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帰路  作者: まるだまる
126/406

125 遊園地2

 とりあえず、全員が揃ったところで、総合会場行きのチケットを買って乗り場に移動。

 直行便なので途中止まることはない。

 既に人がかなり並んでいたが、臨時バスも増便してるので、目的地につくのに大幅に遅れることはないだろう。


 二台ほど待って順番が回ってきた。


 先頭でバスに乗り込むと、早く降りられるように前側に移動する。

 早い順番だったので、座席は確保できた。

 俺の横には愛。元々、俺のそばにいて、強引に引きずり込まれたからだが、後は乗った順に席を埋めていく。

 俺と愛が左側席の一番前、その後ろの席に響とアリカ。右側席の一番前は美咲と綾乃、その後ろの席に太一と見知らぬおっさんが座っている。

 こういう時ハズレを引く人間が必ずいるが、太一なので気にしないでおこう。


 バスは総合会場を目指して走る。

 隣に座る愛は、ここぞとばかりに俺の左腕をしっかりとホールドしている。

 相変わらずのストレートな対応には困ったものだ。

 揺れるたびに、ぷにぷにと弾力のいいものが当たって、こっちが恥ずかしくなる。

 それに乗車してから、右側と後ろ側から妙に殺気を感じるのだが、気のせいだと思いたい。

 俺のせいじゃない。

 

 定刻よりも少しばかり遅れ、総合会場にバスは到着した。

 広大な面積を誇る総合会場のバスの停留場は、駅前のバスターミナルよりも広く整備されている。

 停留所の近くには大型車両用の駐車場も整備されており、地方からの観光バスや総合会場を利用する団体相手に備えているものだ。


 バスから降りた俺達は、目的地である遊園地エリアを目指して歩く。

 バスから降りても、愛が俺にくっついたままだったので、「いつまでも、くっついてないの」とアリカに引き剥がされた。愛はアリカにぶつぶつと文句を言っていたが、アリカの妙な迫力に身を引いたようだ。

 俺としては助かったからいいけれど。

 引き剥がされるまで、他のみんなからの殺気が怖かったから。


 歩いていくと遊園地エリアが見えてきた。

 どこぞの地方のネズミーランドよりは小さな遊園地だが、小さな子供から大人まで十分に楽しめる施設だ。

 今でこそ総合会場の一部のように思われているが、元々ここにあったものだ。

 俺もこの遊園地には、中学二年の時に校外学習の一環で来たことがある。

 この清和市の中学を出ているのなら、みんな来たことがあるはずだ。

 俺や太一、響は三年ぶり。

 アリカと愛は去年の夏に一度、親戚の子と一緒にきたことがあると言っていた。


「去年の六月に来たときは、あの新しいアトラクション工事中だったんですよねー」

 綾乃が塔のような高い構造物を指差して言った。

 綾乃はまだ中学生なので最も記憶に近いだろう。


「へー、そうなんだ。私はここに来るの初めてだから、なにもかも楽しみだよ」

 清和市出身ではない美咲は本当にワクワクしているようで、俺らの中で一番年上だとは思えないほどだった。

   

 入口とチケットブースが見えてくる。

 今の場所から入口の中も見えるが、西欧をイメージしたような建築物、重厚な門構え、アンティークな外灯が立ち並ぶ。門の周りから外壁までの間は黒塗りの柵で覆われ、外壁は城塞のような雰囲気も持つ。手前の広場ではイメージキャラクターの一本角の生えたうさぎが二体、小さい子供相手に愛想を振りまいていた。遊園地に来ると独特な雰囲気があって、違う世界に迷い込んできたみたいで面白い。 

 

 遊園地前の広場で響から小さなカードの入ったネックストラップをそれぞれ受け取る。

 受け取ったカードには入場・アトラクションフリーと記載されていた。

 カードをかざして入口から各アトラクションに入場する仕組みだ。

 電車などで利用されてるカード型と同じ理屈のようだ。

 以前来た時にはこんなものはなかったのだけれど。


「これだと、あとで統計分析するのに楽なのだそうよ」

 響は無表情に呟いた。

 どうやら響はあまり興味はないようだ。

 カードを機械にかざして入場していく。

 ついでに近くに置いてあったガイドブックも取っておいた。


 入口前から見た時よりも、近くに来ると重厚な門構えの迫力が増したように感じる。

 先程まで小さい子供を相手に愛想を振りまいていたイメージキャラクターが二体、近寄ってきた。

 この一本角のうさぎは大きいほうがポーン、小さいほうがアルトという名前らしい。

 寡黙で優しいポーン、食いしん坊なアルト素敵な親子関係が売りらしい。

 俺には羨ましいだけの存在だ。


 それはさておき、どうやら俺達を相手に愛想を振りまきに来たようだ。

 特にアリカに寄っていってるのは、なんとなく納得。


「みんなで一緒に写真撮ろうぜ」

 太一が荷物の中からデジカメを取り出して言った。


 通りすがりの人にお願いして写真を撮ってもらう。

 ポーンとアルトは、器用にもアリカを挟み込むように少し低くしゃがみ、ポーンに愛がしがみつき、アルトに綾乃がしがみついた。その後ろに残りの俺らは並んで立つ。

 アリカが苦笑いしていたのは、なんとなくだけど察するところはある。

 ポースを変えて三枚ほど撮ったところで、ポーンたちは俺達に手を振って移動し始めた。

 どうやら別の獲物を見つけたようだ。愛想を振りまくのも大変だ。


「随分と好かれてたみたいね」

「あたし、前に来た時もあの二匹にまとわりつかれたんだけど……」

 響がぼそっとアリカに言うとアリカはそう返した。


 そういう運命なんだろう。

 どう見てもちびっこだからな。

 だから、なんで俺を睨むんだ。そういう勘の鋭いところは相変わらずだ。


「それじゃあ、乗り物でも行くか。最初は何がいい?」

「美咲さん初めてだから、美咲さんの行きたいところから行こうよ」

 俺が言うとアリカがそう助言してきた。


 それは確かにそうだ。俺達は一度は来ているから新しいアトラクション以外はわかっている。

 美咲がガイドブックを見ながら「うーん」と考え込んで出た答え。


「やっぱ王道のジェットコースターで」

 いきなりそれか。

 ここのジェットコースターは足の置き場がないタイプで踏ん張れないから、結構怖いんだぞ。

 しかし、美咲以外は一度体験しているはずだから、問題はないだろう。

 

 乗り物が決まったところでジェットコースター乗り場へ移動。

 途中、お土産の売ってるグッズショップや、園内の西欧風なイメージを取り込んだ飲食店がちらちらと目に入る。

 後で寄ってみるのもいいだろう。

 

 乗り場が見えてくると、既に客が並んでいる。

 だが時間的にはそれほど待たなくても良さげだ。

 一番最後尾に並んで待ち、雑談で時間を潰す。


 ふと、トイレが目に入る。

 不思議なもので目に入ると急に行きたくなる時があるのはなんでだろう。

 行ける時に行ったほうがいいな。小さいほうだし。


「ごめん。俺ちょっとトイレ行ってくる」

「なによ。漏らしたらやばいと思ってるの?」

 アリカがにひひと笑って、失礼なこと言う。


「そんなわけあるか。トイレ見たら行きたくなっただけだ」

「あー、俺も行くわ。連れションしようぜ」

「ちょっと。お花を積みに参りましょうくらい言えないのかしら?」

 太一の言葉に響がぼそっと呟く。

「それこそ出ねえよ! どこのお嬢様学校だよ」

 その返しに周りの客も笑っていた。

 

 太一と二人トイレに向かう。

 女子トイレの方は人が並んでいるが、男子トイレの方はそれほど混雑していない。

 こういう時の女子は大変だと思う。


「いやー、やっぱり女子とくると華があっていいよな。可愛い子ばっかりだし」

「ああ、そうだな。野郎だけとは違うよな」

「なんか、みんな結構気合入ったメイクもしてたぞ」

「え、俺、そこまで気づかなかった。アリカは雰囲気ちょっと変わってたけど」

「明人よ、それじゃあ駄目だぞ。気づいてやるのも男の責任だぞ」


 そういうものなのか? 

 今後は気をつけておこう。

 お読みいただきましてありがとうございます。

 次回もよろしくお願いします。

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