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帰路  作者: まるだまる
365/406

361 夏の終わりに追い込みを1

 夏休みも残り一週間を切った。

 俺は夏の課題を既にコンプリート済みだ。


 次の土曜日、バイトが休みの俺に合わせて、太一、長谷川、川上と柳瀬が家に来て一緒に課題をやる予定だ。それぞれに課題の進捗を聞いたところ、川上と柳瀬は言葉を濁していたのでほとんどやってないぽい。

 太一はきっぱりやっていないと明言。あれは駄目だ。強制的に泊まらせて徹夜させてでもやらせよう。

 長谷川は半日もあれば終われると言っていたので、終わったら俺と一緒に監視役に回ってもらおう。


 と、そんな話を響との夏休み3回目のデート中にしていた。


 響と愛の間で結ばれた協定は守られていて、約束した日以外で響も愛も単独で接触してくることはなかった。しかし、二人が揃っている場合、俺の家に来たことも多い。

 俺が留守の時にも、留守番していた美咲と晃から二人が何度か尋ねてきたと聞いている。

 連絡を先にくれれば俺も家で待っておくのだけれど、この二人はいつも不意打ちを狙ってくる。

 どうやら俺を驚かせたいらしいが、当の本人がいなくては肩すかしにしかならないだろう。  


 デートの最中に響が忽然と姿を消して探し回る羽目になった。

 あれほど気を付けていたのに、一瞬の隙をついて姿を消しやがった。

 方向音痴の響が自己判断で動くのは危険すぎる。しかも移動速度も尋常じゃない。

 すぐさま携帯で連絡を取ったのに、既に普通なら5分以上かかる距離を移動してやがった。


 そのあとはずっと響と腕を組んで歩いていたので、はぐれることはなくなったが、気を付けなければならない。不意に秋に行われる修学旅行のことが思い浮かんだ。響と一緒に組む奴はかなり危険な気がする。相手が分かり次第、接触して注意を促そう。


 課題を集まってやる話をすると響が珍しく俺にお願いごとをしてきた。

 愛が夏休みの課題をあまりやっていないらしく、響の手に負えないので監視役を手伝ってほしいと俺に言ってきたのだった。

 あれ、アリカから聞いた話とちょっと違うな。

 響が課題を教えに来て、そのあと響が習い事の時間になるまで遊んでると聞いていた。

 てっきり課題はある程度進んでいると思っていたんだが。


「お前が監視するとか言ってなかったか?」

「まさかここまで手こずると思わなかったのよ。愛さんの口八丁手八丁につい乗せられてたの。反省しているわ」

「アリカからお前が課題を教えに来てて、そのあとで愛と遊んでるって聞いてたけど」

「遊びだけが目的じゃなかったのよ? 課題のほかに愛さんの勉強をちゃんと継続させるつもりで行ってたの」 

「課題はどれぐらい終わってんの?」

「……現状三割、もしくはそれを切ってるくらいね」

「……残りの期間で七割か、それきついな。ところで、今日の愛は何やってるの?」

「愛さんは今日、花音さんたちと遊ぶって言ってたわ」

「本人も自覚なしか。これは駄目だな。よし、今度俺たちも俺の家で集まって課題をやる予定だから、お前も愛を連れてこい」 

「そうさせてもらうと助かるわ。あの子、私相手だとすぐ色々な勝負を吹っかけてきて、勉強する機会をなくそうとするの」

「お前相手に勝負を吹っかけるって。それ無謀だろ。愛が料理以外でお前に勝てるって気がしないんだけど?」

「……私が経験したことのないものばかりで勝負を吹っかけてくるのよ。トレーディングカードとか」

「勝負ごとに熱くなるお前はそれに乗せられたってか」

「返す言葉もないわ。まあ、最初の一、二回は負けて、そのあとはいい勝負になって、最終的には勝てるんだけど」

 

 順応性の高い響のことだ、ルールとか要領さえ覚えれば勝てるのだろう。

 

「ベーゴマは運も絡むから意外と面白かったわ」

「響も楽しんでたみたいだな」

「愛さんは自分のだけど、私はアリカのを借りてやってみたの。武器が付いてて付け替え可能だったから色々なパターンが試せて面白かったわ」


 何そのベーゴマ。俺もやってみたい。 

 まあ、それはともかく響にとっても楽しい夏休みになったようだ。


「それでどうなのかしら。みんな課題は終われそうなの?」

「太一は厳しいだろうな。その日は泊らせて終わらせる予定だ」

「……へえ、太一君は泊るのね?」

「あいつ全然課題やってないからな。徹夜でもさせてちゃんとやらせる」

「じゃあ、土曜日に明人君の家に行けばいいのね?」

「ああ、今度の土曜日俺んち集合で。午前中から集まる予定だから時間が分かったら連絡する」

 

 ☆


 金曜日、風呂から上がった後に春那さんから絡まれ、黒美咲からお仕置きされ、ようやく解放された俺はわき腹を押さえつつベッドに転がりながら携帯を見る。

 ちょっと遅くなったので既に来ているだろうと思っていたメールがやはり来ていた。

 アリカからの寝る前メール。ほぼ毎日といってもいいくらいするようになった。

 美咲たちと一緒に暮らし始めてから始まったことだが、今ではもう習慣になっている感じだ。

 バイト先で顔を合わすことがあってもなくても、このメールをすることは多い。

 やり取りは2、3回で済むこともあれば、時間を忘れてしてしまうこともある。

 寝る時間がとっくに過ぎてることに気が付いた時は二人とも慌てて止めるけれど。

 

 明日という件名で届いていた。

 本文を見てみると「部活もないからあたしも行っていい?」という内容だった。

 響も愛も参加するのだから全然問題ない。


「OKだけど、お前も課題ができてないとか言うんじゃないだろうな?」と返信する。

 すると、すぐに「とっくに終わってる」と返ってきた。

「愛の監視か?」と送ると、「それもある」と返ってきた。

 

 それもというのがよく分からんが、ともかく明日の課題やっつけ会にアリカも参加することになった。


 ☆


 土曜日――今日はてんやわん屋が休みの日。

 今日は課題をやっつけるためにみんなで俺の家に集まる日だ。

 

 文さんは休みだが出かけ、春那さんは仕事に出かけた。

 午前十時にみんなが来る予定になっている。


 一番乗りしたのは轟さんに送ってもらった愛里姉妹と響。

 その次に太一と長谷川が到着。長谷川が太一を叩き起こして連れてきたらしい。

 二人が一緒に来たのを見て、愛がまたニヤニヤしている。

 それから少しして、川上と柳瀬が一緒に我が家へ訪ねてきた。

 今更にして初遭遇のアリカと柳瀬がお互い初めましてのご挨拶。

「本当にちっちゃい」

 川上から愛の姉である話を聞いていたようだが、柳瀬がアリカを見て言った。

「木崎君、この子はお持ち帰りしていいのか?」

 それを聞いたアリカが、柳瀬からすぐに距離を取った。

 お前はアリカに何をする気だ。見ろ、アリカが警戒したじゃねえか。 


 出迎えには美咲と晃もいたがなにやら準備があるといって、二人して二階に上がっていった。

 人数も人数なので、俺たちはリビングでやっつけ会をすることにした。


 太一の横に長谷川、向かいに川上と柳瀬が座る。


 もう一つの座卓には、愛を両サイドから響とアリカが挟んで座る。

 さすがの愛も姉と響の二人に囲まれて大人しく課題に手を着け始める。

  

「では、さっそく写させてくれ」

「まず自分でやれ」

 太一の言葉に俺が返すと、

「「なんだって!?」」

 と、太一のほかに柳瀬まで声を上げて言った。


「前半戦で多少は進めたんだ。半分は終わってるだろ? 残りを全部写そうと思っていただろうが、そんなことはお前らのためにならん。少なくとも午前中は自力でやれ。しっかり監視してやるからさぼるなよ」 

「あ、明人、お前は鬼か!」

「くっ、さっさと写して残りを遊び呆けようと思ってたのに。騙したな!」

 太一と柳瀬が口々に文句を言う。

「いいからさっさと用意しろ。分らんところの解き方とかヒントくらいは教えてやるから」


 しばらくというか、30分もしないうちに音を上げたのは愛だった。


「無理です。今日中に終わるなんて思えません!」

「さぼったあんたが悪い。ほら手を動かす」

「だからあれだけ言ったでしょ? 少しずつでいいから進めなさいって。愛さん字を間違ってるわ」

「鬼が二人もいる~」

 愛は泣きそうな顔をして俺に助けを求めるが、ここは俺も心を鬼にせねばなるまい。

「まだ時間はあるから頑張ろうね」


 そう言うと、愛はがっくりしてまた課題に目を向けた。  


「夏休みに課題を出すのっておかしいと思わないか?」

「柳瀬もそう思う。課題とか宿題を出したって学習能力が上がると思えない」

「千葉ちゃんの意見はなんか違う気がするけど、学習能力が上がると思えないってところは私も思うなぁ」

「あのなお前ら。課題とか宿題ってのは家でも勉強する習慣をつけさせるためにあるんだぞ。一度学校でやってるんだから復習になるだろ」

「学校でも分からんもんが家で一人でやって分かるはずがないだろう!」

「そうだそうだ!」


 何故か太一と柳瀬がタッグを組んでいた。


「教科書があるじゃないか」

「教科書見ても分からんから言ってるのだ! 柳瀬的に家で教科書を見ようなんて気がそもそもない!」

「お前らな、文句ばっか言ってないで川上を見習え。さっきから黙々と自分の課題を進めているぞ?」

「……あー、川上は前半戦で柳瀬より課題が終わってないから必死なだけだ」


 柳瀬の言葉に一人黙々と作業を進めていた川上は体をびくっとさせる。


「……おい川上。お前あとどれくらい残ってるんだ?」

「な、七割くらいかな?」


 汗を浮かべて目を逸らして言う川上だった。

 太一より進んでいない奴がここにいた。


「……それ間に合うのか?」

「う、写させてもらえれば何とか」

「写せるものはいいが、写せないものを先に何とかしろよ?」

「い、今それをやってる」

「死ぬ気でやれ」

「はい……」    


 こうして午前中、多少の雑談はあったものの、課題のやっつけ会は順調に進んだ。


 お昼の時間が近づき二階にいた美咲たちが下りてきた。

 いつもなら愛が手料理を振るってくれるのだが、今日は課題が優先だ。

 晃が昼食の用意をしてくれる。

 手が空いている俺と響が手伝って昼の用意をし始めた。

 

 こら、美咲。暇だからってアリカを襲うな。

 愛を見張るやつがいなくなるだろ。

 


 昼食が終わり、課題やっつけ会を再開。

 晃と美咲もなぜかそのまま居ついている。まあ、邪魔はしないようなので放っておこう。


 長谷川は無事に課題を終え、今は太一の監視役に回っている。

 相変わらず太一には容赦のない長谷川だった。

 たまに殴っているけど、気にしないでおこう。


 突然、課題を進めていた川上が立ち上がり、ソファーに寝ころんでいたルーを捕まえて抱きかかえる。

 ルーは相変わらずされるがままだ。たまには怒っていいぞ?         


「ルーさん、ルーさん。私これからどうなるのかな?」

「おい川上、猫を相手に現実逃避するな」

「だって、この時間でやっと半分なんだよ?」

「自業自得だろ。手間がかかるやつはやっとけって言っておいただろ」

「夏の誘惑に勝てるわけないじゃない!」

「まあ、多少遅くなっても問題ないなら晩飯も用意してやっから、家に連絡しとけ。帰りはちゃんと送ってやるし」

「うっ、木崎君が悪魔にも神様にも見える」

 どっちだよ。


「「「あれ?」」」


 長谷川、アリカ、柳瀬が俺と川上のやり取りを聞いて、急に素っ頓狂な声を出した。

 

「どうしたお前ら?」

「今日って、明人の家でお泊り勉強会じゃなかったの?」

「泊るのは太一の話だが?」

 するとアリカと愛は響に視線を向ける。

「響、話が違うじゃない」 

「愛さんが今日で終わるわけないじゃない。既に本居先生にも了解はいただいてるわ。まあ予定外だったのはアリカだけだったけど、明人君が参加していいって言ったんでしょ」

「確かにアリカが来るのは構わないって言ったけど。俺、みんなが泊まる話なんて聞いてないぞ。誰が泊まるんだ?」

「みんなよ。もうみんなそのつもりで来てるわ」

「泊るのはいいけど布団足りねえぞ」

 母親が使っていた部屋は誰も使っていなくてがらんどうだから寝る場所はある。

「寝る場所がないなら、私が明人君のベッドで一緒に寝ていいのよ?」

「柳瀬記録!」

「了解。記録した」


 止めろお前ら。太一が俺の部屋で寝る予定だから、そこに響を入れるわけにいかない。

 慰安旅行の件もあるから、響と二人になるのはうれし、いや、困る


「昨日の夜に文さんと春ちゃんからみんなが泊まるって聞いてるよ? 布団も春ちゃんが用意してもう部屋に置いてるし、午前中に晃ちゃんと二人で日干しとかして用意してたの」


 話を聞いていた美咲がそう言った。


「マジで? 俺だけ聞いてないのかよ。みんな本当に大丈夫なのか?」

「本居先生が全員の家に連絡済みよ?」


 いつの間にかお膳立てされていた。 


「ああ、分かった。人数多いから風呂は早めにしよう。晩飯の買い出しとかも大変だなこれ」

「買い出しは私と晃ちゃんで行くからいいよ。今日は暑いけど人数多いから鍋にしようって文さん言ってたし、用意も春ちゃんがほとんどしてくれてるから、そんなに買い出しもないし」


 聞くと俺から太一が泊まると聞いた響が本居先生にこの話を持ち掛けたことが分かった。

 文さんは青春だねと言って喜んで許可してくれたそうだ。

 これはわざと隠してたな? 仕返しに文さんの酒をどこかに隠しておこう。 


 美咲と晃が早めに晩飯の買い出しに出かける。

 くれぐれも美咲を見張っておくようにと晃に注意して、任せることにした。

 あいつ一緒に買い物行くとしれっと自分の嗜好品買うときあるからな。 


 残った俺たちはやっつけ会の続きをしていたが、疲れが見えてきたのでちょっと休憩。

 太一、愛と川上のペースを考えると、徹夜も覚悟だな、これ。


「そういえば川上さんと柳瀬さんは明人のこと、木崎君って呼ぶんだね?」


 俺の横にちょこんと座ったアリカが川上と柳瀬に向かってそう言った。

 なんかアリカから木崎君って呼ばれたの初めてな気がする。

 なんとなく気持ち悪いな。


「柳瀬は姓で呼び合う方が好きだからわざとそうしてる。自分のことも姓で言うくらいだ」

「私もどっちかっていうと、下の名前で呼び合うことに慣れてない。ちっちゃいときはあったけど」

「そういえば、いんちょも姓で呼んでないかい?」

「私も川上さんと一緒だよ。下の名前で呼ぶことに慣れてないの。だから今でも千葉ちゃんだし」

「千葉ちゃん言うなし」


 川上と柳瀬って前から仲がいいけど、いつからなんだろう? 


「川上と柳瀬は確か同じ北中出身だったよな?」

「そうだよ」

「川上はもろに北中の学区だけど、柳瀬は西中の学区との境界線に住んでる。家前の道路挟んで向こうはもう西の学区だ」

「なんか仲良くなったきっかけってあったのか? クラスが同じだったとか」

「んー、中学の時は川上とクラスが一緒になったことは一度もない。川上と特に親しくなったのは中学二年の時にやったイベントからか?」

「確かそれぐらいだったと思う。部活で放送部と新聞部が一緒になんかやったときだったんだよね。柳瀬とは妙に気が合って、それからよく遊ぶようにもなった。部室も隣だったし、部活自体絡みあうこと多かったから」


 高校に入ってからずっと同じクラスで一緒にいるらしい。

 

「川上とは先にどっちが彼氏を作るかを争うライバルでもある」

「お前ら二人とも見かけは悪くないんだから、作ろうと思えばすぐに作れるんじゃないのか?」

「聞いたか川上。あの男、今度は私たちも自分のハーレムに入れるつもりだぞ」

「ああ聞いた。実は柳瀬もキューンとかきてるんじゃないの?」

「この柳瀬が? 殺すぞ? そもそも木崎君は趣味じゃない」

「それを言ったら私も一緒だ」


 こいつら本当に好き放題言ってくれるな。

 おいアリカ、なんだそのへんてこな顔は?

 ふーんって言いながらなんで納得できたみたいな顔してんだよ。


「まあ、俺のことはともかく、太一も前に言ってたんだぜ? 川上とか柳瀬とか可愛いって」

「おい明人、あれはうちのクラスのレベルが平均より高いって話で」

「一緒にカラオケ行けてラッキーとか言ってたじゃねえか」

「へえ? 千葉ちゃんそういうこと言ってたんだ? そういう目線でクラスの女子を見てるんだ?」

「一般論だし! そういう目で見てねえし!」


 太一に詰め寄る長谷川の態度を見て、愛がニヤニヤし、川上と柳瀬もちらりと視線を向ける。

 傍から見ると長谷川がやきもちを焼いているようにも見えなくないか。

 まあ、あの二人は放っておいて、川上らに話の続きでも聞くことにしよう。

 

「お前らに夏の出会いはなかったのか?」

「川上、どうやらこの男は乙女心をえぐるのが好きらしいぞ」

「気が利かない男なのは知ってるけど、もうちょっと言う前に考えた方がいいよね」


 どうやらこの夏、イベント的な出来事は二人になかったらしい。

 

「世の中の高校生はどうやって彼氏彼女の関係になっているのか柳瀬はよく分からん」

「ドラマとか漫画みたいなイベント発生がないよねー。東条さんとか愛里さんみたいに木崎君とイベント的な感じのきっかけが私たちには日常的にない」

「好みのタイプとか憧れの先輩とか学校にいねえの? 部活の中とか他の部活とか」

「一応そういうのはあるけど、川上も柳瀬も相手を調べるからな。その時点で不合格になるものが多いのだ。普段は格好いいけど、ちょっと調べたら付き合ったら最悪な部類に入るやつだっていた」

「一癖二癖持ってるやつばっかりなのよ。いけると思ったやつには彼女がいる」

「柳瀬は逆に聞いてみたい。木崎君に惚れてる東条さんと愛里さんはこの男のどこがいいんだ?」

「「全部」」


 即答だった。

 止めてほしい。ものすごく恥ずかしくなる。


「私は浮気以外なら何しても許せるわ」 

「最終的に愛のところに来れば愛は許します」

「それは浮気されてもってこと?」

「えーと、たとえば明人さんが愛と付き合っていて、響さんに誘われてえっちぃことしても、心が愛に向いているなら愛は許します。男の人の欲求は本能みたいなものもありますし」

「何故そこに私の名前を出すのか問い質したいところだけど、愛さんは寛大なのね」

「いえいえ、寛大じゃないです。明人さんは許しますけど、もしそうなったら響さんは……」

「とことん追求したくなったわ。私はどうなるの?」

「痕跡も残らないくらいこの世から消します」


 病んだ感じの目でニタァと答える愛だった。

 逆に怖いわ。 

 お読みいただきましてありがとうございます。

 次回もよろしくお願いします。

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