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140字SS   作者: 冬香
5/5

2016/01/01~01/23

諸事情によって24日から31日までは書けませんでした。

一か月分にしては少ないですが、ご了承ください。

20160101

今年もよろしくお願いします。日付が変わった瞬間から交わされる挨拶。定型文になっているそれだが、これを言わないと新年が始まった気にならない。それにこの清清しい気分で言う挨拶はなんだか特別感がある。この挨拶を考え出した人は素晴らしい。そんなことを考えながら私はまたその挨拶を口にした。


20160102

「知るも知らぬも」聞こえた声に合わせて、歌の意味も分からずに札に迫っていく彼女の右手と、ほぼ同時に動き出した彼の右手が札の上で衝突した。生活圏の違いで、いつもは全く会わない二人。この時間が終われば、またしばらく会わないことだろう。ここは彼らの母の実家であり、彼らの逢坂の関なのだ。


20160103

たくさんの受験生が、見えもしない神様に合格を頼みながら神社で絵馬を書いていた。神社で毎年見られる光景。だがその内に、神様が本当に合格させてくれると信じている人は少ないだろう。ならばなぜ彼らは神に願うのか。私の言葉に彼女は淡々と答えた。大事なのは神じゃなくて自分が目標を誓う存在よ。


20160104

電車に揺られながら私は席の端の壁に寄りかかって寝ようとしていた。せっかくの一時間、睡眠時間に使わなきゃ損だと思ったのだ。しかし眠れない。行きの電車ではあんなにぐっすりだったのに。なにかが足りない。そう思って見回して気づいた。行きのときに頭置きになってくれた友人が、今いないことに。


20160105

何になるの?どうするの?かけられる言葉に、含まれているはずのない悪意を感じてしまう。まだ分からないからギリギリまで考えさせてよ。僕の心の声を彼らに聞くことができるはずもなく。何回も、何日もその言葉をかけてくる。いっそその喉裂いてしまおう。そう思ったのは3分前、後悔したのは1分前。


20160106

彼女の姿を見たときから彼女に心を奪われてしまった。僕にはあの場にいた誰よりも彼女が輝いているように見えたのだ。ただ演奏をしているだけのはずなのに、マイクは楽器の音を拾うだけで彼女の声など拾わないのに、僕の中で彼女の存在は絶大。つまり僕は彼女が好き。僕はこの現象にレッテルをつけた。


20160107

授業ノートを開いてみると、そこには数ヶ月前の私の世界が広がっていた。眠気と戦ってる最中に流れた黒の流星群、授業に飽きた証拠である落書き、先生の面白かったひと言……。かつての様子が手に取るように分かる。これは面白いなと見返すうちに眠気が襲ってきて、私は大人しく布団に潜ってしまった。


20160108

曰く付きの家に越してきた。曰く付きとは言っても私も夫も霊感など皆無なのだから何も起きないだろうと思っていた。事実、暮らし始めても怪奇現象など全く起きず、そのまま数年が経った。やがて私たちは噂を忘れた。「まま、あの人だあれ?」娘が誰もいない壁を指差して、そんなことを言い出すまでは。


20160109

ぐらぐらぐら。立ち上がれば頭が重くてめまいがする。ぐるぐるぐる。じっとしていれば腹の気持ち悪さが襲ってくる。勉強しててもゲームしてても体の不調は治まらない。水分をとっても目を休ませてもなにも変わらない。これはなんだ。気味が悪い。否定的な考えはよくなかったようでその症状は悪化した。


20160110

たくさんの和服、主に振り袖を身にまとった人たちが一ヶ所に集まる。そんな特別なイベントに、私もようやく参加する年齢となった。友達のこと、ちゃんと分かるだろうか。出席するまで不安はすごい勢いで膨らんだが、始まってしまえば何てことなくなった。友達よりも振り袖に夢中になってしまったから。


20160111

僕の通う大学にはほとんど暦通りの休日がない。長期休みを増やすためだとか言うけど、学生はこのシステムを何度恨んだことか分からない。そんな学校でも、成人の日は休日になる。なんと素晴らしい成人の日。今日はなにをしようか。わくわくしているうちに日は暮れて、素晴らしい休日が終わりを告げた。


20160112

たくさん話をした。たくさん時間を共有した。何分、何時間も一緒に過ごした。それなのに私はまだ満足できないの。もっと一緒にいたい、さよならするのが惜しい。気づけばあの人の手を掴んでしまう私。そんな私の気持ちに気づいているのだろう、あの人はいつもその手を両手で包み込んで言う。また明日。


20160113

演者は物語を紡ぐだろう?時には楽しい物語を、時には悲しい物語を。楽しい物語はあなたたちを笑顔にする。悲しい物語はあなたたちを暗い顔にする。そんなとき、あなたたちは私が持ち合わせていない表情を私に見せ、こんな表情もあるのだと教えてくれる。さ、私がなぜ演者をしているか、わかったかい?


20160114

大学の図書館という静かな空間の中で私はレポートの下書きをしていた。本当は人を待っている。あの人はきっと授業のあとにレポートを書きに来るから。来たら、偶然ねと笑おう。鈍感なあの人は私の言葉を信じるだろう。愛おしいあの人との時間のため、私は書きたくもないレポートを真面目に進めている。


20160115

アトラクションに乗った。美味しいものを食べた。どれもこれも楽しい思い出として僕のなかに重なっている。だけど、僕の中で一番だと言えるものはアトラクションでも食事でもない。アトラクションの待ち時間の君の笑顔や、次はここに行こうとはしゃいで小走りになっている君の姿をみていることだった。


20160116

お久しぶりです。何度も遊んだあの人にかちっとした笑顔を向けられて、ぼくも笑顔で返した。しばらく会わないと他人行儀になってしまう癖があるのだと、前に聞いたことがあった。それでもぼくはきっと大丈夫だろう。調子に乗っていたぼくは、あの人との再会で傷つき、あの人との交流を絶ってしまった。


20160117

今日は仕事をして、帰ってきたらちょっと友達と電話して、寝るまえに本でも読もう。目覚めたときにはそんなことを思っていた。目覚ましをオフにして体を起こそうとしたとき、私はいつもよりも大きな重力を感じて布団に戻った。あれ?もう一度起き上がろうと手をついたけど腕は体重を支えきれず崩れた。


20160118

ぼんやりと窓の外を見ていた。暴風雨はちょうどドラマに出てくる取り立てみたいにその窓を叩く。少し窓に近づけば、外を歩いている人が暴風雨に傘を壊されてしまっているのが見えた。こんな天気でも仕事が休みにならないなんて。ため息をついたとき、玄関の方からいってきますという彼の声が聞こえた。


20160119

お前なんていなければいいのに。誰かに向けられた言葉は確かに私の心に刺さったのに、なかったことにされた。向けられる悪意も、必死の抵抗も、全て消されてしまった。抵抗すれば誰か気づく、そしたらやつらはこれをやめる。そう信じてきたのに。抵抗しても無視されるならこれからどう耐えればいいの。


20160120

一人で生きていけると思ってたから、他人に頼る習慣を持っていなかった。でも大好きな君に「頼って」と言われたから、君を頼る習慣を身につけた。喜んでほしかった。自分の要求通りにしようとしてる努力を認めてほしかった。でもかけられた言葉は「頼らせて」。君のために私は何度習慣を変えればいい?


20160121

どうしても嫌な部分があると、それがたとえ小さな事でも、僕達はそれを嫌いだと認識する。それは相手が人でも同じだろうか?僕は君が自分を僕より優位であると確信しているのが嫌い。理論通りならばその点のせいで僕は君が嫌いなはず。だがそれでも僕は君が好き。つまりこれは人相手では言えないのだ。


20160122

君のいない時間は楽しい時間。君が不機嫌だろうと気にせずいられるし、大好きなお菓子だって食べ放題。君が勉強嫌いだからと控えていたノートまとめだってできる。自由に過ごすのはこんなに素晴らしいのかと改めて驚かされる。だけど僕の口からはため息が止まらない。君のいない時間は退屈すぎるのだ。


20160123

はらはらと花びらが舞うように空から降るものがあった。それらは何も言わずに真っ白に世界を染めていく。そういえば雨は神様の涙と言われるけど、それなら雪ってなんだろうね。抱いた疑問を口に出せば、君は優しく笑った。「そりゃあ花びらでしょ?」美しく咲く雪の花を想像して見てみたいなと思った。


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