全裸と実体化
前回のあらすじ。ゴーストとグールがくっついた!
※レベルが1になっていたので修正。御指摘感謝です!
暗い、何も無い空間。ただ、ゴウゴウと呪いめいた言葉だけが聞こえてくる。
────痛い辛い哀しい熱い寒い憎い苦しい羨ましい怨めしい忌々しい……。
様々な負の感情が俺を襲う。それは狂気へと誘う濁流の様で、俺の精神をすり減らし、飲み込まんと迫り続ける。
──ぐっ……! これは……きついな。
気が狂いそうになるが、その度サーヤとアリアの顔が思い浮かび、俺を正気へと引き戻す。
──気持ちは痛いくらいに良く分かるが、生憎その感情で止まる訳にはいかないんだよ!
痛い辛いと、ただの亡者に成り下がったお前に、負けてやる気は無い!
目の前に広がる闇へ腕を突っ込む。自分の事だからか、ソコにある事は自然と理解出来た。
手のひらから返ってくる感触……グール──俺の身体にある、『核』の様なものを握り締め、全力でドレインタッチを放つ。
剥き出しの核は脆く、吸い切ったと思ったとたん、サラサラと崩れ、手のひらから零れ落ちていくのを感じた。連動するように、ビキリビキリと、空間にヒビが入っていく。
瞬間、ヒビ割れの向こうから爆発的な光が押し寄せる。慌てて目を閉じ顔を庇った俺だが、次に目を開けた時、そこは先程までいた洞窟の中だった。
足元に横たわるのは、もう動く事のない俺の死体。
──自分で自分に言う様で変な話だが、お前の敵は必ず取るからな。
その答えに満足したのか、それは淡く光ったと思うと俺の身体に入り、跡形もなく消えていった──。
◆◆◆
自分自身を倒し……いや、吸収した俺は暫くの間その場に佇んでいた。目の前には以前俺が着ていた服と、道具類が散乱している。
さて行くか、そう思い動こうとした時、俺の身体が仄かに光りだす。
次にやってくるのは、先程までは無かった高揚感と自分自身の力強さ。
これは……もしかして進化したのか?
光はやがて弱くなっていき、そのまま消えた。
何か変わったのか、自分自身を神眼で確認することにした。
[トーマ・アルウォール]
種族 :レイス(偽)
レベル : 3/20
体力 : 280/280
魔力 : 100/100
スキル : 剔抉の神眼、ソウルイーター、透過、実体化(瞬)
種族がレイスに変わっている。レイスって事は死霊じゃなくて生霊なのか? というか、偽はそのままなんだな。
ドレインタッチはソウルイーターに変わっていた。コレは吸収した事によるものだろうか。
しかしそんなスキルより俺が注目したもの……【実体化(瞬)】だ。コレは文字通り、実体化出来るんじゃないか!?
期待通りであってくれと、迷わずスキルを発動させる。
その瞬間、俺の身体は肉を取り戻し、物質化した。地に足が付く感触。肌で感じる空気。
当たり前だった物を取り戻した感動は、筆舌に尽くし難いものがあった。
「あ、あー、あああ」
良し、声も出せる!
そう思ったとたん、俺の身体は再び霊体に戻ってしまった。次いでやって来る疲労感。
疑問に思い再びステータスを確認する。
[トーマ・アルウォール]
種族 :レイス(偽)
レベル : 3/20
体力 : 280/280
魔力 : 0/100
──魔力が無い。
発動に必要な消費が大きいのか、絶えず消費していくのかは分からないが、魔力は空っぽになっていた。この疲労感は魔力切れか。
恐らく時間にして十秒程度……それが今の俺が実体化出来る限界だった。しかしコレは大きな一歩だ。10秒とはいえ、やれる事が格段に増える。
ひとまず魔力が回復しない事には何も出来ない俺は、壁の中に潜り回復を待つことにした──。
あれから何度か実体化について確認し、おおよその事は把握できた。
まず、発動自体には魔力は使わない。その代わり、一秒間に十ずつ魔力を消費するらしい。じっとしていれば少しずつ回復する魔力も、実体化している間は回復しないらしい。
戦闘に使えない事もないが、現状ではデメリットの方が大きい。今の魔力量じゃ、街に行く事も出来やしない。
街の事を考え始めたら、サーヤとアリアの事が不安で仕方なくなってきた。
──様子を見に行くか。
幸い体力は随分と増えた。そろそろほとぼりが冷めた頃合いだろうと、俺はラビリスの街へ戻ってみる事にした。
ここまでお読みいただきありがとうございますm(_ _)m
全裸、一時的に肉体ゲット! しかし全裸!
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