全裸、駆けつける
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洞窟を出ると辺りは日が落ちて暗く、こっそりと忍びこむには絶好の機会だった。
それでもバレないよう、警戒しながら街へ入っていく。
テッドはどうせ酒場にいるだろう。そう当たりを付けて行ったものの、残念ながら姿は見えなかった。
──もう宿に戻った後か?
じわりじわりと、焦燥感の様なものが襲って来る。酷い目にあっていたら……この街にもう居なかったら……。
ぶんぶんと首を振り、嫌な考えを吹き飛ばす。取り敢えず宿だ。宿を見に行こう。
この街にある宿はそう多くは無い。しらみつぶしに探せば見つかるかもしれない。
俺は、テッドの助長した言動を思い出し、一番高級な宿へと向かう事にした。
その建物は、三階建てという、周りより一つ大きな宿。この街で最初に出来た宿という事もあり、古いが常連も多い、そんな宿だ。名を【龍谷亭】と言う。
俺は外壁沿いに、ひと部屋ずつ窓から中を伺っていた。
高級宿と言うだけあって、調度品の類はしっかりしている。しかし高い宿に泊まる客の中には、まっとうでは無い者もいるようで、ちょっと口に出せない様な事をしている姿も見てしまった。
──なんだよ男同士って……。いや、個人の自由だがな?
男同士が絡むベッドを、全裸のおっさんが覗くという、ある種地獄の様な光景だった。いや、世の中にはそれが良いって奴も居るかもしれんが……。
辛いものを見てしまった……そう思いながら三階の角部屋を窓から覗いた時、妙に近寄り難い部屋があった。恐らく聖剣の放つ聖気だろう。
バレないよう、そっと窓から様子を窺う。
「いい加減素直になれよ! おら、コッチに来い!」
ベッドの上では半裸になったテッドが、苛立ちながらアリアを呼んでいる。
「嫌です!」
「お前……あの日からちょっと生意気じゃねぇか。あいつの顔を見たからって何か勘違いしてねぇか! あいつは死んだんだよ! ただのゴーストだ、魔物なんだよ! 助けに来てくれるとでも思ってんのか!」
「いいえ……あの人は私の声を聞いてくれました。ただの魔物なんかじゃありません!」
アリアは、こんな姿になった俺を、魔物じゃないと言ってくれる。それだけで幾分か気が楽になった気がするんだから、我ながら現金なもんだ。
「ふん。俺に逆らって良いのか? アイツを生き返らせる事が出来なくなるぞ?」
「っ……!」
弱みを握っている。そういう風にニヤニヤと、アリアに迫るテッド。
──そうか、それが理由か。
白金等級になったことで何かを聞いたのかそれを盾に二人を従わせてるんだろう。
しかし、人を生き返らせるなんて、そんな事が出来るのか?
俺の考えをよそに、テッドはアリアに迫っていく。
「ほら……諦めてコッチにこい。なぁに、女なら誰でも通る道だ。すぐに良くしてやるよ」
下卑た笑いを浮かべながらそう告げるテッド。
「どうせ今頃サーヤの奴も良い思いしてる頃だろうよ。こっちはこっちで仲良くやろうぜ」
「え……どういう事ですっ!? サーヤは買い物に出たって……」
「ああ、そうだぜ? つってもサーヤは買う側じゃなくて買われる側だけどな! エドモンの旦那がアイツに御執心なのは知ってるだろう? 今頃好き勝手やってるだろうさ!」
何がそんなに愉快なのか、ギャハハハと不愉快な笑い声を上げるテッド。
──さっきからサーヤの姿が見えないと思っていたら、そういう事かっ!
サーヤも心配だがこのままではアリアも不味い。どうにかテッドの気を引ければ良いんだが……ええいっ、行くしかないか!
屋根にぶら下がる形を取り、実体化を発動。そのまま一気に窓を割り、部屋の中に飛び込む。
「なんだぁっ!? ってトーマだとぉ!」
「トーマさん!?」
急に窓を割って現れた俺を前に、二人の思考が一瞬止まる。
「後で話す! アリア、行けぇ!」
「っ……!」
隙をついてアリアが宿から飛び出していく。後は俺がこいつの時間を稼ぐだけだ。
ここまでお読みいただきありがとうございますm(_ _)m
全裸が出歯亀する回。ホラーですな。
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