希望の怪獣
スパンダーが勇輝を貫いた後
オペレーションルーム
「なんだ、あれは?」
「僕も初めて知りました。」
日比野はアルギラとともに驚愕した。日比野はアルギラの方を向いた後、剣を再び構えた。その隣に空咲が剣を構えて立っていた。
「溝霧、もう戻れないならここで俺が止める。それがお前のことをわかってやれなかった俺の贖罪だ。」
そう言って日比野は走りだした。アルギラもノスフェルトブレードで日比野を迎えうった。その後に空咲がアルギラを剣で振り払った。
アルギラは二人に向かって角から電撃を放って攻撃した。その後すぐに風魔法で二人を吹っ飛ばした。
「意外と強い!」
「大丈夫か、空咲?」
「大丈夫!」
しばらく切り合いが続く中、アルギラは二人に向かってサタンボールを連射した。日比野はそれをバリアで防ぎながらアルギラに近づいた。その後ろを空咲がついて行き、アルギラに近づいた瞬間に跳び上がって上からアルギラを切った。
切られたアルギラは後退りしたが薄く傷を付けただけだった。すると、アルギラは腹部を四つに裂けた。
「何あれ!?」
「あれが溝霧の必殺技らしい。」
アルギラはそのまま腹の口から光線を放った。二人はそれを避けて両側からアルギラを切った。
「一度見た技なら避けられる!」
「ごめん、溝霧!」
切られたアルギラはそのまま倒れた。二人はラッセル議長達を解放しようとするとアルギラが起き上がった。
すると、スパンダーがいた方向で爆発が起こった。
グランドファングと戦っていた山瀬、郷田、堀垣、アリスは爆発したスパンダーを見ていた。それは大量の光のミサイルを発射する怪獣と戦っていた飛鳥崎、南、朝比奈、ベルットも同じだった。
そして、勇輝が炎の中から飛んできた瞬間に歓声が上がった。
「よっしゃ!」
「今度こそ本当に勝ったの?」
みんなが心配する中、グランドファングや他の怪獣はただ燃え盛る炎を見ていた。すると、炎の中からスパンダーが現れた。
「くそっ!しぶとすぎるだろ!」
「まだ生きているのか。」
みんなが再び攻撃体勢に入った時、スパンダーは手を挙げた。
「・・・撤退するぞ。」
すると、スパンダーが手を挙げたのを見た鳥型の怪獣が甲高い鳴き声をあげた。その声を聞いた怪獣達はあっさり退き始めた。
「なんだ?やけにあっさり退き下がるな。」
「なんだよ。逃げるのかよ!」
「あぁ、これ以上はこちらの損失が大きいからな。それに俺達の世界じゃあ敵前逃亡は恥でもなんでもない。それとも、まだ戦いたいか?」
スパンダーの問いに誰も答えなかった。スパンダーは他の怪獣達が退き下がったのを確認するとグランドファングや大量の光のミサイルを発射する怪獣と一緒に下がり始めた。
「そうだ。喜べ、この戦争はお前達の勝利だ。」
「良かったな、お前ら!」
そう言ってスパンダーは帰ろうとし、グランドファングの尻尾は笑っていた。すると、勇輝の目の前にアルギラが現れた。
「!」
「溝霧君!」
「・・・夢宮さん、皆さん、ごめんなさい。僕はこっちで生きます。」
アルギラは勇輝達に謝罪した後、スパンダーの後ろをついていった。
その様子を見た勇輝はそのまま倒れて気絶してしまった。そのことに気づいたみんなは急いで勇輝の元に駆け寄った。
こうして、勇輝達が体験した初めての怪獣との戦いは幕を下ろした。
その様子を城の屋根からじっと見ている怪獣がいた。その怪獣は勇輝達を見た後、翼を広げ空を飛んでいった。
アルギラはスパンダーと一緒に森の中を歩いていた。
「どうだった、スパンダー?」
「なかなかヤバかった。」
グランドファングの質問に答えたスパンダーは蜘蛛脚の一本を触った。すると蜘蛛脚は崩れ落ちた。よく見るとスパンダーの体中に傷や火傷があり、ボロボロの状態だった。
「これ以上戦っていたら俺の方が殺られてた。」
スパンダーは笑いながら自分の状態を確認しているとアルギラが口を開いた。
「・・・すみません。負けたのは僕が命令通りに動かなかったからですよね?」
下を向いているアルギラにスパンダーは笑いながら答えた。
「いや、お前は充分頑張った。思い通りにならないのはよくあることだ。それにお前はここに来て間もないから尚更そうだ。今回の敗北は俺が夢宮勇輝をあまく見ていたことが原因だ。だが、次はそうはいかないさ。」
スパンダーは笑い続けている。アルギラはその姿を黙って見ていた。
「奴らの絶望となった俺と対称的に奴らの希望となった怪獣、夢宮勇輝。また会うことがあるだろう。」
そう言ってスパンダーが前に手をかざすと何もない空間から円形の何かが現れた。
「え?何ですか、これ?」
「安心しろ。俺達の全線基地に行くためのゲートだ。」
そう言ってスパンダーはゲートの中に入った。それに続きグランドファング達も入っていった。
そして、アルギラもそのゲートに入った。怪獣が全て入るとゲートは消えてしまった。
今回戦った怪獣
怪獣名 スパンダー(本体)
別名 化蜘蛛怪獣
全長 2.2m
体重 120㎏
特徴
今回の戦争を指揮した首謀者の怪獣。知能が高く臨機応変に動くことができる。主な武器は両腕の鋭い爪、背中から生えた8本の蜘蛛脚から放つ粘着性のある糸、蜘蛛脚に強力な電磁波を発生させ、魔法攻撃などを吸収するプラズマバリア、口から放つ針状の光線 《ニードルラッシュ》、強力な破壊光線 《スパンダートブレイカー》は蜘蛛脚から発生させたプラズマバリアを通ると強化されて撃つことができる。