絶望の登場
勇輝達がスパンダーと交戦している中
オペレーションルーム
「凄いですね、夢宮さん。」
アルギラはスパンダーに立ち向かう勇輝を見て感嘆していた。そこに、空咲と気絶から覚めた日比野がアルギラに近づいた。
「溝霧、俺はもうクラスメートを失いたくない。できれば殺したくない。」
「委員長、ダメです。僕は委員長のようになれません。誰かといるのが怖い。正義が怖い。何もかもが怖い。」
「溝霧・・・」
「・・・分かりました。」
「!」
「何言ってんの、溝霧?」
「スパンダーさんは直接僕の脳に声を届けることができるんです。これで直接指示を受け取っていました。」
「テレパシーか!」
ラッセル議長が叫ぶとアルギラはゆっくりとラッセル議長に近づいた。
「何をするつもりだ、溝霧!」
「スパンダーさんからの命令です。今すぐラッセル議長を殺せって。」
「何!?」
「もうやめて!」
日比野と空咲は叫びながらアルギラに向かった。アルギラも角から電気を発生させて二人を攻撃した。
「なら僕を、止めてください。」
「溝霧・・・」
日比野はアルギラに剣を向けて光の刃を放った。アルギラはノスフェルトブレードで全て破壊して日比野に向かった。その時、勇輝達がいる方で爆発音がした。
佐古水と山瀬がグランドファングと戦っていた。
佐古水は距離をとって銃撃を繰り返し、山瀬はグランドファングの隙をつき打撃を与えていた。
山瀬がグランドファングの後ろをとって攻撃しようとした瞬間
「ばぁ!」
「え!?」
尻尾の先が口を開けしゃべったのだ。グランドファングはそのまま両肩と腰の辺りに二つずつあるフジツボみたいな突起から触手を伸ばして山瀬の両手、両足を拘束した持ち上げた。
「なんだと!」
「あはははは!騙されてやんの!」
尻尾の先は目が6つあってその間に発光体があり、無数の歯が並んだ口の横には昆虫みたいなキバがあった。そして、尻尾には百足みたいな脚がいくつもあった。
「何だその気持ち悪いのは?」
「あはははは。」
グランドファングの尻尾は笑いながら山瀬の顔を舐めている。山瀬も必死にもがいている。
「やめろ!気持ち悪い!」
その間もグランドファングは佐古水を相手にしていた。また、佐古水が距離をとった瞬間、グランドファングは両肩にある発光体から光弾を連射した。
「マジか!」
佐古水はバック転で避けるがこれで容易に近づけなくなった。グランドファングは両手の甲の目みたいな発光体からも光弾を発射して攻撃を始めた。
その時、南が触手を全て切って山瀬を解放した。
「サンキュー、南。」
「にゃははははは。確かにあれは気持ち悪いにゃあ。」
二人がグランドファングの尻尾を睨んでいると後ろで爆発音がした。
飛鳥崎と橘は光のミサイルを発射する怪獣と戦っていた。
「くそっ!体は硬いし肩の奴がうざいしで面倒くさ過ぎるだろ!」
「弱音を吐くな、飛鳥崎!」
「これのどこが弱音だ、胸デカ女!」
「貴様!気にしていることを!」
「仲がいいなぁ。」
「「どこがだ!」」
二人は再び怪獣に攻撃を仕掛けた。橘が飛鳥崎の後ろからライフルで援護して飛鳥崎が殴っている。怪獣は笑いながら後ろへ下がった。飛鳥崎が追撃しようと近づいた瞬間、怪獣は口を開いた。
飛鳥崎はとっさに避けると後ろにいた橘のライフルがスパッと切れたのだ。
「何!」
「そういうことか、くそったれ!」
「なんだ、飛鳥崎!」
「こいつ、口からくそ細い糸みたいなのを出して切ってきた。」
「な、まさか小石川の狙撃を防いだのもそれか!?」
怪獣は笑いながら二人を見た。
「当たりだ。なかなか動体視力はいい方だな。」
そのまま怪獣は口を開け細長い糸みたいなモノで攻撃を始めた。
二人がその攻撃を避けていると朝比奈が風魔法で怪獣を攻撃した。風魔法は怪獣に命中したが怪獣には効いていなかった。
「何よ、あの怪獣。硬すぎよ。」
「何しにきた、ソバカス女!」
「助けに来たのよ、脳筋バカ!橘、これ。」
朝比奈は保管されていたライフルのうちの一つを橘に渡した。
「助かった。」
橘はライフルを受け取るとすぐ闇魔法を弾に付与して連射した。それでも、怪獣には効いてないようで怪獣は光のミサイルを撃とうとした。その時、爆発音が聞こえた。
勇輝達の攻撃がスパンダーの頭部を吹き飛ばした。スパンダーはそのまま倒れた。周りが静寂に包まれた。
そして、
「た、倒したぞー!」
兵士達が歓声を上げて喜んだ。クラスメート達も勇輝に駆け寄ってきた。
「凄いよ、夢宮君!」
「さすがだぜ、勇輝!」
「星雲寺もよく頑張った。」
クラスメート達が勇輝や星雲寺を称えていた。その後ろで気まずそうに目を背ける橘と怪獣達をじっと見てみる佐古水がいた。
「なんだ?お前ら、行かねぇのか?」
「私は夢宮を人殺し扱いしたんだぞ。今さら行けるか。お前はどうなんだ?」
「俺もてめえと一緒だよ。で、佐古水は行かねぇのか。お前は最初から夢宮を庇ってただろ?」
「あぁ、少し気になってな。」
「何を?」
佐古水は頭部の無いスパンダーの周りにいるグランドファング達を見ていた。
「あの怪獣、確か言ってたよな。戦争はどちらかの頭を潰さない限り終わりはしないと。その頭がやられたというのにいくらなんでも冷静過ぎないか?」
佐古水に言われ飛鳥崎達が見るとグランドファングの尻尾が笑いながら冗談を言っていたり、光のミサイルを発射する怪獣は感心していた。
「確かにおかしいな。」
佐古水達が怪しんでいると郷田が怪獣達に叫んだ。
「お前らの負けだぞ!諦めて降参しろ!」
勝ったことで調子に乗っている郷田にクラスメートや兵士達は呆れたり、一緒になって怪獣に降伏しろと言ったりしていた。
「勝ったのはさっきまで差別していた夢宮のおかげだというのに、呆れた奴らだ。」
「さすが人間。自己中、利己的、自分勝手な連中だ。」
「なんと言おうと俺達の勝ちだろ!」
「って言ってますが、どうしますか、スパンダー?」
「え?」
グランドファングがそう言った瞬間、スパンダーの腹部から2本の触手が現れた。触手の先には鋭い鉤爪みたいなトゲが付いていた。
「みんな、逃げて!」
勇輝が叫んだ瞬間、触手は勇輝の胸と頭を貫いた。
「勇輝~!」
貫かれた勇輝は触手が抜いた後、ゆっくりと倒れた。その目からは光が消えていた。そして、胸の発光体も黒く消えていた。
「勇輝、勇輝!」
みんながスパンダーを見ると腹部を破って怪獣が現れた。その怪獣は長い首を持ち8つの目と鋭い触覚があり、背中には蜘蛛みたいな脚が蠢いていた。
「なんだよ、あいつ。」
怪獣は佐古水達の前に立った。
「この姿では初めてだな。俺の名はスパンダーだ。」
「な。じゃあ、あれは何なんだ!?」
「これはお前らの世界でいう戦車みたいなものだ。本体は俺だ。」
「そんなぁ。」
さっきまで調子に乗っていた兵士達もスパンダーの登場に皆、戦いていた。それはクラスメート達も同じだった。
スパンダーはそんな姿を見て笑った。
「さてと、戦争を再開しよう。」
スパンダーの一言で絶望がまた始まった。
今回倒した怪獣
怪獣名 スパンダー(タンク)
別名 蜘蛛怪獣
全長 15m
体重 800㎏
特徴
マークタウンに攻め込んだ怪獣達のリーダー。溝霧が怪獣になって初めて会った相手で彼を勧誘した張本人。アルギラという怪獣名を与え、テレパシーでアルギラに指示をして裏工作をした。主な武器は前肢の鎌 《スパンダーシザーズ》、口から粘着性のある糸、針状の光線 《ニードルラッシュ》、強力な破壊光線 《スパンダートブレイカー》である。中にスパンダーの本体がいて操っている。