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勇気は負けない

 飛鳥崎達のコンビネーションでジェノジュファーの目にナイフを突き立てた皇凰院はナイフを抜いて距離をとった。

「・・・懐かしい。」

「?」

「この感覚、あん時と同じだ・・・」



 数週間前、太平洋沖、戦艦雅馬

「・・・現時刻二二.三八.五0。前方、異常無し。」

「レーダーにも反応無し。」

「了解。再び監視を続行せよ。」

「了解。」

 雅馬の艦橋では館長と思われる飛鳥崎に似た青年と副艦長と思われる二人の青年を含む数人が見張りの任務に就いていた。

「村松キャップ。少し休まれては?」

「大丈夫だ。」

「もう3日連続でほとんど寝てないじゃないですか。後の見張りは俺と千条に任せて少し仮眠をとってはいかがですか?」

「・・・すまないな。そうしてもらおう。頼んだ、羽矢間、千条。」

「「了解。」」

 村松が艦橋から降りようとした。その時、雅馬の周りに突然霧が発生した。

「異常発生!突如、周辺に謎の霧が出現!」

「レーダーに反応無し!」

「第一警戒態勢発令!船員は直ちに持ち場につき警戒せよ!」

 いきなり発生した霧に対し村松はすぐに指示を出した。そして、就寝している生徒達を警報で起こすとすぐに見張りに当たらせた。

 しばらく謎の霧を警戒しているが濃い霧が立ち込めるだけ何も変化がない。村松は雅馬を霧から脱出するため全力で前進するように指示を出した。

「どうだ?」

「ダメです。一向に霧が晴れません。」

 しかし、どれだけ進んでも霧が晴れることはない。まるで、霧そのものが雅馬に張り付いているようだった。

「石見教官。可笑しいですよね?」

「ああ、太平洋のど真ん中でこんな霧が現れることは絶対ない。これはあり得ない現象だ。」

 村松達は正体不明の霧に疑問を持っていると通信機から報告がきた。村松が通信機をとって報告を聞こうとすると叫び声が通信機からした。

「助けてくれ!」

「どうした、島岡!」

「分からない!艦内まで霧が立ち込めたと思ったら変な声が・・・うわぁ!」

「どうした、島岡!島岡!」

 村松が何度も声をかけるが返答がない。村松は艦橋を千条に任せると様子を見に艦内を回った。すると、前方から皇凰院が走ってきた。

「香太郎さん!」

「豪毅!何があった!?」

「わからない!霧が・・・」

 村松が皇凰院から報告を聞くと目の前に霧が立ち込め始めた。

(艦内までに霧が?この霧、明らかに人為的なものを感じる。)

 村松は近くの部屋に皇凰院を連れ込むとロッカーに皇凰院を入れた。

「ここで待ってろ。すぐに戻ってくる。」

 村松はそう言って部屋を離れていった。

 村松が走っていると霧が艦内に立ち込めてきた。霧が辺りを包むと村松の頭に声が直接響いてきた。とっさに耳を塞ぐが声は聞こえている。


 助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて


(なんだ、この声?島岡主計長が言っていたやつか?)

 村松が謎の声を考察していると叫び声が聞こえた。この声は直接頭に響くものではなく仲間の声だった。

「この声、久保田か!?」

 村松は声がする方へ手探りで向かっていると明らかに人ではない影が見えた。ジェノジュファーだった。村松はナイフを取り出し警戒しているとジェノジュファーは手に切り取った仲間の首を持っていたのだ。

「おい、その手に持っているのは誰だ。」

「ほぅ。ジェノパルスをくらっている状況で正気を保てる奴がいたか。」

「こっちも驚いた。まさか言葉、しかも日本語が通じるとはな。」

「それで質問の答えだったな。自分で確認しろ。」

 そう言ってジェノジュファーは首を村松の前に放り投げた。

「久保田機関長・・・」

 村松は転がってきた久保田の目をそっと閉じるとジェノジュファーを睨んだ。そして、そのままジェノジュファーに接近し胸部に掌底を当てた。

「ほぅ、この状況で俺と戦おうとするとは。なかなか根性があるじゃねぇか。」

「根性とかそんな問題じゃない。お前が俺達の仲間を殺した敵であるならば俺は生徒艦長としてお前を倒す。」

「やってみろ。」

 ジェノジュファーは霧の中に消えると四方から弾丸を飛ばして攻撃を始めた。それを村松は紙一重で避け続け一歩、また一歩と進む。そして、おもいっきりジャンプすると壁を走り上からジェノジュファーの頭を蹴り壁に激突させた。

「!?」

「まだこんなもんじゃねぇぞ。鉄屑野郎。」

「ジェノミストの中、よく俺が分かるな。」

「艦内の構造は全て記憶している。お前の攻撃方法は分からんが現在地と音の発信源さえ分かれば問題ない。」

 村松は冷静に細かい音まで聞き分けジェノジュファーの攻撃を避けていた。この間にもジェノパルスが彼の脳内に直接不快な声を送っているにも関わらず彼は一つのミスもなか的確にジェノジュファーの位置を当てて攻撃していた。

「そいつは素晴らしい。決めたよ。お前の背中に恐怖を刻み込もう。」

「恐怖だ?嘗めるなよ。俺達には勇気がある。お前ごときの恐怖に俺達は負けない。」

 村松はジェノジュファーに攻撃を続けるが段々彼の動きに慣れたのかジェノジュファーは攻撃に対応し始めた。そして、村松が下がった隙を付き彼の顔面を右手で掴んだ。

「これで終わりだ。折角だから何か遺言でも言ってみろ。」

「・・・黙ってくたばれ、鉄屑野郎。」

 そう言った瞬間、村松は隠し持っていたナイフをジェノジュファーの目に突き立てた。

(悪い、みんな・・・豪毅。約束守れなかったな。絶対生きろよ。)

 村松はそう思い残すとジェノジュファーのパイルバンカーに頭を貫かれたのだった。

「・・・最後まで足掻くとは、面白い奴だ。」

 ジェノジュファーはナイフを抜きその場に捨てると村松の服を剥いで背中に日本語で文字を刻み始めた。そして、ジェノジュファーは霧と共に姿を消した。


 そんな体験談をジェノジュファーは嬉々として飛鳥崎達に語っていた。

「今まで会った奴らの中で一番殺しがいがあったぜ。」

「香太郎さん・・・」

 ジェノジュファーの話に皇凰院が憤りを露にしていると飛鳥崎が彼の肩を掴んで笑った。

「村松香太郎、カッコいいじゃねぇか。こんな屑怪獣に最後まで戦ってお前を守り抜いたんだろ。今度は俺達が見せてやろうじゃねぇか。勇気が恐怖に勝つ瞬間を!」

 飛鳥崎はそう言って再び攻撃を始めた。山瀬達も飛鳥崎に続くように攻撃を再開した。皇凰院は少し立ち竦んでいたが自分の手を見るも震えが止まっていることに気付いた。

「勇気・・・」

 皇凰院は自分の手を見て握りしめると村松のナイフを再び構えジェノジュファーの隙をついて膝裏を切りつけた。

「!」

 皇凰院の攻撃でバランスを崩したジェノジュファーをテレサが後ろから突き刺し飛鳥崎と山瀬が顔をおもいっきり殴った。

「小賢しい!」

 しかし、ジェノジュファーは怯むことなく錬成した弾丸を四方に向けて飛ばした。至近距離で飛ばした弾丸は全員に命中するがなんとか致命傷は免れた。

「しぶとすぎるだろ、てめえ。」

「それが俺の売りだ。」

 ジェノジュファーは倒れている飛鳥崎の顔を掴んで持ち上げた。その様子を見た皇凰院は村松と同じ殺し方をしようとするジェノジュファーに接近を試みるが尻尾で軽く弾き飛ばされた。

「おい、何か言ってみろ。」

 ジェノジュファーは飛鳥崎を持ち上げたまま嗤いパイルバンカーを打つ準備をした。

「黙ってくたばれ、鉄屑野郎。」

「やっぱりな。」

「止めて!」

 叫ぶ皇凰院を無視してジェノジュファーは飛鳥崎にパイルバンカーを打ち込もうとした。その瞬間、壁が破壊されそこからウルトラレックスが現れジェノジュファーの右腕を拳で貫いた。パイルバンカーごと破壊された右腕は飛鳥崎を放し落ちた飛鳥崎は山瀬と皇凰院に助け出された。

「・・・ったく、おせぇよ。」

「ありがとう。今度は僕が相手をする。今度は負けない!」

「来たか、獲物が。」

 再び合間見えるウルトラレックスとジェノジュファー。両者の第2ラウンドが今、始まろうとしていた。

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