全裸VSグール、そして……
戦闘回その2。そして見たくなかった相手編
そうして強敵を求め彷徨っていた俺の前に、1体の魔物が姿をみせる。
腐敗し、腐り落ちる肉。たどたどしく歩き、時折声にならない声を上げる亡者。
そう、グールと呼ばれる存在だ。
この世界では死後、そのままにされた肉体に魔力が宿ったときグールになるとされている。一説によると、心の弱い人間ほど成りやすいらしい。
そして魔力を補うすべを捕食以外に持たず、消費していく一方のため、身体が腐っていくのだとか。
──あれに触るのか……なんかやだなぁ。
霊体とはいえ、触ることの出来るものに対しては、触覚は生前と変わらない。つまりアレに触るということはグチャっとなると言うことで……。
──いや、そんな事を言っている場合じゃないだろう。
サーヤとアリアはこんな物とは比にもならないくらい辛い思いをしている。ならばこれしきのことで躊躇している暇はないだろう。
念の為神眼でグールを確認する。
[グル美]
種族 : グール
レベル : 5/10
体力 : 28/28
魔力 : 6/6
スキル : 捕食
うん、女なのかお前。しかしグル美って、グールの中では美しい方なんだろうか。というか誰が名前をつけるんだ? てっきり生前の名前が表示されるかと思ったんだが。
体力はゴブリンの倍ほどもあるが、レベルは高い。これは期待できる相手だ。
深呼吸し──いや、呼吸は必要ないんだが──覚悟を決める。そして背後から一気に纏わりつく!
──すまんグル美。俺のために犠牲になってくれ!
いや、この考え方はオカシイな。全裸のオッサンが破れた服を着た女──ただし腐ってる──に抱きついているが、そこは気にするな。頼む、気にしないでくれ。
嫌な感触に耐えながら、グル美の体力を吸っていく。生身の肉体がない俺はグル美にとって天敵のようなもので、捕食も出来ないグル美は為す術無く力尽きていった。
やれやれとグル美から離れた瞬間、力が漲るのを感じた。
[トーマ・アルウォール]
種族 : レッサーゴースト(偽)
レベル : 2/10
体力 : 60/60
魔力 : 40/40
スキル : 剔抉の神眼、ドレインタッチ、透過
おおお、上がった。レベルが上ったぞ。オマケに欠損していた腕も元通りだ。おかえり俺の左腕。
それから俺は主にグールを見つけては狩りまくった。感触さえ我慢すれば相性のいい相手だ。
時間の感覚は薄いが、それでも数日は狩り続けたように思う。レベルもいくつか上昇していた。正直狩りが楽しくなってきていた部分もあった。
そして、今日もグールを求めさまよう俺は、因縁の下層に続く階段付近。そこで見てしまった──。
ズルズルと、這い寄るような音。それは一段、また一段と階段を登って来る。
見覚えのある茶色の髪は土やホコリなんかで薄汚れくすんでいる。
切断された断面からはボタボタと血と臓物を流し、引きずりながらなお、進んでくる。
その表情は怨嗟と絶望からか歪み、眼窩には何もなく、ただ暗い闇があるだけだった。
──それは、かつての俺。切り捨てられ、放置された俺の身体が、グールとなって近付いてきていた。
ここまでお読みいただきありがとうございますm(_ _)m
ところでグールとゾンビの違いってなんだろうか。元ネタの違い?
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