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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

異世界☆魔法少女♪

作者: 九條葉月
掲載日:2019/12/04


 異世界☆魔法少女♪





 ――夢!



 ――勇気!



 ――希望!



 ――以下略!



 そんな『プラス』の想いを力に変えて戦うのが魔法少女である!




 この世界で数々の危機を救ってきた魔法少女は、ときに異世界を救うために戦わねばならないことがあった。


 異世界に最初の“魔法少女”が召喚されてから、100年ほど。愛と勇気で魔王を倒した魔法少女は救国の英雄となり、物語となり、伝説となった。



 そして、今。

 新たなる魔法少女が異世界に召喚されようとしていた……。










 1.とある転生王女の独白。



 この世界において『王女』という肩書きを持つ女性はそれなりにいるでしょうが、転生王女というのは珍しいのではないでしょうか?


 そう、私ことトリィは転生者。いわゆる“前世持ち”です。


 前世の私は60連勤を完遂した直後に固い床とキスして死亡しました。それなりに鍛えていたつもりだったんですけどね、やはりナポレオン並みの睡眠時間では無理がありましたか。


 そんな私を神様が哀れんで……か、どうかは知りませんが、今世では中々裕福な国の王女として生まれることができました。しかも前世の記憶付きで。


 でも、私はこの知識をひけらかすようなことはしません。

 なぜなら前世で学んだから。

 そう、仕事ができて性格が生真面目な人間には集まってくるのです。仕事が。


 王女としての立場を考えれば前世の記憶を駆使して技術やら文化やらを発展させ、この国をさらに豊かにするべきなんでしょうけどね。そんな面倒くさいことはゴメンです。


 前世で働き過ぎた私は決めたのです。今世ではなるべく働かず、目立たず、スローなライフを送りつつ、バカではないけど賢くもない程度の立ち位置を維持しようと。


 まぁ王女ですから高位貴族か他国の王族と結婚しなきゃいけないでしょうけどね。それでも過労死するよりはマシであるはずです。


 この世界の貴族は後継ぎを産んだあとなら浮気もO.K.みたいですし。夫と妻がそれぞれに愛人を作るのも普通みたい。


 ま、その辺は前世の貴族も似たようなものですね。


 私の性格的に浮気や愛人を作るのは無理そうですけど、夫が愛人を作ってくれたら私は自由気ままにやれるでしょうし、王女の嫁ぎ先なのですから夫からの愛はなくても生活に困ることはないはず。


 お金持ちと結婚できて、働かずとも生活ができる。そう考えると中々に薔薇色の未来が待ち受けているんじゃないでしょうか?


 そう、薔薇色の未来(スローライフ)が待ち受けている……はずでした。


 とある事実に気づくまでは。



「……あれ? 私、悪役じゃない?」





 その事実に気づいたのは、勇者召喚の儀式が原因でした。

 魔王が復活して、異世界から勇者を呼んで倒してもらう。そんなテンプレートにして自分勝手な理由でこの国も勇者召喚を行ったのです。


 謁見の間に準備されたのは召喚の媒体、人の身長ほどもある水晶。なにやらケバケバしい装飾で飾り立てられています。えぇ、考案した人の精神異常を疑うレベルのケバケバしさです。

 一度目にしたら死んだあとでも思い出しそうなインパクト。


 そのケバケバしい装飾を目にした私は、ふと疑問に思いました。


(あれ? 私、この光景を見たことがある?)


 そんなはずはありません。前に勇者召喚の儀式が行われたのは100年も前のこと。現在15歳の私が見たことなどありえません。


 100年前の記録をどこかで見た、にしても100年前では『映像記憶』の魔導具もないはずですし、となると絵画ということになりますが、それだとこのような既視感は覚えないでしょう。


 なのに、私は確かに見たことがある。

 モニター越し(・・・・・・)だったけど、確かに、この目で……。


 ……ん? モニター?


 ということは、前世の記憶?


 いやしかし、科学技術の進んでいた前世日本でこんな光景を目にする機会があるとすれば映画とか、マンガとか、ゲームくらい――


 ――ゲーム?


 思い至ったその可能性に私が首をかしげていると、謁見の間が光に包まれました。


「成功だ!」


 視界が光に包まれる中、そんな声が響き渡りました。姿は見えませんが、声色からして今回の責任者である魔導師団長でしょう。


 水晶から発せられた光はだんだんと弱まっていき……、通常の視界が戻ったあと、私は謁見の間に現れた二つの人影を目にしました。


 いえ、正確には一人と一体、でしょうか?


 一体はいかにも『敵!』とか『魔王!』といった悪そうな風貌をしています。漆黒のマントに、トゲトゲしい衣装、隆々とした筋肉。一応二足歩行ではあるのですが、顔はまるで狼のような形をしています。


 うん、絶対に“勇者”ではありませんね。


 いえ、顔は恐いが実はいい人なんだ~的な展開もあるにはありますが、『もはやこれまで! せめて貴様だけでも道連れにしてくれる!』なんて叫んでいるので悪役で間違いないでしょう。


 そんな狼男(?)と一緒に召喚されたのは金髪の美少女。


 年の頃は十代後半くらいでしょうか? 身長は女性にしては高め。ツインテールに纏められた金色の髪は召喚の余波で柔らかに揺れ動いています。


 目は少々垂れ気味ですが、瞳に強い意志が宿っているので気弱な印象はありません。人種的には欧米系? ホリが深くてかなりの美少女です。まさしく西洋人形のよう。


 私も転生後はかなりの美少女に生まれた自信があったのですけど、“彼女”には負けるかもしれませんね。嫉妬シット


 そんな超絶美少女である“彼女”ですが、やはり一番目を引くのは着ている衣装でしょう。


 フリフリです。

 ものすっごくフリフリです。


 あと色味が原色。

 普段着では絶対に使えない系の原色です。


 一言で言えば魔法少女。

 二言で言えば女児向けの魔法少女です。


 正直、十代後半の(高身長な)女性が着るには少々キツいものが……いえ、コスプレ。コスプレと考えればまだまだいけますね。美人は何を着ても似合う。これ世界の真理。


 あと、よく見ると犬耳っぽいものやフサフサの尻尾が生えていますけど、衣装の装飾なのか本物なのかはちょっと分かりません。この世界には“亜人”が多く住んでいるので本物でも不思議じゃないですけどね。


 そんな魔法少女(?)がどこからかステッキを取りだし、狼男に向けました。


 あのステッキ。いかにも電池で光ったり音が鳴ったりしそうな外見をしていますね。3,980円といったとこでしょうか?


「覚悟しなさいミスター・フェーン! あなたの野望もこれで終わりです!」


 おぉ、なにやら最終決戦ぽいのが始まりました。

 もちろん“勇者召喚の儀”のために集まった貴族やら貴族の令嬢たちはぽかーんとした顔をしています。


 特に、貴族令嬢。『運が良ければ勇者様と親密になって結婚を!』と意気込んでいたのに、出てきたのは狼男と魔法少女……。うん、君たちは泣いてもいいと思います。


『ま、まて! 異世界転移の方法を知っている俺を倒せば、二度と地球には戻れなくなるぞ! それでもいいのか!?』


 狼男が小者っぽいセリフを吐いています。


 失礼ですね。この国の勇者召喚術式をそこらの欠陥品と一緒にしないでいただきたいものです。安心安全に元の世界へお帰りしていただけますともさ。


 そして、地球? 地球と言いました? 私の生きていた地球には狼男も魔法少女もいなかったんですけど?


 大混乱する私に気づくはずもなく魔法少女がステッキをきつく握りしめ、狼男を睨み付けました。


「――構いません! たとえ二度と地球には帰れなくても、ここであなたを倒します!」


 いやだから帰れますって。魔力の補充の関係ですぐには無理ですけど、数ヶ月もすれば帰れますから。


 そんな私の心のツッコミはもちろん届くことはなく。魔法少女は天高くステッキを掲げました。



「――ハニカミ☆」



 決め台詞でしょうか?

 キラリーン! というエフェクトと元に、空中から光り輝く“帯”が何本か現れて狼男の手足を拘束しました。



「――スマイル♪」



 くるくると回りながら、天高く掲げられたステッキを魔法少女が両手で握りしめ――





「――デストローイ!」





 脳天をかち割りました。


 魔法少女が。


 狼男の頭を。


 魔法のステッキで。


 吹き出す鮮血。飛び散る脳漿。その勢いは頭部を破壊しただけでは止まらずに、狼男の胴体までをも縦真っ二つにしてしまいました。


 いやいやなによそのスーパー大切断? あなた魔法少女じゃなくて仮面○イダーア○ゾンなの?


 確かに魔法少女とライダーは同じ『ニチアサ』系だけど、時間を30分間違えてない?


 おっといけない口調が乱れました。ごほん、前世のヒーローのような切断技によって狼男は絶命。鮮血が召喚儀式用の水晶やら国王陛下やら見学の貴族連中に降りかかり、蝶よ花よと育てられてきた令嬢たちは次々に気絶していきました。


 なんという阿鼻叫喚。

 この世に地獄が舞い降りた。


 魔法少女とは夢や希望を振りまくものじゃなかったのでしょうか? 少なくとも敵の血液と脳みそと内蔵を振りまく存在ではなかったはずです。不思議な力で返り血を一切浴びていないのはさすが(?)ですけれど。


 いや、そもそもの問題として。今日は“勇者”を召喚するはずだったのに……。


「……どうしてこうなった?」







     ◇




 魔法少女による突然のスプラッター。


 よく考えても理解できない惨状を前にして貴族は逃げ惑い、令嬢たちが次々に気絶していく地獄絵図の中。さすがは次代の王として育てられただけあって我が兄様――王太子殿下は一足早く冷静さを取り戻したようでした。


「……お初にお目にかかる。私はこの国の王太子、テイン・リートリッヒだ。あなたの名前を伺ってもよろしいだろうか?」


 何とも爽やかなイケメンスマイルを浮かべながら兄様が魔法少女に近づきました。


 幸いにして返り血こそ浴びていませんが、この世にグロテスクを振りまいた魔法少女にそんな笑顔を向けられるのですから、兄様の心臓は鋼鉄でできているに違いありません。


 身内びいきかもしれませんがお兄様は超絶イケメン。乙女ゲームのメインヒーローでもおかしくはありません。


 そして、そんなお兄様が声をかけている魔法少女もまた超絶美少女。これはもしかして乙女ゲームのような素敵な恋物語が始まったり――


 ――ん? 乙女ゲーム?


 私が首をかしげている間にお兄様が魔法少女に右手を差し出しました。ここがアニメの世界だったら白い歯が『キラーン☆』と光っているに違いありません。そして背後には薔薇の花が咲き乱れます。


 そんなお兄様のイケメンスマイルを真っ正面から受けた魔法少女は――


「――イケメンは死ねぇ!」


 とんでもないことを口走りながらお兄様の顔面に右ストレートを叩き込みました。


 なんということを。イケメンを殴るなんて女子の10割を敵に回して男子の10割から賞賛されるトンデモ行為……じゃなかった。王太子を殴るなんて、いくら勇者(?)だからといって不敬罪不可避じゃないですか!


 他人事ながら私がアワアワと心配していると、魔法少女がお兄様を『ビシィ!』と指差しました。


「魔法少女ものに男は不要! 魔法少女は女の子と百合百合していればいいのよ!」


「――過激派だ!?」


 何を口走っているのでしょうかあの魔法少女は!? というか『自分は百合な人間だ』というカミングアウトですか!?


 ……は! しまった! あまりのトンデモ発言につい声を出してのツッコミを入れてしまいました。混乱の渦中にある貴族たちには聞こえていなかったみたいですけれど、魔法少女の耳には届いてしまったみたいです。


 ゆっくりとした動きで魔法少女がこちらを向き、その紺碧の瞳で私の姿を捕らえました。


「……日本語?」


 はい? にほんご?

 口走った言葉にどんな意味が込められているのでしょうか? 確かめることはできませんでした。魔法少女に顔面ストレートをぶち込まれたお兄様が突如として高笑いをし始めたからです。


「くっ! くははっ! 見事だなマホウ・ショウジョよ! まさか俺の正体を見破るとは!」


 イケメンが悪役っぽい高笑いしてるー。いかにも小者っぽいセリフをほざいているー。やめてー。イメージが崩されるー。


 私の嘆きを踏みにじるように兄様(?)が言葉を続けました。


「くくくっ! 王太子の身体を乗っ取って影からこの国を支配してやろうと思っていたのに、まさかマホウ・ショウジョが現れるとは! だが好都合! 貴様を血祭りに上げて我が覇道の狼煙としてくれる!」


 覇道とか言ってるくせにやってることが『王太子の身体を乗っ取り影から国を支配する』とか。セコくてカッコ悪い……。


 対する魔法少女は決意を示すように右手を振り払いました。


「させません! 魔法少女は絶対に負けません! 魔法少女はみんなに笑顔と希望を届けるのです!」


 グロテスクとスプラッターを届けるの間違いじゃありません?


「魔法少女の誓い、第一条! 魔法少女は決して負けない!」


 二条とか三条もあるんですか?


 魔法少女はいったんしゃがみ込み、足腰に力を込めはじめました。



「――ハニカミ☆」



 そして大ジャンプ。謁見の間のシャンデリアに達するほどの高さです。



「――スマイル♪」



 そして空中で回転、“ひねり”を加えたその技は、もしや――!



「――魔法少女♡キーック!」



 ラ○ダー卍キック!?


 わぁ! わぁ! 劇中で一度しか使われなかった必殺技をリアルで拝めるなんて!


 …………。


 ……じゃなかった! お兄様!? お兄様が必殺技を食らいましたよ!?


 魔法少女のライダーなキックを受けたお兄様は往年の特撮怪人のように『びょーん』と吹っ飛び、着地。いったん立ち上がったあと大爆発しました。


 お兄様ぁ!?


 死んだ!? あれ絶対死にましたよね!?


 お願い! 死なないでお兄様!


 あなたが死んだら私が女王をやらなきゃいけなくなるの!


 ……純真無垢に兄のことを心配する(わたし)。そんな私の願いがきっと天に届いたのでしょう。爆炎が晴れたあと、そこにいたのは原形を留めたお兄様でした。


 服は吹き飛んでいましたけど。

 服は吹き飛んでいましたけど。


 イケメンの全裸とか目の保養……じゃなくて、そう、治癒。治癒魔法をかけるために私はお兄様に近づき、『兄妹同士!』という鋼の意志でもってお兄様の裸体から目を逸らし、治癒魔法をかけました。


 治療中にお兄様は『私はもうダメだ……』とか『私が死んだら、トリィにこの国を……』とかつぶやいていましたけど、そんな死亡フラグは治癒魔法で完全粉砕です。


 私には魔法の才能があるらしく、即死でもしない限り完全回復させられます。さすがは“悪役令嬢トリィ”です。


 ……うん? 悪役令嬢?


 首をかしげた私はまずお兄様を見て、周囲をじっくりと見渡し、そして最後に血染めとなった水晶に視線を囚われました。

 あのケバケバしい装飾。たしかにどこかで見たことがある。



 …………。


 …………………。


「……あれ? 私、悪役じゃない?」



 電気ショックを受けたかのように。私は前世でやった一つのゲームを思い出しました。


 そのゲームの名前は、ボク☆オト~again~。

 下位貴族の娘であるヒロインが、王太子や宰相の息子といったイケメンたちと恋に落ちるテンプレ乙女ゲームです。


 勇者召喚の儀式に運良く招待されたヒロインは、そこで召喚された勇者に見初められて“聖女”としての力に目覚め、国を救うための戦いに巻き込まれていく――、と、いうのが大まかな流れです。


 そう。

 今日この場。勇者召喚の儀式こそ物語の始まりだったのです。


 ……いやまぁ、勇者じゃなくて魔法少女が召喚されている時点で『前世のゲーム知識? 何それ? おいしいの?』って感じですけどね。


 どうしてこうなったのでしょう?





 ちなみに。

 ゲームにおける私、トリィ・リートリッヒは悪役――悪役令嬢でした。


 その正体は千年を生きた吸血鬼であり、この国の女王となるため陰に陽にヒロインを追い詰めようとする悪役でした。


 まぁ、私は間違いなく15歳であり、女王になるつもりもないので、この時点でゲームとは乖離しているのですけれどね。




仕事が忙しすぎてムシャクシャして書いた。反省はしていない。


好評なら連載します。

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