蒼い剛腕と碧の海と船幽霊とメタ
此処は命蓮寺。命蓮と言うのは此処の僧の弟の名前。人妖、老若男女、猫も杓子も問わず集える場所。とある関係者の都合上、人に化けた妖怪猫も九十九神と化した杓子や茶碗等の食器も来る事が有る。寺は飛倉、星輦船と言う飛行船にメタモルフォーゼが出来る。
そんな場所に信仰心は無いが、何かしらの用事で来る者も居る。
「みなみっちゃーん」
「ムラサー」
「「遊びに来たぜ! 」」
海男のセアと蒼い剛腕の持ち主のラジが裏門に来た。海男と言うが陸上での生活が多いセアは風邪を引くと天候が暴風雨に変わり作物が滅茶滅茶に成ると村長のブレードは言う。上司に二つ名を付けられたラジは背が低いが簡単には吹き飛ばない程の筋肉の持ち主。
他に来た者は、
「よっすよっす」
「こんにちはー」
セアの相棒の碧梧とラジの幼き頃からの心友の蒼萎。碧梧は紫グループと言う団体の一員。蒼萎はライトヒーローの一人。どちらも同じ役割を持つが紫Gの方が力と信用度がとても高い。
蒼萎は大きいボールが入った青色の袋を持って居る。
「相変わらずねえ」
星輦船の幽霊船長、村沙水蜜が現れる。
「あ、すみません」
謙虚なのは蒼萎。しかし、水蜜は笑って気にしないと言う。
「良いよー、別に。又、サッカーボール持って来たの? 」
「はい。遊ぶ? 一緒に遊びます? 」
「「ああん? 」」
主人のそんな行動を二体は見逃さなかった。許さなかった。直ぐさま睨み、気迫を押し出す。押し出し捲る。
「ご免なさい! 」
「情なっ! 」
「アッハッハ」
蒼萎は昔からサッカーをして居た。気が付けばサッカーボールを持って居た。誰も一緒にやってくれなくともドリブルの練習だけでも十分楽しかった。
ラジは一応暇潰しに成るかとパス練習の相手にもゴールキーパーにも成った。
碧梧は昔住んで居た場所で「ブルー」と言う名で依頼を受けて居た為、スポーツは余りしなかった。
「そういや、一輪さんとか星さんとか見ないけど何処に居るんだ」
呼び慣れて仕舞ったのかブレードからは「ブルー」と言われ続けられて居る碧梧が訊ねる。
「嗚呼、表に行けば解るよ」
「誰か来たんですね。二人は此処でバトルしてて」
此の二人は「放って置けば何の心配も要らないだろう」精神を持ち合わせて居る為、勝手に表へと行こうとする。
「置いて行くなよ」
「待って碧梧さん」
噂に成る様な物事で有れば首を突っ込みたくも成る。
「へえ、あの男性? 」
鉢巻を着けた好青年の印象を持たせる人間。
「そう、神道のお嫁さんが居るんだけど加藤清正に憧れてるんだって」
「誰だ」
全く学が無いと言う訳では無い碧梧が聞く。当然だ。碧梧達の世界の常識、外の世界で常識と言われる此処の常識と歴史は違うのだ。
「城の建設を任された人。仏教系の人間だとか」
「神道って言っても博麗と守矢が居るけど何方だろう」
「話はちゃんと聞かなかったから何とも」
巷で噂の男性が此方に気付いて向かって来た。顔を見ると日焼けをして居た。そして手がごわごわとか岩みたいで固そうだった。
「今日は、船幽霊さん」
ラジとセアから殺気が漏れ出る。溢れ出る。
「御免なさいね、まさかとは思うけど君達の意中の子だったかな」
蒼萎と似た感じでそうでも無い喋り方で話す。
「おいムラサ。何でこんな奴が噂に成るんだ」
「そうだよみなみっちゃん」
「此の人の嫁がとんでもない人だって」
蒼萎は自然と身近に居るとんでもない女子、幼馴染を思い出した。彼女はとんでもなかった。まさかバスケットボールを自分の顔面に投げ付けるとかあれは本当に。
「多分、ブレードの主人より、博麗のよりもっととんでもない・・・」
「聞いたら怒られますよ」
朱音と霊夢より凄い人間が居ると言うのか。流石は幻想郷。幻想郷の存亡を賭ける様な異変を起こす場所だから当たり前か。
「あ、家のが来ました。じゃあ」
向こうを見ると確かに「とんでもない」の一言で終わらせる女性が立って居た。其の女性は若干老け込んで居る様にも見える。
「へい」
「待てよ」
ラジとセアが同時に肩を掴む。意外と筋肉質だった。
「ムラサに気が有るんなら俺達と勝負しろ」
「そうだよ、殴り合いでもする?
「・・・」
夫と言うとブレードにも家族は居る。
噂の方の彼は女性とアイコンタクトを取った。
「じゃあ早くに終わらせようかな」
「やれるもんなら」
「やってみろ!」
相変わらず仲が悪いのか良いのか解らない程に息がピッタリと合う。
そして、宣言通りに一瞬だった。
「「・・・」」
「お嫁が強いと夫も強いのか」
水蜜、其れは違うと思う。何故なら勇者ブレード嫁と風見幽香より弱いからだ。
「えっと、年齢って・・・」
「ん? 四十は過ぎたかな」
大体ブレードと同じ位。何故か同い年の彼奴が不憫に思えて来た。
「あれ、俺って多分三十・・・」
ふと何か思い出したのか自分の年齢を確認する碧梧。
「そんな訳無いじゃん!? 」
しかし間違いでも無い。作者が此奴を作ったのは幼稚園頃。海外留学とか言ってたから二十としよう。其れから十年。三十歳だ。そんな事言ったら蒼萎は二十歳だぞこら。
「おっさん」
冷やかす様に水蜜は呼ぶ。
「おっさん言うな」
何となく定番と言われる感じのする返しをする。
「夫婦揃って筋トレでもして・・・」
「ああ、自分は宮大工でね。彼女は若い頃すっごい事してたみたい」
此れは勝てる訳が無いよ・・・。恐れを抱いた瞬間だった。