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帰路  作者: まるだまる
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82 交渉の場はファミレス2

 美咲と東条にとりあえず席についてもらう。

 太一の横に東条が座り、その正面に俺、俺の右隣には美咲が座った。

 太一側には、奥から綾乃、太一、東条。

 俺側は、愛、アリカ、俺、美咲の順だ。

 正面にいるよりも、横の方が東条と目を合わせる回数は少ないだろう。

 東条に軽く自己紹介してもらったが、


「東条響、清和台高校二年E組。生徒会書記してます。以上です」


 せめて趣味か興味あること言おうぜ。食いつき辛いだろ?

 美咲と綾乃だけ東条にそれぞれ紹介。

 東条と綾乃には目を合わせないようにだけ注意しておいた。


「今度遊びに行くのは成人同伴なのね。家族に説明がしやすいわ」

 東条はふむふむと頷き、納得しているようだった。


 みんなに何か食べるかと聞いたところ、みんなそのつもりで朝飯を食べてこなかったらしい。

 なんだ。みんな考えることは一緒か。

 一段落したところでベルを押し、それぞれ注文を頼む。フリードリンクはお約束だ。


「香ちゃん。愛これ食べたい」

 メニューを指差しながら愛がいう。

 アリカに甘えているところをみると、やっぱり愛は妹なんだなって思う。


「いいわよー。あんたの分はあたし出してあげるから」

 アリカはアリカで姉らしいことを言っている。

 姉には見えにくいけどな。

 はたから見て幼女と言っても、おかしくないし。

 急にアリカが俺をぎろっと睨んでくる。

 慌てて目をメニューに向け目を逸らす。

 勘の鋭いやつめ。


「そう見るとやっぱアリカちゃんはお姉さんしてるよな」

 太一がアリカを見て言った。

 言われたアリカは少し照れた表情を見せる。


「え、そ、そう。愛にはいつもお弁当作ってもらってるから」

「あら、愛……アリカ、相変わらず料理は駄目なの?」

「東条、余計なこと言わなくていいから」


 アリカお前、さっき東条の言葉を気にしなくていいって、自分で言ったぞ?

 東条は東条で結構毒舌だな。

 この辺もクラスの奴に距離を取られる理由なのだろうか。

 早速アリカって言ってるところは感心するが。

 それぞれ注文して、俺達はドリンクコーナーで思い思いのドリンクを入れてテーブルに戻る。


「さて、それでは、本題に入ろうか。太一から言ってくれ」

「んーと考えたんだけどさ。この人数だろ。総合会場がよくない?」


 確かに総合会場なら遊び場と買い物それに飲食施設も隣接してるから無難だ。


「イベント調べてきたけど。三日、四日ってアミューズメントパークで色々やってるみたいだぜ」


 そう言って太一は持ってきた鞄の中からイベントの描かれたチラシを出してきた。

 それぞれ太一からチラシを受け取って見ていく。


「犬猫わんにゃんショーか。これ見たいな。それに宝探しイベントってのも惹かれる」


 宝探しって景品がしょぼくても結構燃えるんだよな。

 謎解きとかあると特に。 


「新しいアトラクションも完成してたみたいね。観覧車も乗ってみたいよね」

 アリカもチラシを愛に見せながら呟いている。

 愛は横でコクコクと頷いていた。


「他の場所、提案あるかな?」

「電車で少しかかるけど、水族館がリニューアルされてるわよ。父が言ってたわ」

 東条がボソッと言った。


 何! 水族館がリニューアルだと? すげえ惹かれる。 

 美咲がちらっと俺を見たが、言葉は出さなかった。

 

「アリカは何かあるか?」

「あたしも総合会場がいいと思ってたから。小さい遊園地もあるし」

「香ちゃん、コースターとか好きだけど、お化けとか怖いの駄目でしょ?」

「余計なこと言わなくていいから!」


 ほほう。怖いのが苦手だと? 確かホラーハウスもあったな。

 これはぜひアリカに黄色い悲鳴をあげてもらおうか。


「美咲さんは?」

「私も総合会場がいいかな。遊園地で遊んで、帰りにボーリングってのどう?」

「それならカラオケも行きたいです!」

 綾乃が手を挙げながら言う。

 連休だと混みあうから、ボーリングとカラオケは難しいだろう。

 待ち時間を相当覚悟しないといけない。

 どちらか一方に絞れば可能な気はするが……。


「明人君はどこがいいのかしら? あなたも意見出さないと駄目よ」

 俺が考えていると、東条はチラシを見つめたまま俺に意見を求めた。


「んー、遊びに行く場所はどこでもいいんだけどさ。飯だけ希望出したい」

「ご飯って、どこか希望あるの?」

 美咲が首を傾げて聞いてくる。

 俺は鞄からネットで拾って印刷してきた飲食店のプリントを出した


『開店五周年記念。ドラゴンスクリューも真っ青、龍善たつよしラーメン』

「こ、これは? 清和市が誇るラーメン屋《龍善》の広告じゃないか!」

 太一が驚愕の声を上げる。

 ふふん、予想通りの反応だ。


 ラーメン屋《龍善》。


 店の規模は小さいながらも、全国放送のラーメン対決で去年優勝した店だ。

 以前から美味いと評判だったが、今まで一度も行けなかったのだ。

 テレビの効果は絶大で、混雑時には長時間並ぶことは当たり前。

 ずっと行きたかったが、機会を得られずにいた。


「ああ、ここがそうなんだ。あたしも行ってみたいな」

「愛もラーメン大好きです」

 愛里姉妹はかぶりついてくる。

 よしよし、いい子達だ。


「私もお兄ちゃんにずっと行きたいって言ってたんですよー」

 よしよし、太一もいい教育を施しているようだな。


「ラーメンねえ。あまりそういうもの食べないのだけれど、たまにはいいかもね」

 お、東条まで乗ってきた。これは確定か?


「わ、私、麺類はちょっと」

 おおっと、ここでダークホース現る! まさかの美咲が反対表明。

 あー、そうか。パスタに通じるものあるんだろうなー。

 ここで注文するときもパスタのページすぐさま飛ばしてたもんなー。

 ラーメンとパスタかなり違うから大丈夫と思ってたんだけどなー。

 いかん。心の中でなーなー族が繁栄しとる。


「美咲さん、龍善はチャーハンと野菜炒めのセットも有名だよ」

 太一が支援はまかせろといわんばかりの援護射撃をしてくる。


「え、チャーハン美味しいの? 私チャーハン好きなの」

 美咲はチャーハンホイホイに引っかかったようだ。ナイスだ太一。


「どうやら食事は決まったようね」

 東条が龍善の広告をじーっと見て言う。

 お前、本当は自分が凄く行きたいだろ?

 お読みいただきましてありがとうございます。

 次回もよろしくお願いします。

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