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おとぎ話のむだ話  作者: 高野聖泉
桃にまつわるエトセトラ
5/12

チョコレート味とフルーツ味が正義


「『二人は産まれてきた赤ん坊を桃太郎と名付け、大切に育てました。桃太郎はすくすくと育ち、力が強く、そして頭の良い、元気な男の子へと成長しました。ある日、桃太郎は、山にいる鬼たちが村の人々に悪さをしているという話を聞きました。』」


「異議あり!」


「よくよく考えてみたら、貴方、異論という言葉は分からないのに異議という言葉は扱える、というのは、どういう了見なのかしら」


「異議あり!」


「ああ、はいはい。分かったから手を下ろして頂戴。で、何かしら」


「鬼達なんて、いるわけない」


「白い悪魔との契約で人間をやめてしまった青い魔法少女の真似をするのはやめなさい。と、いうか貴方、いつからパロディに走るキャラになったのかしら」


「鬼とかリアリティーないぜ」


「ま、それはそうね。でも、それと同時に、鬼の住処が山であるところにも言及される、と思っていたのだけれども」


「あ、そういや鬼ヶ島じゃないじゃん!」


「気付いていなかっただけのようね。またもや藪蛇だわ。ま、それはそれとして、鬼の住処が山であることについて説明すると、桃太郎に幾つものパターンがあるように、桃太郎のモデルとなったと考えられている地域も、実は幾つかあるのよ。一番有名なのは岡山なのだけれど、愛知や奈良、香川、岐阜などにも、それぞれの形で桃太郎の伝説は伝えられているわ。そして、それは勿論、鬼の根城である鬼ヶ島のモデルとなった場所にも、幾つか種類があるということを示しているの。『鬼ヶ島』の名称通り、何処かの島をモデルにした地域もあれば、河の中洲をモデルにした地域もある。そして、中には、城のある山を指して『鬼ヶ島』なんて言った場所もあるのよ。で、今回、山梨なんていう山の多い内陸県を舞台にするのならば、鬼達の住処は山に設定するのが最も無難である、と判断した訳よ。分かったかしら」


「……zzZZ」


「橋里」


「……んぁ。ああ、おはよう、アリカさん」


「おはよう、橋里。貴方、相変わらず良い度胸してるわね。全く同じネタを二度するなんて、という意味も籠めて」


「それで山はどうなるんだ?」


「山梨で有名な山と言えば、八ヶ岳、赤石、奥秩父、そして富士山かしら」


「フジヤーマ!」


「貴方は何人なの」


「じゃあ山はそれでいいとして、結局鬼はどうすんだ?」


「そうね、日本には、古来より自分たちにとって未知の存在を鬼と称してきた歴史があるから、今回もそんな感じでいけばいいのじゃないかしら」


「と言うと?」


「『山の頂付近で人知れず暮らしていた者達が麓にあった桃太郎の住む村を襲った』ということにすれば良いのではないかしら」


「なるほど!」


「ま、ただ、富士山の頂付近で人知れず生活していた何者かが本当に存在していたとするのならば、それを鬼と称するのは、強ち間違いではない気がするわね」


「どゆこと?」


「ここに来て、話にリアリティーが出てきた、と言っていたのよ」


「おおっ、リアリティー!」


「尤も、都市伝説やオカルト方面に傾倒した、些か皮肉的且つ限定的な意味合いのリアリティー、なのだけれど」


「なんだって?」


「何でもないわ。じゃ、続けるわよ」


「おう!」


「『その話を聞いた桃太郎は、いてもたってもいられず、すぐにお爺さんたちに鬼退治へと行く許しを貰いに行きました。二人はまだ若い桃太郎が鬼退治に行くことに反対しましたが、桃太郎もゆずらず、結局、最後には仕方なくそれを許しました。そして桃太郎が鬼退治に出発する日が来ました。お爺さんは桃太郎に袴を履かせて刀を持たせ、お婆さんは黍団子をたくさん持たせました。』」


「異議あり!」


「なかなか我慢したわね。で、何かしら」


「命がけの戦いに出る息子にわたす食べものがダンゴって!」


「それは当時の時代背景を鑑みれば、当然と言うか、むしろ良く頑張ったと言える方だと思うわよ。炭水化物なのだから、エネルギー源としても、ま、申し分ないわ」


「でもエネルギー源だったらカロリーメイトの方がよくね?」


「エネルギー源という言葉に、見事に踊らされたわね。当時の時代背景を鑑みなさい」


「それがダメなら焼き肉だな」


「止めて頂戴、そんな更にツッコミどころの多い食べ物を持ち出すのは」


「でもタッパーに入れれば」


「一番の問題はそこではないわ。と、言うか、お願いだから、ツッコミどころを増やさないでくれるかしら」


「じゃあどうすりゃいいんさ!?」


「逆ギレされるとは思わなかったわ。で、だからさっきから言っているのだけれども、黍団子というのは、時代背景を考えるとなかなか頑張った結果なのよ」


「でもそれホントに全力?」


「絡んできたDQNみたいなことを言わないで頂戴」


「じゃあホントにどうするんさ?」


「むしろ逆に訊くのだけれども、橋里、貴方はどうしたいのかしら」


「カロ」


「カロリーメイトは抜きで」


「や」


「焼き肉も」


「じゃもうきびダンゴでいいよ!」


「だから逆ギレはやめなさい。貴方にとってのエネルギー源はその二つだけなのかしら。もう少し何とかならないの」


「でもなー。ん……場所ってドコだっけか?」


「話の舞台という意味かしら。それだったら、一応、山梨に設定したわね」


「山梨ってなにが有名?」


「特産品という意味なら、さくらんぼや葡萄、そしてさっきも言った通り桃ね」


「じゃ桃にしよう!」


「何よ、その因果が一周回った新発想は。エネルギー源云々の話は何処で迷子になってしまったの。そして貴方、今私達が何太郎について考えているか失念してはいないかしら」


「桃太郎っしょ?ちょうどいいじゃん」


「ああ、知った上でのチョイスなのね。なら私から言えることは、もはや何もないわ」


「そんじゃ続きをよろしく!」


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