光の涙
クラスメートや兵士達は恐怖で動けなかった。急に現れたスパンダーの本体が勇輝の胸と頭を貫いてしまったのだ。
勇輝は倒れたまま光を失い、動かなかった。友子は泣きながら勇輝に必死に呼びかけている。
「やけに冷静だと思っていたがそういうことか。」
友子を見た佐古水はスパンダーを睨んでいた。
「そういうことだ。まさか、これがやられるとは思わなかったがな。」
そう言ってスパンダーは鋭い爪がある手を挙げ、振り下ろした。その瞬間、怪獣達が再び攻撃を仕掛けてきた。
戦意喪失してしまった兵士達は逃げ惑い、クラスメート達も怯えていた。しかし、その中でも佐古水、橘、テレサ、アリスはすぐ怪獣を迎えうった。
「逃げるな!今逃げたら全て失うぞ!今までの努力が全て無駄になるぞ!」
「こんなことになったのは私達が夢宮を信じなかったからだ。その夢宮のためにもあいつだけは!」
「全軍、前進!諦めるな!まだ終わってない!愚かな私でも今は分かる。今、目の前にいる怪獣は確実に悪だ!ここで引き下がるわけにはいかない!ここを守り抜くぞ!」
「みんな!まだ諦めないで!まだ希望は残っています!私達一人一人が希望です!」
4人に鼓舞されたクラスメートや兵士達は自分を奮い立たせて怪獣に向かった。
スパンダーはその様子をじっと観察していた。すると、臀部から勇輝を貫いた触手を伸ばし、佐古水と橘を襲った。
「お前達が異世界組の中で厄介な存在だからな。俺が相手しよう。」
スパンダーは二人の前に立ち、ゆっくりと近づいた。そして、口から針状の光線を放った。二人はすぐ避け、銃撃した。すると、スパンダーは背中の蜘蛛脚を前に出して間に何かを作っていた。それは二人の銃撃を防いだ。
「何なんだ!それ!?」
「バリア?」
「こいつはプラズマバリア。この脚の間に発生させあらゆる攻撃を全て吸収する。」
スパンダーはそう言って蜘蛛脚の先から蜘蛛の糸を出した。佐古水はなんとか避けたが橘は両手を縛られスパンダーに振り回された。
「離せ!」
上からテレサが切りかかってきたがスパンダーは鋭い爪で対抗し、橘をぶつけた。その後、触手を2本とも二人に向けた。しかし、佐古水が刀に炎を纏ってスパンダーに向かって走ったために1本を佐古水に向けた。
佐古水は刀で触手を弾きながら走ってスパンダーの懐に入った。スパンダーは距離を取ろうと下がるがそれより早く佐古水は刀を振り払った。しかし、スパンダーにはかすり傷しか与えられなかった。
「なかなか、侮れない。いい才能だ。お前には戦いの才能がある。天賦の才だ。」
「平和に生きたい身としては欲しくない才だな。」
「確かに。」
そう言ってスパンダーは蜘蛛脚をさっきと同じように前に出した。そして、口からあの時と同じ破壊光線を放った。しかし、その光線は蜘蛛脚の間を通った瞬間、蜘蛛脚が張っている大きさまで大きくなった。
「!」
「佐古水さん!」
佐古水の前に姫樹と小石川とテレサが来てバリアを張るが、防ぎきれず全員ぶっ飛ばされた。
スパンダーは倒れている佐古水達を見た後、ゆっくりと勇輝の方に近づいた。その後ろから橘がライフルで攻撃するがスパンダーは触手で橘を殴って気絶させた。
そのまま他の兵士達も凪ぎ払いながら勇輝のところに着いた。スパンダーは勇輝を見て泣いている友子に語りかけた。
「惜しい人材だった。出来れば殺したくなかったが仕方ない。星雲寺友子、約束を破る結果になってしまったがもう一度だけ聞こう。俺達と一緒に来ないか?」
「・・・いや。」
「だろうな。」
スパンダーは友子に鋭い爪を突き立てようとした。その時、友子が立ち上がりスパンダーに向けて口から光線を放った。それはスパンダーに命中するもスパンダーはピンピンしていた。
「悪いが怪獣としての格が違う。」
スパンダーは触手で友子の両手を縛り、持ち上げた。友子も必死にもがきは尻尾で攻撃するがスパンダーには効いていなかった。
「お前達を殺した後、次はあいつらを怪獣にする。これは実験だ。どれだけの怪獣を産み出せるか、どれだけの人間が怪獣化した後自我を保てるか。そして・・・」
スパンダーは笑い、友子に向けてさっきの光線を放とうとしていた。友子も涙目になりながらもスパンダーを睨み付けていた。その涙が落ち、勇輝に当たった。
その時、声がした。
「・・・離れてください。」
「!」
スパンダーは攻撃を止め、勇輝の方を見ると貫いたはずの傷がなかった。
(まさか、心臓と脳を同時に穿ったはず!?それでも生きているのか!?)
「友子から離れてください!」
スパンダーが立ち止まっている隙をつき、復活した勇輝が口から光線を放ってスパンダーをぶっ飛ばした。
その時に触手も友子から離れて勇輝の前に倒れた。
「ゆ、勇輝!」
友子は涙を拭って勇輝を見た。クラスメートや兵士達も勇輝の復活に歓声をあげた。
「良かった、勇輝。」
「僕の体に涙が落ちてきとたんに体が光に包まれたような温かさを感じた。それは多分、みんなが、星雲寺さんが諦めなかったから生まれた光だと思う。僕はそれに答えたい。希望で!」
勇輝はゆっくり進みながらスパンダーを睨み付けた。