良い子は絶対真似しないでね
「…財布が…無い」
男が財布を忘れてきたことに気がついたのはデパートを出て信号を渡り終えてすぐだった
「おじさ~ん!!」
「ん!!少年?」
男はデパート側から先ほど聞いた声に気づくと、そちらを向く
「財布ー‼これ、おじさんのでしょー!!忘れてたよー」
そう言うと少年は男の財布を掲げ走って来る
「(あ、本当だ俺のだ、ってカッコ悪すぎるだろー俺)た、助かる」
二人で大声を出していたからか、チラチラと道行く人達の視線が男に刺さる
「僕すぐにわかったよ、これはおじさんのだって、だってこの財布のこのエンブレムってさっきのゲ「イヤ‼助かったぞ少年!!」」
信号を渡り終えた少年は笑顔で男に財布を差し出すと男は素早く財布を受け取り少年の言葉を遮る、そしてガシッと少年の両肩を掴み少年が余計な事を喋る前に続けてこう言った
「イヤ‼本当に助かったよ少年、あ!そうだデパートで何か買ってあげよう」
「本当!!」
少年は嬉そうに来た道を戻って行くその姿を渇いた笑みの男が追う
「ハハッ、もちろんサー(…グッバイ俺の食費)」
「おじさん早く!!」
少年が横断歩道の真ん中で手をふる青信号が点滅している
「少年よ、先に渡ってしまいなさい、そこは危ない」
「一緒に行こうよーうぁっ」
少年は男のもとへ走るが運悪く転けてしまう、そして信号は赤になり、そこに車が…
「ッ!!」