冴えわたれ純情、レックス!」
ウルトラレックスはスカイライジングタイプになると空を飛び上から弓矢を放つ。それに合わせてバルトロスがファイアボールを放つ。
「《ボルテックアロー》!」
光線となった矢とファイアボールが同時にスカルバーンに命中し倒れた。それでもスカルバーンは立ち上がり破壊光線を放つ。それに対しバルトロスも口から真っ赤な光線を放った。
「《インフェルノインパクト》!」
両者の光線がぶつかり合う。すると、インフェルノインパクトが破壊光線を押し出しスカルバーンの顔に命中した。その威力は凄まじく顔ほ焼け角を破壊した。
「すげぇよやっぱり。」
「あいつを一度倒したんだよね私達。」
改めてバルトロスの強さを実感する。ウルトラレックスはスプリームドリームに戻りながらバルトロスの隣に降り立つ。
「行きましょう!」
「そうだな。」
ウルトラレックスとバルトロスは初めて怯むスカルバーンに向かって必殺技を放った。
「《レクシウムブラスター》!」
「《インフェルノインパクト・オーバーヒート》!」
同時に放たれた必殺技はスカルバーンに命中しスカルバーンは叫びながら爆発した。
「よっしゃあ!」
「勝てたよ!」
勝利に喜ぶ郷田達。ウルトラレックスは魔力切れとなり元の大きさに戻る。
「決闘の続き、しますか?」
ウルトラレックスがそう聞くとバルトロスは首を横に振った。
「いや。貴殿と我との差はよく分かった。我は修行してさらに強くなってから再戦を挑むとしよう。」
そう言ってバルトロスは踵を返し去ろうとしていた。
「やっぱあいつは好きになれそうだわ。」
その様子を郷田達がモニターで見ている。ウルトラレックスのところにキュアリアス達がやってくる。すると、フェルクニモンを確認したバルトロスがこちらを向いて忠告してきた。
「フェルクニモン。」
「え、何?」
「俺達は気にしてないがバスタードは許してないぞ。」
「バスタード?」
「そうか。知らなかったか。派遣組のトップだ。」
「え、あ•••」
バルトロスは忠告すると地面を潜って去って行った。ウルトラレックスが気になってフェルクニモンを見ると汗を流し怯え始めた。
「そんなに強いの?そのバスタードって怪獣?」
「名前だけなら知ってる。私が一軍と呼んでいたところのトップよ。」
「な•••」
フェーラの説明にウルトラレックスは唖然とする。ついに彼女の言う一軍、つまりグランウィザードやその直属の部下の次に強いと思われる怪獣が動き出したということだ。
近くにいたキュアリアス達も言葉に出ない。そこに日比野達が迎えにやってくる。キュアリアスが日比野達にバスタードという怪獣について話す。
「なるほど。そのバスタードって言う怪獣がどんなのかは分からないがバルトロスの言い方的に二人を狙っている可能性はあるな。」
「マジか。下手したらあのトゥルディスより強いかも知れねぇ怪獣が相手になるのかよ。」
「溝霧は知らないの?」
「知りません。スパンダーは知っていたみたいですけど教えてくれませんでしたし。」
溝霧は首を横に振る。日比野はしばらく考えウルトラレックス達にこれからを話した。
「そのバスタードと言う怪獣の素性はまだ分からない。そいつを調べつついつも通り過ごしていこう。」
「はい!」
ウルトラレックスが元気弋返事する。少しの不安はあるが前を向きつつウルトラレックス達はタイタンホークに乗りサーガノアへと帰艦するのだった。
今回倒した怪獣
怪獣名 スカルバーン
別名 獰猛骸獣
全長 65m
体重 5万5千t
特徴
外見が禍々しい怪獣。凶暴で肉食。鋭い歯と長い舌で人間や他の怪獣を捕食する。主な武器は角から放つ電撃と口から放つ破壊光線。体表も硬くかなりパワーもある。




