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大人が好きな少女の話

作者:


あぁ、おもしろい、おもしろい。

何度も繰り返される同じ言葉。まるでロボット。これだからイタズラはやめられない。



ーー大人が好きな少女の話




只今授業の終わりかけ。

あと2分くらいなのに時計の針は馬鹿みたいに遅く動かない。


「…であるから、ここはこの方式を使って~」


先生の教える声が、空しく教室に吸い込まれていく。

誰も聞いてないだろうに毎日繰り返す授業、先生はいい加減飽きないのだろうか?

ちなみに私は2日で飽きた。たぶんクラスのみんなそう。


(もっとこう…うま~くやれないもんかね)


この先生の授業は雑談・質問・無駄な話が一切なく、とてもつまらない。

始めから終わりまでノンストップで教科書が進んでいくのだ。

名前は確か…だめだ思い出せない。


あぁ、そういえば。

あの時、ど う し た の かな?


3日前のことを思い出し、おもわず顔がにやける。3日前は、すごい雨だった。

その日私はこの先生の靴と傘を盗んで、近くのドブに捨てた。


(結局、そんな話持ち上がらなかったし…困らなかったのかな~?)


もし困らなかったとしたら残念。

困ってたとしても状況がわからないからもっと残念。


(というか…この先生は何においてもつまらないんだよね)


騒ぐ先生はとことん騒ぐのに。

この先生はちっとも騒がない、何も言わない。


(やっぱ面白いのは教頭だな~、あの慌てよう…)


思い出してくすくす笑ってしまう。

教頭の物は靴も傘もスリッパもコップも車のかぎも財布もすべて捨ててやった。

学校のものなら花瓶も窓ガラスもドアもぶち壊してやった。


(全校集会での話…おもしろかったなぁ、おなじことしか言わないし)


思い出すだけでこんなにも楽しい。

やっぱり、大人ってすごく面白い。


このイタズラは、もうずいぶん前からやっている。

多分小学校1年生前後くらいからずっと。

前はわざと自分とわかる軽いイタズラをしていたがやがてそれも飽きて、今はこんな感じ。


(怒られるのは全然怖くない、むしろそれも面白い)


いつも冷静ぶってる大人がああいう時になると表情を変え感情を普段より何倍も表に出し、理性が少しづつなくなっていく。

頭に血が上っていき、真っ赤な顔をして支離滅裂な言葉を放つ。

鈴みたいに綺麗で小さな声をした先生ですら大砲のような大きな声で罵声を吐く。

私はその様を見るのが愉快でしょうがない。



あぁ、すっごくおもしろい。

大人ってすごくおもしろい。

大好き。

バカみたいで。


「…で、ここはこうなる。ちゃんと全員復習しておくように」


所詮、大人は馬鹿だ。

子供は子供でしかない、大人にはなれない。

大人は自分がそうあろうとするなら大人にだって子供にだってなれるのに。

子供になろうとしない。

大人でいつづけようとする。

年齢は変わっても大人は子供に戻れるのに。

そうしようとしない。

なぜか?馬鹿だからだ。


(まぁ、だから私は大好きなんだけど)


そんな大人たちが唯一子供に戻れるとき。

それが怒った時だ。


だから私は大好きな大人たちを、可哀想な大人たちを、バカな大人たちを、子供に戻してあげるのだ。


(なんて…ただ楽しいからやってるだけだけどねww)



多分、あと数秒で授業が終わる。


さあて、今度はどんなイタズラをしてあげようかな?つまらない大人たち、私の大好きな大人たち。

待っててね、またすぐに子供に戻してあげるから。




end



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