全裸VSテッド
「お前……なんで……その身体は」
実体を持った俺を見て、テッドが疑念に囚われている。と、そこで時間が切れた様で俺は再び霊体に戻ってしまう。
「あん? ちっ、ビビらせやがって。肉が付くのは一瞬かよ」
霊体と実体を行き来出来ると思ってくれれば、取れる手段は増えたかも知れないが、生憎テッドはそこまで頭が回る奴じゃなかったようだ。
「てっきりお前も混ざりたくて来たのかと思えば、ただの突貫とはな。先の読めない奴はこれだから嫌だねぇ」
スラリと抜いた聖剣をだらりと持ち、嘲るテッド。
──お前に言われたくはねぇよ。
そう返してやりたかったが、霊体の俺は喋ることが出来ない。
さて、アリアを行かせるために飛び出したものの、魔力はゼロ。体力は聖剣の前に、ジリジリと減っていく。分が悪いのは、明らかに俺の方だった。
なんとか打開策を見つけようと、神眼でテッドを見る。何となくマナー違反な気がして、パーティメンバーを見るのは、これが初めてだった。
[テッド]
種族 :人間族
レベル : 19/25
体力 : 235/235
魔力 : 5/5
スキル : 剣技、虚言、詐称、飛斬、レッドノア
レベルは生前の俺より低い。上限も低いのには同情するが、俺も似たようなもんだろう。
【虚言】や【詐称】なんかのスキルがあるという事が、顔は良いのにソロだった理由を表している様だった。
──ふむ、【飛斬】はともかく【レッドノア】のスキル。正体が分からないだけに厄介だな。
恐らく聖剣固有のスキルなんだろうが、何をしてくるのか読めない。最悪一撃で消滅……なんて事もあり得る訳だ。
「おら、格好良く登場しといて何ぼーっとしてんだよ。ビビってんのかぁ?」
聖剣を肩にかけ、反対の手でくいくいっと挑発してくるテッド。とはいえ、こちらは時間が稼げればそれで良い。下手な挑発に乗ってやる気はない。
確かに聖剣は脅威だが、テッド自体はさほどでもない。いつだって、積極的に前には出ず、最後に美味しいところを持って行こうとする。それがテッドだ。なら……。
『〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
挑発に乗り激高した振りをして声を上げる。
「はっ! やっとやる気になったかよ!」
叫び声を前に、テッドがガシャリと聖剣を身構える。数分ではあるが、時間稼ぎのお陰で俺の魔力は現在1だけ回復している。一度きりだ。倒せないにしても、一発はぶち込んでやる。
『〜〜〜〜〜!!』
再び叫びを上げ、テッドに向かって飛んでいく。警戒すべきは飛斬とレッドノア。だが、テッドならまず飛斬を使うだろう。
「遅ぇんだよ! おらぁ!」
思惑通り、斬撃が俺目掛けて飛んでくる。聖剣の火力もあり、当たればまた腕の一本位は持って行かれるだろうが、直線的に飛んでくる斬撃だ。読んでいれば避けるのは容易い。
飛斬を掠めるように横へ、最小限の動きで躱す。進む速度は緩めない。
テッドが慌てて二撃目を放つ。
遅い。
敢えて上に飛び上がり避ける。
追撃のため放たれようとする三撃目。
それが放たれる瞬間、一瞬だけ実体化する。重力の影響を受け、ガクリと床へ身体が沈む。
発動は出来てもそれを維持する魔力は無いため、すぐに解けてしまう。が、それを利用しそのまま床をすり抜ける。
上を見ていたテッドには、まるで急に姿が消えた様に見えただろう。
──ここだ。
階下からそのままテッドの足元へ浮上。足首を掴み、ソウルイーターを発動させる!
「ガッ……ぐあああああっ!」
テッドから、何かを吸収するのを感じる。足首に触れる距離という事で俺自身も聖気に焼かれているが、直接切られるほどじゃあない。
「離れ……やがれぇ!」
足元目掛け聖剣を突き刺すテッドから距離を取る。その端正だった顔立ちは、魂を直接削り取られた影響か、やつれ、十歳は老けて見えた。そして直接触った右足首。そこから下は枯れ木のように痩せ細っていた。
このまま奇襲の繰り返しで吸いきれるか。そう思いテッドを見るが、レッドノアが俺に反応する様に輝きをます。このまま行くと、何かが起こる。そう感じさせる輝きだった。
──ここまでだな。
魔力もない。倒しきる事は出来なかったが、一矢報いる事は出来た。なにより、サーヤの身も心配である。今は決着を付けなくても良い。
俺はそのまま壁ををすり抜ける。
「クソがぁ! 殺す! 必ず殺してやるからなトーマァァ!」
テッドが何か言っていた様だが、今はアリアと合流すべく、宿を後にした──。
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