クールがバカに付き合うのは
宝野アリカは部室で読書をしていた。
しかし一人ではない。彼女の正面に、正座をするマワリがいた。つい先ほどまでアリカによってお説教されていたようで、若干元気をなくしているものの、既に復活気味だった。
そんなマワリは、正座をしたままどこかを見つめていた。アリカを見ているようだったが、その視線はアリカ自身を見ているわけではなかった。
「なーなー、アリカさん」
「何かしら、橋里」
「なに読んでんの?」
アリカは本から視線を外し、正座した(正確には正座させた)自分の後輩を見つめた。
「橋里、貴方の中で同じネタを三回することが流行っているのかしら。だとしたら残念なのだけれど、その流行は通常の脳を持っている人には通じないから、今すぐ止めなさい」
「へ、なんのこと?」
マワリは首を傾げるが、その姿に演技臭さは微塵もない。
「貴方の愉快脳には、本当に驚かされっぱなしだわ。天然とは時に恐ろしいわね。ま、多梳さんにもいつも感じていることではあるのだけれども」
再び頭の上に疑問符を浮かべるマワリを見て、アリカは溜め息をつきながらも本を表紙を見せるように掲げた。
「……え、えんだかかくと」
「『円高格闘術~硬貨的に相手を堕とすには~』」
「ふーん。なんかよくわからんけど、おもしろいの?」
「ええ。ま、面白いわ」
「へー。どんな内容なん?」
「四回目のネタをする機会を与えることになるから大いに端折るのだけれども、はっきり言って内容は支離滅裂で意味不明だわ。これを書いた著者の精神を疑うわね」
アリカは感情の籠もらない声で、淡々と吐き捨てるように言った。
「そ、それって、役に、たつの?」
そう言いながらマワリは立ち上がろうとしたが、いかんせん足が痺れて上手く立てない。
「役になんて立つ訳がないわ。ましてや活用なんてあり得ないわね」
「なのに、おもしろい、の?」
足に力が入らず、何度も転びながら問うマワリを眺めながら、アリカは答えた。
「何の役に立たなくても、いえ、役に立たないからこそ、面白いものもあるのよ」
ヒーヒー言ってのたうち回るマワリを見つめるアリカの表情が、どことなく柔らかくなった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
高野聖泉の次回作にご期待下さい。
……と言いたくなるほど、1章のボリュームがありますね。ギャグなのに。
できれば同じテーマの話は分割しないで投稿したかったんですが、っていうか分割しないで投稿したんですが、あまりの読みにくさに焦ったので、無理くり分割しました。そのせいで意味が困難になってなり不明になってたり遭難してたりしたらすみません。
ちくしょう。それもこれも全てアリカさんの話が長いせいです。
まあとりあえず次回アリカさんは出てこないので、そんなことはないと信じましょう。
何はともあれ、今回のテーマは「桃太郎」でした。
こんな感じで「1つの章に1つの童話をテーマとする」という方向で、彼らにはしょうもない雑談をしてもらいたいと思います。
あと、おそらく「小説家になろう」ユーザーの方々は、ある程度ストックがある状態で投稿される方が多いとは思うのですが、私は2話も書ききってないのに我慢しきれなくて投稿してしまいました。早漏ですみません。そんなこんなで、そして次回の更新はおおよそ1週間後ぐらいだと思います。
ではでは、しょうもない小説?漫才?ではありますが、もし気が向きましたらお付き合い下さいませ。
感想や文句や意見やアドバイスや誤字脱字指摘は大歓迎ですので、ぜひよろしくお願いいたします。