162 Walk around4
はい、GWを友人達と一緒に天国と地獄を満喫中の木崎明人です。
右手にはナイスバディの可愛い子がくっついています。
左手には日本人形のように凛とした美人がくっついています。
状況から見ると、とてもリア充してるハーレムの主人公みたいです。
ただし、同時に何故か後ろから絶世の美女に首を絞められ、前から幼女を見紛う可愛い女の子からボディブローを食らっています。次の噂はこれでお願いします。
「ちょっと油断していたら何をしてるのかな~? ねえ明人君?」
ギリギリと後ろからスリーパーホールドを極めてこようする美咲。
顎で何とかブロック。
「何ベタベタしてんのよ!」
ドスドスと俺の腹に正拳突きを繰り出すアリカ。
普通に痛いです。
「愛さん。もう堪能したでしょ? 離れてもらっていいかしら?」
「いえいえ。全然足りません。響さんもくっついてたら暑いでしょ? お先にどうぞ」
美咲とアリカのことなどお構いなしに二人で冷戦よろしく舌戦を繰り広げる。
せめて両腕を離してやってくれないか?
防御すら出来ないし、身動きできないんだ。
唯一の褒美は両腕と背中に柔らかいものが当たっているくらいだ。
愛は知ってたけど、響も意外とあるよね。
それよか、誰かまじで助けてくれ。
助けてくれと太一に視線を飛ばすも、太一と綾乃は映画のポスターを見て話に夢中だ。
おい、心の友よ。早く気付いて助けてくれないか?
そろそろ意識が飛びそうなんだ。
☆
悲惨な状況に陥っているのに気付いた太一と綾乃が慌てて助けに来てくれた。
危なかった。あと数秒遅れてたら気絶してた。
「もう! 美咲さんも、アリカさんも、響さんも、愛さんも、明人さん死にかけてたじゃないですか!」
「「「「……ごめんなさい」」」」
中学生に怒られる大学生と高校生。
いや、まじで反省して下さい。
「もてるって大変だな~。なあ明人」
俺の肩を抱いて言う太一。
「……あれをもてると言うのなら、お前も同じ道に入るか?」
「俺はもてないからな。その心配は無用だ」
じとーっと睨みながら言うと、太一は胸を張って偉そうに返した。
太一よ、言ってて虚しくないか?
太一は俺の肩から手を離すと、
「そろそろお茶でもしようぜ。そろそろゆっくりしたいだろ?」
ニヘラと締まりのない顔でみんなに告げた。
「どこよろっか?」
「この間のジャンボパフェ……」
「香ちゃん駄目だからね」
「ファミレスって近くにありましたっけ?」
「私に聞くと確実に間違えるわよ?」
先ほどまでの喧騒が無かったかのように歩き出す五人。
「おーい明人。置いてくぞー?」
大声で呼ぶ太一に手を上げて追いかける。
なんだか自分の居場所がちゃんとそこにはあって、居心地がいいって、こういうのなのかなと思った。
☆
少しばかり散策するがファミレスも混んでいて、空きが見つからない。
「んー、繁華街も何だか混んで来たね」
「ちょっと響。絶対はぐれないでよ?」
「大丈夫よ。あら、あんなところに子犬が……」
「「だから行かないで下さいってばー!」」
がっしりと響にしがみついて子犬の所へ行こうとする響を阻止する愛と綾乃。
何やってんだか。
繁華街といえば夕方から夜にかけて老若男女問わず集う場所でもある。
混みあってくると万が一にもはぐれた場合に困る。(特に響が)
「喫茶店も混んでるしなー。ゆっくりしたいんだけど」
太一と俺とで何件か店を回ってみたが、人数が人数だけにバラバラに座る所しか見つからない。
「明人、これじゃあ埒が明かないから、この間集まったファミレスでいっそのこと飯にしちゃう?」
「……そうだな。俺は飯は外で済ませるのいいんだけど。みんなそれでもいいのかな?」
家族がいるのに外で食事させるのは何だか申し訳ない気分になった。
それぞれが帰りを楽しみに待っているんじゃないかっていう気になったからだ。
「俺と綾乃はそのつもりで来たぞ? 他のみんなにも聞いてみる」
太一が気にすんなと俺の背中を叩く。
俺としても愛を送っていく約束があるので近くだから好都合だ。
太一がみんなにファミレスで食事に変更と提案すると、みんなも賛成した。
どうやらみんなもそのつもりだったようで、俺が気にし過ぎただけのようだ。
行き先も決まり、ファミレスまではバスに乗って移動することになった。
☆
バスが俺達が降りるバス停を表示した時、前の席の響が、
「……うちが見える。ここで降りれば帰れるのね」
と、停車するバス停の表示板をじっと見つめて呟いた。
どうやらこの路線バスも使ったことが無いらしい。
バスの窓からも見える響の住む高層マンション。
あー、なるほどバカ高いから目印になるんだ。
それなら迷うことも無いだろう。
……もしかして響の父親って、それが分かっててあんなに大きいの建てたのか?
前に俺がバイトをしていたファミレス『アミーズ』前のバス停に到着した。
着いた時には午後6時と日はかなり傾いていて、ここを出る頃には日も沈んでいるだろう。
ラッシュタイムに入ってないかと心配だったが、待つほどではなく大テーブルも空いていた。
店長の中村さんが見当たらなかったけれど、混雑する前の休憩に入っているのかもしれない。
店員に、前に集まった時に使った座席と同じ所に案内された。人数的にもここになるか。
窓側席の奥から響、美咲、綾乃、太一と座り、通路側の席の奥から愛、アリカ、俺の順番で座る。
思えば遊園地のときと同じ配置。
響と千葉兄妹がかち合って固まらない対策とはいえ、何となくこのパターンが定着しそうだ。
それぞれ席に着くと自然にふうっとため息が出た。
「……なんかやっと一息ついたって感じだよね」
俺の横でアリカがぐてーとしながらメニューを見て言った。
「カラオケ出てから立ちっぱなし、歩きっぱなしだったからな」
「とりあえず注文しようぜ。ボタン押すぞー」
「ああ~、お兄ちゃん待って。まだ注文決めてない」
メニューを見て悩んでいた綾乃が太一の腕を取って止める。
各自がメニュー表を見ながらどれにしようかとなんやかんやと賑やかになる。
注文が決まった所でボタンを押して店員を呼ぶ。俺の知らない女の人だった。
まだ慣れていない新人のようで少し緊張が見える。
今はたどたどしいけど、そのうち慣れるだろう。
注文した品が来るまでの間、昨日の分と今日のカラオケでも撮っていた写真を見せ合うことにした。
みんな、携帯をテーブルに出して操作し始める。
データ交換するのがちと時間がかかりそうだ。
そういや、みんなスマホだな。
時代は変わったもんだ。などと、じじ臭いことを考えてしまう。
「なあ、これ、写真とかさ。みんなで共有ボックス作って入れとかないか? そしたらいつでも見れるし、現像とかもできるぜ」
太一が写真をシェアと書かれた画面を見せてそんな提案をした。
みんなが首を傾げる中、太一が説明していく。
どうやらその機能を使うと友人等の特定グループだけで写真や動画などをシェアリングできるらしい。
物は試しと太一に見導かれるまま俺達は登録をしてみる。
登録自体はとても簡単だった。
太一の提案でグループ名は『てんやわん屋』にすることになった。
この集いの元々のきっかけと言えば、確かにてんやわん屋から始まったことだからか。
お読みいただきましてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。