恐怖を乗り越えろ!
頭を再生させながら不敵な笑みをするジェノジュファーに飛鳥崎は苛立っていた。
「落ち着け、飛鳥崎!」
そこに後からきた山瀬が飛鳥崎の肩を掴む。
「俺は今、すげぇ冷静だぜ。」
飛鳥崎はそう言ってジェノジュファーが襲撃した直後のことを思い出していた。
ジェノジュファーが怪獣を使って襲撃した直後、皇凰院がまた震えだし踞ってしまった。
「・・・恐いです。香太郎さんの時のように声が響いて消える。またみんなが消えてしまうと思うと恐くて動けない。」
震える皇凰院をじっと見ていた飛鳥崎はしゃがむと彼の肩を叩き顔を上げさせた。
「安心しろ。俺達は意外としぶとくてな。今までだってなんとか生き残ってきたんだ。約束する。俺は、いや俺達は絶対に死なねぇ。だからよ。待っていてくれ。」
「飛鳥崎さん・・・」
「太牙と呼べ、皇。」
「・・・はい。」
皇凰院は涙を拭いた。飛鳥崎は笑って立ち上がるとジェノジュファーを探しに病院内を駆け回った。その後ろ姿を見た皇凰院は懐から柄に“MURAMATSU”と書かれたナイフを取り出した。
そして、今に至る。
「頭ぶっ飛んだからさっさとくたばれ、鉄屑野郎。」
「鉄屑野郎か・・・そういやぁ、前にもいたなぁ。異世界からきた奴らの中にそんなこと言う奴が。あぁ、お前に似ていたなぁ。なんだ?お前の兄か?」
飛鳥崎の顔を見て思い出したのかジェノジュファーは飛鳥崎を挑発するように嗤った。
「・・・てめえで間違いねぇようだな。」
「気を付けろ!そいつ、錬金術とかいう異世界の能力を持っている!」
「錬金術?漫画とかにあるイカサマ能力か。」
橘の助言に反応した飛鳥崎。ジェノジュファーは不敵に嗤うと壁の破片を手に取った。
「能力じゃない。技術だ。本来は卑金属を貴金属に変えるものだが俺にかかればこの通り。」
そう言って握った手を開くと破片が金に変わっていた。ジェノジュファーは掌を下に向けて金を落とすとその金を踏み潰した。
「チート能力かよ。」
「この技術のおかげで俺は自分の身体をここまで改造出来た。」
ジェノジュファーは金を踏み潰すと左腕にガトリングガンを生成してノールックで橘達を攻撃した。橘はとっさに壁に隠れるも弾丸は壁を貫通し橘の腕を擦った。
「てめえ!てめえの相手は俺だろうが!」
「違うな。相手じゃない。獲物だ。」
ジェノジュファーは右腕を剣にすると飛鳥崎に切りかかった。飛鳥崎が避けると後ろから山瀬が雷を纏った拳で殴る。しかし、ジェノジュファーの装甲が硬く傷一つ付かない。ジェノジュファーが山瀬に狙いを定め口から光線を吐こうとした瞬間、攻撃を止めて後退した。
「?」
「・・・なんだ?何も見えん。」
いきなり動きが止まったジェノジュファーに警戒していると中央の目を黒くさせたバドラーが飛鳥崎の隣に並んだ。
「時間稼ぎに礼を言う。おかげで奴の視界を奪えた。」
「何それ?」
「俺の得意魔法の一つだ。相手の視界を奪う魔法だ。今、奴は視界を奪われ何も見ることはできない。」
「魔王すげー。」
バドラーの魔法に感心していた飛鳥崎と山瀬はジェノジュファーが見えてないことを確認すると一気に距離を詰めた。すると、ジェノジュファーが不敵に笑い腹部から光線を拡散させて攻撃したきた。
「!」
「見えないんじゃねぇのかよ!?」
「確かに見えんな。しかし、俺にはこれがある。」
飛鳥崎の質問に答えるかのようにジェノジュファーは両目の間にある光るカメラみたいな目を指差した。
「こいつが貴様らの体温を感知している。」
「サーモグラフィーか。」
「・・・俺の魔法が効かないか。」
バドラーはジェノジュファーの視界を完全に奪うことが出来ないと知ると闇魔法でそのサーモグラフィーの役割をしている目を攻撃しようとした。
「そろそろ邪魔だ。さっさとあの魔王を狩らないといけないんでな。」
その瞬間を狙い、ジェノジュファーは床の材質を変化させ液体金属のようにし、そこから刃を出現させた。その刃は避けようとしたバドラーの左足を真っ二つに切った。
「!?」
「バドラー!」
ジェノジュファーはバドラーを切ると自分の目を錬成した弾丸で貫くと再生させた。
「これで見えるようになった。」
ジェノジュファーはそのまま液体金属の刃を飛鳥崎と山瀬に向かって攻撃した。そこに、今度はジェノジュファーの後ろからテレサがジェノジュファーの背中を斬った。
「また邪魔か。」
「やっと会えた。」
ジェノジュファーは右腕を再び剣に変えるとテレサと斬り合いを始めた。
「貴様らに何が出来る!?俺が作り出したデスケミストにすら未だに手こずっているレベルの貴様らが!」
「そうか。あの怪獣はデスケミストというのか。」
テレサはジェノジュファーと斬り合いながらも冷静だった。すると、ジェノジュファーはバドラーを切った時のように床を変化させて液体金属の刃と刺でテレサを攻撃した。
「この程度、スパンダーに比べれば大したことないな。」
「あの自称戦略家と同じにするな。」
ジェノジュファーは液体金属が通用しないと分かると瓦礫からミサイルを錬成して攻撃を開始した。
「おい。」
「だから、忘れてんじゃねぇよ!俺達がまだいるだろうが!」
すると、飛鳥崎と山瀬がそれぞれ水と雷を拳に纏ってジェノジュファーの背中を殴った。
「その程度!」
ジェノジュファーは振り向いて攻撃しようとすると飛鳥崎が水魔法、山瀬が炎魔法をジェノジュファーの目前でぶつけ高温の蒸気を生成した。
「!」
「これでサーモグラフィーは使えない。」
「それと言ってなかったけど、俺達は三人でチームなんだよ。」
蒸気が晴れようとした瞬間、皇凰院が現れジェノジュファーの目にナイフを突き刺した。
「僕だって戦える!恐怖だって乗り越えてみせる!」