バックスの悩み
バックス・テノン 22歳♂ ダークエルフ
聡明且つ顔立ちは整っているが、ダークエルフとしての体格としてはやや痩せ型
伝統ある執事家の一人息子である。
この世界では執事は他の適正洗礼を受けない限り幼少から執事として教育される。
中流階級地区テノン家の自室で彼は本を読んでいた。
そう執事にとって主の要求に対処すべく知識は重要だからである。
手にしている本のタイトルは「種族図鑑」
人族
寿命は短く60年程度
肉体的には弱い劣等種族である
♀一人から5~6人出産するとても繁殖力が強い種族である
稀に知能の高いものが存在いる。
まだまだ続くがそこまで目を通したバックスは
「ふん、ダニどもめ」
と吐き捨てた。
ダークエルフと人族は交戦状態
本来人族より優れているダークエルフなのだが
少しずつ領土を奪われつつあるのが現状だったのである。
ダークエルフは生涯一人の相手しか持たない
そして子供が中々出来ない
一生出来ない事もあり、もうけたとしても一人 二人に至っては1%にも満たない出生率の低さ
そんな種族が長きに渡り戦争し続けているのである。
力があっても数の暴力には勝てない状況なのだ。
「はぁ~」
とため息をつくバックス
人族の事はもう頭にはない。
彼の頭にあるのは働き口の事だ
18歳で使用人組合に登録してから4年、仕える家も現れず
ずっと親の仕送りだけで日々を過ごしている。
4年間何もしなかった訳でもない、募集には全て参加しているが
長きに渡る戦争によって家の消滅により
古参の執事や執事の子息の増加も伴って、年々競争倍率が上がっているのである。
場合によっては募集要項の段階で落とされる。
経験豊富な古参執事が有利なのは当たり前だった。
そんな彼は城塞都市カノンでの面接に落ち、二日前にザントに戻ってきたばかりだった。
しかも戻ってみると他の連中は王都アーティスで新官貴族の募集で全て出払っているとのおまけつきだ。
彼はその情報をリーク出来なかったのである。今から向かっても間に合わないのである。
ザントには執事浪人はバックスただ一人だった。
「はぁ~」
再びため息をつくバックスの自室のドアがノックされ、
「使用人組合から募集の連絡がまいりました」と
「はぁ?」
バックスは慌てて使用人組合に向かったのである。
組合に着くと受付し、組合長との面接の為応接室に案内された。
「テノン家のご子息か」
彼の資料を手に持つ組合長はそのまま言葉を続けた。
「このたび急遽執事の募集がこのザントにて告知された」
「募集要項だが、募集にあたっての条件は1つ」
「明日の昼までに募集主の元にうかがえる者」
「以上の条件を満たせる場合は応募したまえ」
「尚、募集は本日夕刻に締め切られ、応募者立ち合いの元抽選を行う」
「と言っても、もう夕刻だがな」
組合長の言っている事はめちゃくちゃだった。
本来執事の募集は短くても2週間、通常であれば1カ月の期間がある。
混乱している彼をよそに組合長は
「応募するかね?」
と聞いてきた。
バックスは慌て
「はい、是非お受けさせて下さい」
組合長はニコリと笑みを浮かべると
「採用だ」
と答えたのである。
「ああ、後使用人も8人必要なので君の方で選別をするように」
「はっ、かしこまりました。」
そう答えて、バックスは応接室を後にした。
混乱はしていたが、彼の頭は使用人選定をするべく切り替わっていたのである。