英獣勇極祭(ウルドフェスティバル)
「トゥルディス教。100年以上前からある宗教で教祖はフィディス。人間、魔族、怪獣との共存を謳い、絶大な人気を誇る。ってまさかまたトゥルディス教を調べることになるとは。」
「盾の女神テミス、剣の女神イザナ、翼の女神リエルがトゥルディス教のシンボル。入信する際にお金は一切とらずやることはシンボルを持って祈ったり信じることだけ・・・こんな宗教、日本どころか元いた世界にはないな。」
日比野達はテラの図書館でトゥルディス教のことを調べていた。トゥルディス教のシンボルはアリスの持っているペンダントと同じ天使みたいな翼の生えた十字架に3人の女神が付いているものだった。日比野達は以前にもマークタウンでトゥルディス教を調べていたのでここまでは簡単に調べることができた。
「そっちはどうだ?」
日比野は近くにいた夢宮に聞いた。どうやら、夢宮達はトゥルディス教とは違うことを調べている様子だった。
「ウルドセイザーは異世界最大の国シェインレントランドの首都でここからは約2日かかるみたい。」
「英獣勇極祭、別名ウルドフェスティバルは毎年この時期に開催される怪獣を倒した勇者を称え祀る祭りと書いてます。」
夢宮と一緒にウルドセイザーや英獣勇極祭のことを調べていた舞沢も一緒に報告する。
「そして、ウルドセイザーはトゥルディス教の総本山であり勇極七賢人がいるところでもあるわ。」
「勇極七賢人?」
舞沢に続いてアリスが説明すると郷田が気になった単語について質問した。
「勇極七賢人はこの世界で一番権力を持つ7人のことよ。そして、フィディス・キリエロファントさんもその1人。」
「!?」
アリスの説明を聞いて日比野達は驚愕する。トゥルディス教信者で何度も祭りに参加したことがあるアリスはフィディスのことや祭りのことを説明してくれた。
「トゥルディス教教皇フィディスさんは人間とエルフのハーフで年齢は150歳を超えてるみたい。」
「人間とエルフのハーフなのか?」
「ええ。この前の取材でそう言ってたわ。」
アリスは説明しながら雑誌を見せる。そこには“今年もフィディス教皇はウルドフェスティバルに参加。今までの思いを語る。”と記載されていた。
「とりあえず、フィディスさんは今年も参加するからチャンスはその時ね。」
「はい。」
日比野は返事すると立ち上がって夢宮達に先にAVRに帰るように指示した。そのまま図書館を出るとタイタンホークで待機している新庄に連絡した。
「新庄さん、明日ウルドセイザーに向けて出発します。」
『了解した。しかし、明日出なくても時間はあるが?』
「それは後でみんなに話します。なのでAVRの最上階ラウンジで待っていてください。」
日比野は連絡を終えるとAVRに向かって行った。AVR最上階ホテルの大広間に集まったWISHのメンバー達。全員がいることを確認すると日比野は部屋を暗くしプロジェクターを使って今まで調べたことをみんなに共有させた。
「・・・以上から怪獣トゥルディスは今まで倒してきた怪獣と違い絶大な人気と権力を持っている。だから、今までのような戦闘は出来ない。」
夢宮達が今まで倒してきた怪獣は確実に敵対し中には残虐な行いをする者もいた。そのため、倒すことに問題はなかったがトゥルディスは異世界唯一の宗教のトップかつ、最高権力者の1人であるため迂闊に攻撃が出来ない。
日比野はそれを知ったうえである作戦を立てた。
「そこでまずフィディスさんが怪獣だとみんなに知ってもらうために祭りが始まる前にウルドセイザーに向かい噂を流す。フィディスさんが怪獣だという噂を。」
「でもトゥルディス教は人間と怪獣の共存を謳っている。それだけでは無理があるだろ。」
「そうだ。けど、そこに今まで非道の数々を行ってきたナンバーズのトップだと分かったら少しは動揺するはず。」
「そこに捕まえたあの二人を連れてきて証言してもらうってわけね。」
「そうだ。そして、彼が怪獣として正体を現した瞬間に僕達の最高火力で先制攻撃する。相手は今までで一番強いだろうから何もさせないようにする。」
「なるほど。」
日比野の作戦を聞いた夢宮達は黙って作戦に賛同する。明かりがつき部屋にヒジリが入ってきた。
「話はもう聞いてる。あいつらの連行の準備も出来た。後は明日に備えるだけだ。」
「ありがとうございます。」
「フィディスのスピーチはテレビで全世界に中継される。俺達もここで見ている。」
「分かりました。」
日比野はヒジリにお辞儀をする。ヒジリは相変わらずのぶっきらぼうな態度をとっていたが心なしか雰囲気は前より柔らかくなっているように感じた。
ヒジリが部屋を出ると日比野達も明日の準備を済ませて就寝した。
そして、翌日。日比野達は修復したタイタンホークに乗りウルドセイザーへ向けて出発しようとしていた。ヒジリ達が見送る。目隠し拘束で連行されているフェーラとクニンを乗せるとタイタンホークは滑走路から離陸した。
「・・・気を付けて行きな。」
ヒジリはそう言って飛び立っていくタイタンホークを見続けたのだった。