全裸と元肉体と……
自分の身体との戦い編
『~~~~~~~~~~~!!!』
思わず叫び、逃げ出してしまう。コレはきっと罰だ。サーヤとアリアが俺の為に耐え忍んでいるというのに、狩り方やレベルアップなんて、呑気なことを楽しんでいた俺の罪に対する……。
逃げる足を止め、振り返る。
アレはきっと、現実から目を背けるなという、俺の身体からの叫び。思い出せと。今生きているのは誰のおかげか。成すべきことは何かと。
──そうだ、相性だの何だの言ってる場合じゃない。俺は、早く助けに行かなければ。
今なお苦しみ続けているであろう二人を思い、目の前の罪を、現実を直視する。
神眼でかつての俺を見る。生前のレベルそのままだと勝てない相手かもしれないが……。
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種族 : ハイグール
レベル : 20/22
体力 : 75/150
魔力 : 23/80
状態 : 欠損(下半身)
スキル : 捕食、桎梏の魔眼
レベルはやはり俺より高い。しかし欠損状態の為か、体力は半分まで減っている。それでも今までの相手に比べれば十分高いが。
気になるのは【桎梏の魔眼】おそらく行動を制限する類だと思うが……。神眼をもっていた俺の身体だから、スキルが追加されているのか? それは今までに見たことのないスキルだった。名前が表示されていないのは、同一存在である俺がココに居るからか?
ちなみに今の俺のステータスはこうだ。
[トーマ・アルウォール]
種族 : レッサーゴースト(偽)
レベル : 6/10
体力 : 100/100
魔力 : 50/50
スキル : 剔抉の神眼、ドレインタッチ、透過
全快状態なら負けているが、今の体力なら俺のほうが上である。
グールは、俺のことが見えているのか、速度は遅いが一直線に進んできている。
毎度のごとく、壁に潜り不意を付こうとした俺だが、その刹那、グールの目が怪しく光る。
──動けないっ!?
幽霊が金縛りだなんて、なんの冗談だと思うが、俺は指一本動かすことも出来ずにいた。
足元まで這い寄るグール。それは、人本来の可動域を大幅に超えた大きさに口を開けると、俺の足へ齧りついた。
突き刺さる様な痛みと、傷口を溶かされる感覚。
肉体を持たない俺を捕食は出来ない。そう高をくくっていた俺を嘲笑うかの様に、喰らいつき削り取っていくグール。
『タマシイ……ヨコセ……オレノ……タマシイイイイイ!!』
グールが俺の魂を直接奪って行くのを感じる。肉体は魂を求めているという奴だろうか。
依然身体は動こうとしない。神眼で奴を見る。
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種族 : ハイグール
レベル : 20/22
体力 : 100/150
魔力 : 23/80
状態 : 欠損(下半身)
スキル : ソウルイーター、桎梏の魔眼
今もなおジリジリと増える体力。そして、捕食だった筈のスキルは【ソウルイーター】と、名前を変えていた。
──このままじゃ不味いっ!
動けはしないが幸い奴も俺に接触している。身体全体でドレインタッチを発動させる。こうなればどちらが吸い切るか、勝負だ!
一歩も動かずにお互いを吸い合う。それはまるで、別れた肉体と魂が一つになろうとしている様にも見えた。
互いに体力を奪い合いながらの対決。しかし増減する体力は、俺の方が減りが早い。このままでは遠からず俺は消滅するだろう。
──何か打開策を……考えろ。今の俺に出来る事は……ドレインタッチと透過。そして、神眼。
身体は……動く。魔眼の効果が切れたか。ならっ!
奴は依然足に齧りついたままだ。本能的な欲求のみで、思考自体は鈍いんだろう。動くことも無く、足に喰らいついたままだ。
その足も大部分は溶け、半ば千切れかけているが。
俺は覚悟を決め、一気に身体を床に潜り込ませる。噛まれ固定された足が、反動に耐え切れずブチリと嫌な音を立て千切れる。
噛まれ溶かされる痛みとは、比べ物にならない痛み。そして足が千切れるという恐怖。
──痛い……痛いがこんなもの、あの二人の痛みに比べればっ!
急潜行し、そのまま背後へ浮上。奴は千切れた足を嬉しそうに齧り続けている。
──お前は俺だ。俺を喰うことが魂を喰うという事なら、お前の中に帰ってやる!
それは、一つの賭けだった。魂が身体の内側にあるかなんて分からない。それでも、他の誰でもない、こいつの中には入れるんじゃないか。それに賭けた。
咀嚼するグールの身体に、重なるように覆い被さっていく。賭けには勝ったようで、俺は、スルリと内側へ入っていった。
ここまでお読みいただきありがとうございますm(_ _)m
身体を放置してたら勝手に動き出しました。
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