白翼の黒い少女、黒衣の眩い少女
一人の人形遣いは魔界からやって来た。其の魔界と言う場所はイザナギとイザナミの様にでは無いが、神により成型された隣り合わせの別世界。魔界には、幻想郷には無い海ではなく、広大な死海が在り、一頭の鯨の「ホエル」が生息する。又、幻想郷と似て、「明るい魔界」、「暗い魔界」と人妖の仲介者が封印された「法界」とに分かれる。
此れは魔界の話。
此処は人形遣いの家。今丁度、彼女が紅茶を運んで来た所だ。
「ねえ、片付けながら今朝の夢の話でもする? 」
片付けると言っても人形が全てをやってくれる。
部屋が静かに成る予感のした人形師が話し始める。彼女は初めて会った日から変わらない。
「茶を不味くすんなよ」
昔より大人びた感じの某白黒魔女は何時も通り、本を読みながら大きな音を立てて紅茶を飲む。片付ける気無いな、と白衣を身に着けた彼女は思う。
場所は魔界の言わば遊園地。小さく、海と街の近くに在る。家族連れ、友人同士、カップル、私の様に嫌々来ている者は少ないと感じる。ルイズさんから「魔界人の方が飽き性は少ない」と聞いて居たが確かに人が来ない遊園地等、聞いた事が無い。かくいう私も、もしもおもしろければ同じ小説を何度も繰り返し読んだりする。
近くに在った木陰のベンチに座る。隣を見ると知りあいの黒衣の少女が居る。奥にはソフトクリームを持った親子が見える。私は白い翼が生えて白衣を着て居た。
「人混みが出来てるね」
其れはそうだ。何故なら今日は休日、更に魔界人の性格を考えれば人混みは自然と発生する。
因みにアトラクションは、ロデオ、メリーゴーランドの椅子も回るバージョン、観覧車、ジェットコースター。
明るく笑った顔が此方を向く。
「ねえねえ最初は何処に行く?」
元気だなおい。本当に此奴と一緒に居るのは面倒臭い。
「やっぱもう少し座って考えようか。飲み物有るよー」
周りに水滴が付着したペットボトルを笑顔で渡される。私は無言で受け取ったのに何故とても嬉しそうなのか。
不愉快極まり無い。
「どうしたの?」
抑だ、私は何故此処に居るのか。そうだ、此奴は誘いを断られると面倒臭い奴だった。もし誘いを断ると拗ねる振りをしてまで私を連れて行こうとする。だから若干仕方無く付いて来てる。
私が性格を良く知ってるのだから此の我が儘野郎も私の性格を知ってる筈なのだが・・・。
「ねえねえ聞いてる?」
よし、触れないで置こう。
「侵入者が来なくって仕事もなくって、楽しいよね」
私にとって一人で居る方が楽しいけど。
「満更でも無さそうだね」
何故私は此奴と友達に成ったのだろう。違う。友達とか其処迄温く無い。知りあいだ。
「やっぱりね。やっぱり笑顔じゃ無い」
悲しむ声がする。何故悲しそうと思うのか解らない。
何処からか悲鳴と爆発音が聞こえる。人々が逃げ惑う。
「何よ!? 」
此方に向かって来る青白い物体、生き物は
「・・・『やぎ』って奴? 」
形は山羊だった。横腹に青いマークが着いているのでルイズさんから聞いた様な山羊なのかは解らない。
其の山羊はロデオへ向かい乗って遊んで居る様に見えたと思ったら、山羊の上に人が現れ乗っかる。山羊がジャンプすると同時に人が代わる。
魔術の一種なのだろうか。否、動物が魔術を扱う等無理な話。
次にジェットコースターに行き、海の彼方迄吹き飛んで行った。
「マイ」
名前を呼ばれ、ユキを見ると居場所が変わった。はっきり言う。此れは魔術では無い。夢だ。
「私達は」
怒り狂う様に燃え盛る街を後ろにユキは物悲しげな顔で、
友達だよね?
と、聞いて来た。
私達二人を崩れた瓦礫と燃え切れた木が襲う。
「・・・」
密かにして居た期待を裏切られ、沈黙が訪れる。本に集中して居るのか話を聞いたのか。話して途中で片付け終わったのか、人形を休まて居る。
「・・・。魔理沙、聞いてた? 」
「ん? 嗚呼。ユキとマイは、何かのシミュレーションゲームに紛れ込んで仕舞ったって事だろ? 」
「違うわよ? 」
「じゃあ何だ、アリス? 」
クエスチョンマークのやり取り。
「夢で死んだ人は何かしらの変化をするらしいのよ」
「義手義足を武装するとか? 」
「何処ぞの包帯仙人みたく、手足を切り落とされた訳じゃ無いからね」
「青い方のがやりそうだよな」
「あれは中華で、西洋のやり方では無いわよ」
「じゃあ二人に起きた変化って何だよ」
「手紙によると、本音を言い合った結果、離れ離れに成ったわ。でも仕事だから二人は未だパンデモニウムに住んでる」
窓の外は赤い。夢も最後は赤かった。
黒い鳥がカァカァと鳴く。
「・・・帰るか」
魔理沙はそう呟き、箒を手に取る。
「そしたら私は神社に行こうかしら」
アリスは白衣を脱ぎ、何時もの青い服に成る。
速く飛ぶ魔理沙を目で少し追ってからアリスは神社へ徒歩で行く。
神社の方から爆発音がしたが、魔理沙は気にしなかった。
途中ふざけました。
ユキマイでした。