宇佐見の宇は宇宙の宇
神秘を封から解き放ちロマンを拝む同好会。秘封倶楽部。会員は私、宇佐見菫子だけである。どうして自分だけかと説明すると私は一人で居る事が大好きだからだ。進学校に入学してきた人達の中でも私を選んで群がって来たものの群れで行動する事は苦手だったからオカルト好きをアピールして逆に遠ざけた入学初期。顧問の先生は居ないし部費も発生しないから楽。廊下の隅っこの自習室イコール部室。此処でどうするかと言うと・・・。
「おやすみ~・・・」
寝る
こうする事により非科学的な力で閉ざされた魔法世界幻想郷へと飛び立てる。いざ行かん!
ーー香霖堂ーー
「嗚呼、来たかい宇佐見君」
一人の男性は本を開いた侭挨拶をして来る。
「今日は」
「また会ったな菫子」
店の扉を開けて直ぐに二人の目と合う。
何処かから拾った物を売り付ける店、香霖堂の店主森近霖之助さんに何でも屋の霧雨魔理沙さん。
店主さんには半分人間もう半分は妖怪の血が流れて居る。魔理沙さんは魔法使いだけど至って普通の人間。
因みに魔理沙さんとは昼に神社で会っていた。
「今日はー」
「霊夢か」
「やあ、霊夢」
鈴の音と声に気付いて振り向くと神社の巫女、博麗霊夢さんが来ていた。手には新聞とお酒。
「今日、流星群が振るらしいわよ」
「そうらしいね」
「流星群!?」
「何だ、早く言えよ」
「号外で来たんだもの」
其の為の新聞。菫子が住む世界のニュースでも言われていた事だった。
「私の所でも見れたと思います」
「折角だし、此方で見ようぜ」
「アンタ、お酒は・・・飲まないものね」
「どちらかと言えば飲めれないですけどね」
此処の世界では未成年者でも遠慮なくアルコール類を飲む。ヨーロッパでも十六歳からアルコール類が飲めるとは言うが、日本が未成年者の飲酒を禁止しているのは健康に害が及ぶと考えているから。更に日本人はアルコールを分解しにくい。幻想郷の人間は皆日本人かと思っていたけど本当は外国人だったのかも知れないし、多少の物理なら無効できる幻想郷の仕組みか?
「でも今からって言っても途中で起きちゃうかな」
「外でも見えるのか?」
「私の家の周りだったら」
魔理沙さんと霊夢さんは早々とお酒を飲む準備をしていた。器は此の店の物だ。
「夜中でもあーんな、昼間みたいな明るさだったら見えないわよね」
霊夢と魔理沙は菫子(詳しく言えば月の都の稀神サグメ)が起こした異変を解決する際に結界を越えて視界に広がった景色を思い浮かべて居た。
「あの街の中に私の家が在る訳では無いですよ」
「そうなのか?」
「そうですよ。もしそうだとすると明るすぎて不眠症に成っちゃいますよ」
「一晩中、本が読めるな」
目を悪くしても可笑しくない魔女が笑う。
「私はもう本なんて懲りごりよ・・・」
一方、本を読み更けた結果体調不良を起こした巫女は溜息を吐く。
「あ、今週七夕ですね」
「彦星と織姫の密会か」
「こうやって知られてるから密会では無いよ」
「そうだった」
「じゃあ宇佐見君。現実世界の君が起きる迄天体授業でもやるかい?勿論有料で」
「私が起きる事は確定事項何ですね? 後、霊夢さんとか魔理沙さんから何も貰わないのに何故私だけ!」
「沢山持ってるじゃないか。後ツケが出ないから」
「諦めろ菫子。スイッチが入ってる」
「・・・お言葉に甘えて」
「ねえメリー」
「なに、蓮子」
「私ね、お祖母ちゃんから散々天体について知識を披露されたのよ」
「其れは大学に入る前の話?」
「そう。あの時に見た流星群は凄く綺麗だったって」
「地方住みかしら」
「東京。けど当時の東京も空って綺麗だったのかなあ」
「過去の美化って奴ね。若しくは呆け」
「他にも何人かと一緒に見たって言ってたから其の人達にも会いたいなと思ってる。どんな人だったか余り覚えてないの。そしてお祖母ちゃんの話は全部真実だったのか」