ゼノ使用人を雇う
翌朝ゼノは大きなベッドの上で目が覚めた
あまりに豪勢な邸宅が自分の物になった事にギャップを感じながら
あの赤ん坊をどうやって育てて行くかをじっくり考えていた。
2階の元主人が使っていたであろう書斎に横には、厳重な小部屋があった
おそらくその元主はそこに財産など貴重なものをしまっていたのでいたのだろう
ここなら唯一子供を隠して育てる事が可能だが、
にしても隠して育てるのが大変な事は確かである
まぁ考えてもそれ以上の案は思いつかなかった
それより村を離れて3日経っておりゼノはヨーマと赤ん坊の事が心配でならなかった。
村から連れてくる手順や方法、今後の生活などあれこれ考えているうちに昼になり
不動産屋の男が人を連れてやってきた。
使用人組合から派遣された執事であるバックス・テノン
使用人となる女性が8人である。
そもそも執事は執事を輩出する家系で育てられるので身元がはっきりしており、
その執事が使用人を統括するので間違いは起こらないと考えていいものらしい
その辺は心配しなかったが、赤ん坊の事に関しては誰にも話す気はなかった
バックスはゼノに一礼し
「これはご主人様、バックス・テノンと申します。誠心誠意お仕え致しますので今後供よろしくお願いいたします。」
その言葉に合わせて使用人の女性全員が一斉に頭を下げた。
ゼノは不動産屋の男に礼のチップを渡し引き取らせた。
そしてバックスに対して
「わしはゼノ・トルーマだ、訳あって身分は明かせないが詮索はするな」
「使用人の管理はお前に任せる」
「城内移動用に馬車がいるな、馬の世話等で使用人が必要であれば雇ってくれ」
「後、身一つでこの町に来たので、仕立て屋の手配を頼む 4日後がいいな」
「私はこれから出かけるのでよろしく頼む 私が戻るのも4日後だ」
そう昨日から考えていた事を矢継ぎ早に指示した。
「はっ、かしこまりました」
「あ、後この家に必要なものがあればお前の判断で揃えてくれ 金は渡しておく」
そう言ってバックスに金貨3枚を渡した。
バックスは受け取った金貨を見て驚いてゼノの目を見た
どこの世界にあったばかりの使用人に金貨3枚を平気で渡せる者がいるのか
最初にゼノを見たバックスは邸宅に不釣り合いであるこの主人に落胆していた
あーあ俺は執事として外れを引いたんだなと、
執事の世界ではより高貴な方に仕えるのが自分の地位と名誉であると
それだからこそ落胆はひどかったのである。
その主人が生活の準備とはいえ金貨3枚を平気で手渡すなど
正気の沙汰とは言えない事実である。
バックスは若い執事である。執事は長い年月仕えるので
その仕える家が無くならない限りその家と共に仕えるので
大体新規に派遣される執事は執事なりたての若い執事なのだ
バックスは自分は外れではなく当たりだとその時確信したのである。
どういう身分かは未だ計り知れないが大金持ちである事は確か
そこでバックスは自分のこれからの主人であるゼノに提案をする事にした。
「ご主人様にご提案があります。」
「ん、何だ 言ってみよ。」
「もし必要であれば邸宅に衛士をお雇いになる事をお勧め致します。」
「うむ、そうだな。全てお前に任せるのでよろしく頼む。」
「はっ、かしこまりました」
ゼノはじっとバックスを眺め、若いだけではなく頭が切れる奴だと認識するとともに
用心しなければならないと肝に命じることにした。