酒の降る町
ウルトラ•グラン•ウォーからしばらく経った。タイタンホークの修理のためサーガノアにいる。他の戦艦に買い替えるという手もある。けど、日比野達は今まで乗ってきて思い出もあるタイタンホークのままにすることを選んだ。
タイタンホークの修理中、日比野達は休暇をとっている。そんな中、日比野達チームアーサーと中島先生達チームトリスタンはザ・レイダーの近くにある街バッカスタウンにいた。それは新庄が溺愛しているヒュプシュタオゼントフースに会いに行っている時だった。
「お酒が有名な町にいる怪獣?」
「そう。その町は様々な酒がある町で有名なんだ。その町には古くから酒が好きな怪獣がお酒を飲みに現れる言い伝えがある。」
日比野がリーボルトからある怪獣の話を聞いている。
「その怪獣の名前はアークバッカス。お酒を降らせる雲を纏ってやってくる。」
「素晴らしい怪獣ですね!」
すると、中島先生が話に加わってきた。
「私、お酒大好きなんです!」
「先生、その話は後でお願いします。リーボルトさん、その怪獣が何か?」
「今までは御供えしていた酒を飲んでいたが最近じゃ売り物の酒にまで手を出してきて困っているらしい。その町では神様のように崇められていたから無下にも出来ない。そこで武力以外で解決出来るかもと君達に依頼したい。俺達じゃどうしても武力行使になってしまう。」
「わ、分かりました。とりあえずアークバッカスって怪獣がお酒を呑み過ぎないようにしてほしいってことですね。」
「そうだ。頼む。」
こうして、日比野達はバッカスタウンに行くことになった。
バッカスタウンでは今まさにアークバッカスのための貢物が用意されていた。この町では年に1回アークバッカスのためのお祭りが開催されている。普段は祭りの日だけしか飲みに来ないアークバッカスが近年、出現する頻度が多くなり酒が飲まれ出荷数が減少するだけではなくアークバッカスが降らす酒によって健康被害も出ている。
町長からその話を聞いた日比野達は彼からの依頼を受けてアークバッカスに対抗するために準備しようとした。その時、暗雲がバッカスタウンの上空に拡がると雨が降ってきた。日比野達は何だと上を見る。すると、町長や町の人達は大慌てで建物に逃げ込み始めた。
「アークバッカス様だ!祭りは明日なのに!」
「な!これがアークバッカス•••」
日比野達が上を見ていると雨粒が目に当たる。その瞬間、目が痛くなり目を擦った。雨が激しくなると辺り一面甘い匂いがすると同時に目眩がしてきた。降ってきた酒の匂いで酔ってしまったのだ。
「いきなりかよ!」
「とにかく宿に入ろうよ!」
日比野達が慌てて宿に入る。すると、舞沢が顔を赤くして倒れてしまった。
「舞沢!?」
「マズイぜ。完全に酔ってやがる。」
新庄は舞沢をおんぶして部屋に連れて行く。その間も酒の雨はどんどん激しさを増していく。舞沢を風間に任せて日比野は窓の外を見る。すると、祭りのために用意していた樽に顔を突っ込んで酒を飲んでいる怪獣がいた。アークバッカスだ。肩や尻尾にある管みたいな気管が特徴的な怪獣で呑み干した樽から顔を出すと顔にも管があった。
「あれがアークバッカス。」
「確かに大呑な怪獣だな。」
「どうするの?なんか気持ち悪くなってきた。」
外を見ている日比野に顔を青ざめ口に手を当て今にも吐きそうな表情をしている空咲が聞いてきた。
「おい。とにかくトイレに行ってこい。」
「う、うん。」
空咲は慌ててトイレに走って行く。その間にアークバッカスが次の樽に手をかけ呑み始めた。このままじゃ埒があかないと一度、交戦することを決めた。
まず、溝霧が窓から飛び出すとアルギラに変身してアークバッカスの前に出る。それに気付いたアークバッカスは呑むのを止めこっちを威嚇した。
(お酒の雨でクラクラする。けど、速攻でなんとかすれば。)
アルギラは倒さないようにするためにノスフェルトブレードやアルギラスティンガーを使わずに突進する。そのままアークバッカスと取っ組み合いになる。すると、アークバッカスが口から白いガスを吐いた。それをくらったアルギラは目を瞑って下がった。そこに今度は口から水を放ってきた。アルギラはとっさに腹部を開けて吸収する。すると、クラクラし始め倒れてしまった。
「溝霧!?」
日比野が傘を差してアルギラに近付くとアルギラは目をぐるぐるさせていた。
「おい!大丈夫か!?」
日比野がアルギラを起こそうとしているとアークバッカスが近付いてきた。そこにアルギラをおとりにして後ろから回り込んでいた新庄とアリスが近付きアークバッカスを取り押さえた。
「今だ!って酔ったのか!?」
「ちょっと待って!早くしないと•••」
作戦はアルギラがアークバッカスの気を引き死角から日比野達が取り押さえその隙にアルギラが風魔法で雲を吹き飛ばすものだったらしい。しかし、肝心のアルギラが酒でダウンしてしまった。
それを見ているとアリスが酔い始めた。すると、宿で待機していた中島先生がやってきてアークバッカスに拳骨を入れた。それを見た日比野達も町も人達も驚き言葉が出なかった。
「あなたねぇ!折角町の人達が用意してくれたのに勝手に呑んで人様の物にまで手を出して!そんなことしているといずれ大好きなお酒が呑めなくなるわよ!」
中島先生の剣幕に圧されたアークバッカスは大人しくなり雨を止ませた。
「そ、それでいいの?」
「いくらなんでも神様として崇められている怪獣に説教って。」
ポカンとしている日比野達を余所に中島先生はアークバッカスに説教をしている。そして、説教が終わるとアークバッカスはそそくさと雨雲を纏って去って行った。
翌日、無事に祭りが始まると雨雲に乗ってアークバッカスが再び現れた。今度は酒の雨を降らすことなく現れ貢物として用意されたお酒をごくごく呑んで去って行った。
それを成人している中島先生達はお酒を未成年である日比野達はジュースやお茶を飲みながら見ていた。
「これで一件落着でしょうか?」
「大人しくなったからいいじゃない。」
「よくないだろ。なんとか穏便にしようとしてたのに作戦が台無しだぞ。」
「でもアークバッカスを倒すことなく解決したしいいお酒も呑めたしで結果オーライよ!」
以外と酒豪だった中島先生が新庄達と一緒に呑んで楽しそうにしている。日比野も安心して町の人達と呑んでいるアークバッカスを見るのであった。
ちなみに、この日以降舞沢と溝霧はお酒を絶対に呑まないと誓った。
今回説教した怪獣
怪獣名 アークバッカス
別名 大酒怪獣
全長 1.7m
体重 198kg
バッカスタウンで神様として崇められている怪獣。酒を降らす雨雲に入って移動する。戦闘力は皆無だが口や管からだす酒気ガスやお酒を吐く攻撃で相手を酔わせることが出来る。浴びすぎるとアルコール依存症や肝臓の悪化に繋がり死の危険もあるためある意味厄介な怪獣である。