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帰路  作者: まるだまる
189/406

188 清高生徒会5

 南さんが姫愛会の会長?


 まさかのボス登場じゃないか。

 一応、響の了解を取ってから今までの経緯を話してみた。


「あらまあ。そんな事は私ぜんぜん言ってませんけど? 困らせるようなことはしては駄目よとは言ったけれど」

「言ってる本人が一番困ったことしてくれてますよね?」

「ひどいわ東条さん。それは誤解というものよ。スキンシップを取りたいだけなの」

「胸を揉もうとしたり、下着の中に手を入れようとするのがですか?」


 響、お前生徒会で何されてるの? 見学行ってもいい?


 南さんは俺達に姫愛会の立ち上がりについて教えてくれた。


「私、去年も生徒会してまして。あなたたちが入学式の時、私もいたのよ。入学式って、いの一番に見れるでしょ。えも……可愛い子がいないかなって見ていたの」


 今、獲物って言いかけませんでしたか?


「その時いた東条さんに一目惚れしまして。これはぜひ私のハーレ……お茶会に誘わねばと」


 今、ハーレムって言いかけませんでしたか?


「お誘いしたのに東条さんたら無下に断るんだもの。寂しかったわ」


 よよよと響の肩に倒れこむ南さん。

 響が南さんの腕をがちっと掴んで、


「……あの、副会長……さりげなく私の胸を触ろうとするのやめてもらえます?」

「……ちっ。 まあ、ともかく狩りは……お誘いは失敗したのですけど」


 今、舌打ちしたよね?

 しかも今、狩りって言ったよね。確実に言ったよね。


「私の辞書に諦めと言う文字はございませんの」


 やばい。この人、変態だ。

 一番常識人に見えたのに一番変態だ。


「まあ、それはともかく。実は姫愛会というのは、元々、東条さんのファンクラブでもなんでもないのです。私、お茶会でのあだ名が『華姫』でして、元々は私を愛でる会だったのよ。まあ、秘め愛会っていう語呂合わせもあったんで、その名前になったのですけど」


 ぽっと顔を赤らめて言う南さん。 


「そこには私の愛する恋人達がいまして……」

「……複数形でしたよね?」


 横から愛がぼそっと聞いてくる。

 流すんだ。ここは全力で流した方がいい。

 

「もしかしたら、うちの娘達が私に気を遣って、東条さんから人を遠ざけているのかもしれないわね。私からも言っておくわ。余計なことはしたら駄目って」

「……あの、サイトとかはご存知ですか?」

「ああ、掲示板ね。たまに発信はするけど、書き込みはあまり見ないのよ。この間ボウリング場で東条さんに会った時は発信したけど」


 情報流したの、あんたか……。


「今の話を聞いてて思ったんだが……」


 ぽりぽりと頭を掻いて、北野さんが立ち上がる。


「やっぱ、お茶会同好会は全力で潰した方がいいよね?」

「いやああああああ! 舞、それだけはやめて! 私のハーレムを壊さないで!」


 北野さんの一言に南さんが涙ぐみながら絶叫した。

 表向きは同好会だったんだ? しかも今ハーレムとか言ってるし。

 そこは潰していいと思います。


「活動実績をちゃんと上げないと部への昇格もできないよ?」

「分かってるわよ。だから東条さんを諦めずにお誘いしているんじゃない。茶道習ってるって聞いたし。もし、うちの会に入ってくれたら部へも昇格できるんだもの。それに私にとっても一石二鳥……」

「動機が不純! やっぱ潰す!」

「いやあああああああああああああ!」


 早めに実行した方がいいと思います。

 会長の英断に期待しよう。 


「部活って同好会もあるんですか? 愛、はじめて知りました」

「うん。あるよ。人数が六人以上と顧問がいれば部として昇格できる。毎年出来ては消える同好会もあるけどね。華のところは募集すらしてないからね。華が気に入った子しか誘わないから」


 会長が説明してくれていると、突然、生徒会室の扉が乱暴に開いた。


「華姫! 悲鳴が聞こえましたけど何かあったんですか?」


 何だか中性的な顔つきをした女子が突然入ってきて、南先輩を抱きかかえる。 


「ああん、雪ちゃん。大丈夫よ。ちょっと舞に意地悪されただけ」


 雪と呼んだ女子の胸に顔を埋める南さん。

 手がその人のお尻触ってるのは気のせいか?


「またですか? ちょっと北野。華姫をいじめるなって何度言えばわかるの?」

「柏木、そっちこそ隣だからって、生徒会室に乱入してくるなっていつも言ってるだろ。それに私は悪くない。そっちの素行が悪い」


 会長のおっしゃるとおりだと思います。

 隣のクラスということは北野さんと同じクラスのA組、つまりは三年ってことだな。

 柏木雪って人。男装したらきりっとした格好良さそうな感じに見える。


「大丈夫ですか。後で私がたっぷりと慰めてあげますからね?」

「ああん。雪ちゃん。相変わらず頼りになるわ。私もお返ししますね」

「やっぱ潰そう」

「同意します」


 追い討ちを掛けるように響が同意する。


「いやああああああああああああああ!」

「ああっ、華姫様お気を確かに!」

「西本、お前よくこんなところでいられるなあ」


 太一が呆れたように西本に言う。


「まあ、ちょっと変ですけど。仕事となると有能な方ばかりですので」


 ちょっとどころじゃないと思うけど?

 北野さんが喚きたてる柏木さんを追い出して、ようやく生徒会室が落ち着いた。


「まあ、ともかく華。同好会を潰すうんぬんはともかく、あんたのところが暴走してるのは事実なんだから、ちゃんと責任取りなさい。知らなかったじゃ済まされないわよ」

「……はい。わかりました。いろいろ手を回してみます」


 しゅんとしてうな垂れる南さんだった。

 いや、いるんだな。知れば知るほど尊敬できなくなる人。

 最初の印象は気品ある常識人の副会長だったけれど、もう、そうは見えない。

 

「会長さんって、芯がしっかりしてますね」

 横から愛がぼそっと呟いてくる。


「響も一目置いてるみたいだしね」

「……さて。見たいもの見れたし。変な問題もかたついたし。ちょ~っと仕事しようか?」


 北野さんの一言に南さん、響、西本が固まる。


「あの、会長。今はお昼休みですし、木崎君達もいるので……」

「そうそう。駄目よ、舞。お客さんがいるときは。ね?」

「明人君、太一君、愛さん。先に謝っておくわ。ごめんなさい」


 そう言って響は俺達に頭を下げた。


「てめえら、何ふざけてんだ?」


「「「へ?」」」

 突然の怒声に俺達はびっくりした。


「スケジュールとっくに過ぎてんだ! 出来てないのはお前らのせいだろが!」

 北野さんが豹変した。


「華、来月の澤工とのやつどうなった?」

「はい! 目下調整中です」

「遅い! GWまでに終わらせろって言っただろ?」

「はい、すいません。今日夕方までに相手方と再度調整します!」

「西本、四月分部活動費計上終わったのか?」

「はい。しました! これです」

 受け取ったノートをパラパラとめくり、蛍光ペンで素早くマーキング。

「馬鹿野郎! 間違いだらけじゃねえか。マーキングした所全部やり直し!」

「はいぃ!」

「東条、4月の議事録見させてもらった。もう少し短くまとめられないか?、その分、字が大きく出来るだろう。読めなかったら議事録にならん」

「はい。挑戦します」


 鬼と化した北野さんは三人にどんどんと指示を言い渡す。

 北野さん自身はその合間にスケジュールに基づいての新たな企画書作り。

 

 俺と太一、そして愛はあまりの慌しさにポカンとするばかりだった。


 そんな俺達を北野さんはチラリと見て、


「お前ら暇そうだな?」

「「「へ?」」」

「ちょ~っと手伝ってもらえるか?」


 嫌をも言わせぬ迫力で、北野さんからプリントの束を渡されソートするよう頼まれた。

 三人で手分けしながらソート作業を進めていく。


「か、会長さん、怖いです」

「うん。怖い」

「これがうちの生徒会か。濃いな」


 なんだかんだと働いて昼休みは過ぎていった。

 お読みいただきましてありがとうございます。

 次回もよろしくお願いします。

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