正義を騙る者
(ここは…)
夢宮が学校内を探索すると溝霧を発見した。
(溝霧君!)
夢宮が叫びながら走った。しかし、溝霧は反応しない。溝霧だけではない。彼の周りにいるクラスメイト達も夢宮に反応しない。
(そうか。この世界は溝霧君の記憶、過去だから僕がいないんだ。)
夢宮は溝霧を触ろうとするも透けてしまう。夢宮の体を通り抜けて他のクラスメイト達が教室に帰っていく。夢宮は溝霧が気になって後を追う。
教室に着いた溝霧達。夢宮も後を追って入ると何かザワザワしている。1人の女子が鞄の中をゴソゴソして騒いでいた。
「私のスク水がない!」
彼女の発現でみんなザワザワと騒いでいた。みんな自分は知らないと首を振っていたり一緒に探していた。すると、1人の男子が溝霧に近付いた。
「お前、なんか隠してるだろ。」
「え?何も隠してないよ。」
「ならバックを見せてみろよ。」
男子は溝霧からバックを取り上げて他の男子と一緒に探る。すると、溝霧のバックから女子用のスク水が出てきた。
「それ!私の!」
「え?」
(え…?)
彼女が指差して叫ぶ。クラスメイト達は一斉に溝霧。睨んだ。
「お前か犯人!」
「ち、違う!僕はそんなこと…」
「じゃあなんでお前のバックに紗理奈のスク水が入っているんだ?」
男子はニヤリと笑ってスク水を溝霧に見せる。それを見た担任と思われる女性が溝霧を連れて行く。
「し、知らない!」
(そうだよ!溝霧君はそんなことしない!)
夢宮も必死に訴えかけるが誰1人反応せず溝霧は連れ去られた。そこで一旦記憶が途切れたのか周りが崩れていく。その最中、クスクスと笑う声が聞こえた。
そこからは断片的になっていた。必死に無罪を主張するも誰にも信じてもらえない溝霧、両親から謂れもない罪で謝罪させられる溝霧、学校中からバッシングされる溝霧。そして•••
再びハッキリと記憶が戻った。放課後、溝霧が1人で帰っていると話し声が聞こえた。
「最高だったろ!溝霧のあの顔!」
「そうね。僕はやってないーってみっともなかったわね。」
溝霧が扉の隙間から覗く。すると、溝霧のバックからスク水を出した男子生徒が被害者であるはずの女子生徒を含めた数人で談笑していた。
「これで俺は学校のヒーローだ。高校の生徒会長選挙で有利になれる。」
「あんたは成績優秀だし運動神経も抜群、おまけにイケメンだし非の打ち所がないじゃん。」
「そう。俺が正義でいるためには犠牲が必要。成績優秀、運動神経抜群の俺と何の取柄もないあいつじゃ天と地の差があるのは明白。俺のために悪役になれるのを感謝してほしいね。」
その言葉に夢宮は激怒した。マッチポンプだったのだ。被害者であるはずの女子生徒紗理奈が自分のスク水を溝霧のバックに入れ男子生徒がそれを見つける。そうやって犯罪者を作り自分が裁くことで正義のヒーローを演じていたのだ。
それは夢宮にとって許せない行為だった。夢宮にとってヒーローは誰かのために動く者であって自分の利益のためだけに悪を作るなんて以ての外だ。
夢宮が許せないように溝霧も許せなかった。溝霧は扉をバンッと大きく開けて男子生徒に詰め寄る。
「どういう事!?」
「やばっ!松田バレたぞ!」
「黙ってろ。」
溝霧は松田に詰め寄る。しかし、松田は溝霧を返り討ちにして馬乗りになった。
「おい。先生を呼んでこい。」
「分かった。」
松田は他の男子生徒に先生を呼ぶよう指示した。男子生徒は頷いて空き教室を出て行った。夢宮は溝霧を助けるために松田を引き剥がそうとするも触れない。
「僕を…僕達を騙していたのか?」
「そうだ。みーんな、バカだから俺の思い通りになる。」
「今からみんなに言えば•••」
「バカだなぁ。今更お前が何言っても誰も信じない。みんな俺の味方だ。」
松田がニヤニヤしていると男子生徒が担任の女性を連れてきた。女性は溝霧何か言っている。溝霧は必死に真実を話すが誰も信じない。そこで時間が止まるかのように動かなくなった。
夢宮はその光景を見て静かに憤る。人を騙して正義を騙る。夢宮が一番許せない行動だ。
夢宮止まった時の中を動き涙を流す溝霧に手を差し伸べる。手は溝霧を透過する。夢宮は手を引っ込める。そして、後ろにいる何かに話しかけた。
「溝霧君の過去は分かった。最初なんで心を閉ざしていたのか。みんなと距離を取っていたのか。ありがとう。おかげで溝霧君を助ける方法が分かった。」
夢宮が振り向くと空間が歪みミラグライが現れた。
「君を倒して溝霧君を救う。それが僕の正義だ。」
夢宮は静かにウルトラレックスへと変身する。ミラグライもヒレを開き顔を露にする。そして、両者同時に動き出した。




