誕生、希望
スパンダーとの戦争が幕を下ろしてから数日後、勇輝は目を覚ました。辺りを見回すといくつかのベッドを並べて合わせていた。そして、ベッドの脇に友子がもたれながら眠っていた。
「星雲寺さん・・・」
勇輝が友子を見ていると部屋に日比野達が入ってきた。
「気が付いたか。」
日比野は勇輝の前に行くと深々と頭を下げて謝罪した。
「夢宮、すまなかった!君を疑い、ひどいことをした。今、頭を下げただけで許してもらえるとは思っていないけどこの詫びは必ずする。」
「う、うん。僕は大丈夫だよ。」
日比野に続いて中島先生や空咲が勇輝に謝っていると佐古水が部屋の扉の方に顔を向けた。
「お前達は来なくていいのか?」
部屋の外には扉を挟んで橘や飛鳥崎がいた。二人とも気まずいのか一切部屋に入ろうとはしなかった。
「入れるわけねぇだろ。夢宮を最初から信じていたお前と違って危険な怪獣とか殺人犯とか言ったんだぞ。謝っても許してくれるかどうか。」
「あぁ、その通りだ。私は最初から夢宮を疑っていたうえにライフルを向けたからな。今さら顔を出せるわけないだろ。」
「あの、僕は気にしませんよ。」
「頼むから罵倒してくれ。でないと自分が許せなくなる。」
「橘が罵倒してくれって言うとなんかエロいな。」
「郷田、お前は後で蜂の巣にしてやる。」
橘達が話しているとラッセル議長達が部屋に入ってきた。
「夢宮勇輝君、マークタウンを代表してお礼を言わせて欲しい。ありがとう。そして、すまなかった。君を疑い危険な怪獣として扱った。私は無知だった。」
「夢宮、私からも謝罪させて欲しい。すみませんでした。」
ラッセル議長も勇輝に深々と頭を下げて謝罪していた。それに続いてテレサも謝罪した。
「お詫びになるかどうかわからないが君のことを世界中に紹介したいと思う。私達を救ったヒーローとして。」
「え!?」
「実は夢宮が眠っている間に今回の戦争が世界中に報道された。その時に迫害されてもみんなをスパンダー率いる怪獣軍から救った英雄として既に知られている。」
そう言って佐古水はテレビを点けた。そこには、今回の戦いが放映されていた。夢宮勇輝が怪獣になったこと、周りからひどい目にあったこと、スパンダーが世界中で戦争を起こして国を滅ぼした怪獣だと言うこと、そのスパンダーから街のみんなを救ったこと、そして最後に夢宮勇輝は希望の怪獣と呼ばれたことが報道されていた。
「希望の怪獣・・・」
「そうだ。君はあの時絶望していた私達を救ってくれた。いや、私達だけではない。君の存在が人と怪獣の共存を願う者達や怪獣化してしまった人達の希望にもなった。」
ラッセル議長の言葉に勇輝は嬉しそうだった。
「夢宮君、君に見せたいものがある。今、動けるか?」
「?」
「んっ、あ、夢宮君起きてたんだ。」
勇輝が動こうとすると友子が起きた。二人はラッセル議長達と一緒にある場所に向かっていた。その途中、佐古水が勇輝に語りかけてきた。
「夢宮、後で星雲寺に感謝した方がいい。あいつはお前が眠っている間、ずっとそばにいて見守っていたからな。」
「うん、わかった。」
勇輝達が着いたのはある軍事施設だった。そこにあったのは最初に見た飛行船だった。しかし、よく見ると最初に見た飛行船よりも細長く飛行機みたいな翼があり、至るところにミサイルなどの武装があった。
「これは?」
「見た目は飛行船だが違う。こいつは多目的戦闘用要塞戦艦、その名もタイタンホークだ。」
「タイタンホーク。」
「そうだ、夢宮。俺達はこの世界でチームを作った。元の世界に帰るため、悪い怪獣からこの世界を守るために俺達クラスメートで結成した。」
「でも、僕達だけじゃこの世界のことなんてわからないんじゃ?」
「そこは大丈夫。私達も君達と一緒に乗艦するよ。」
勇輝が心配していたらアリスがやってきた。その後ろにはベルッド達もいた。
「タイタンホークには私達も乗る。そこで君達のサポートをするよ。」
「直接会うのは初めてだね。私はラフィ・メリーランドだよ。天谷ちゃんとエリーちゃんの教官をしているオペレーターだよ。」
胸の大きい兎の獣人が元気よく自己紹介した。
「俺も乗艦する。」
ベルッドもラフィの後ろから返事した。その他にも数人がタイタンホークに乗艦することになった。
すると日比野が夢宮に声をかけた。
「夢宮、最後に聞いてくれ。このチームの名前を俺と佐古水と中島先生で考えた。その名前はWISHだ。」
「WISH。」
「あぁ、[world integrate shine heros]。世界を一つに纏める輝くヒーロー達ってところだ。そして、合わせて希望、願いと言う意味のwishにした。」
佐古水が名前の説明をした。勇輝はその説明をキラキラした目をして聞いていた。
「リーダーは委員長、副リーダーが俺が担当することになった。そして、夢宮と星雲寺は特別隊長ってことになった。」
「特別隊長?」
「もし前線で戦うことになった時の隊長だって。」
「ヘエ。え、それに僕が!?」
「そうだ。怪獣になっても優しさを失わなかった夢宮だからこそふさわしい。」
「えぇ、人間と怪獣の共存に大きな一歩を踏み出した君だからこそね。」
日比野と一緒にアリスも賛成していた。
「あ、そういえば夢宮君は怪獣名はどうするの?」
「え?」
「一応、私達って怪獣だからその時の名前が必要かなぁって思ってね。溝霧君もアルギラって怪獣名があったから。」
そう言って友子はいつの間にか治っている翼を広げ、空を飛んだ。
「私はね、キュアリアスって怪獣名にしたの。これ、ちゃんと私が考えた名前だから。」
友子、もといキュアリアスを見た勇輝は少し考えた。そして、みんなの前で決めた名前を発表した。
「僕はレックス。今日から怪獣名はウルトラレックスにします!」
「いいんじゃないか。」
「カッコいいじゃん!」
勇輝は自分をウルトラレックスと命名した。
「うむ、ではここにMDMクラークシード本部総合統括議長、ラッセル・ブリューワールドの名に置いて対異世界怪獣防衛戦闘兼保護特殊チーム、WISHの設立を宣言する。」
そして、ここに対異世界怪獣防衛戦闘兼保護特殊チーム、WISHが設立された。