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おとぎ話のむだ話  作者: 高野聖泉
ルナティック・トーク
10/12

天然ピュアブラック×苦労ショタ

 さて、2章です。


 前回は博識クールさんのおかげで無駄に話が長々としましたが、今回バッサリと短くなりました。アリカざまあ!


 ま、と言っても、結局何話かに分かれてはいるんですがね。



 それと、今回からは、1日に1章まるっとバーって投稿するんじゃなくて、その章が書き終わったらその話数の分だけ毎日投稿、とかそういう感じにしたいと思います。

 一人でも多くの方に読んでもらいたいという願望を満たすべく、姑息にしてせせこましい手段を講じます。ごめんなさい。


 小説サイトに初めて投稿したばかりであるがゆえに……言い換えるなら、童貞を卒業したばかりであるがゆえに、前準備や手際が悪く、早漏で、自己満足感甚だしく、それでいてどことなく初々しくも懐かしい、あの青春の日々のように勢いに溢れた私をお許し下さい。


 ……ん?




 それはそれとして、この2章もあの有名な童話について、前回とは違う2人がウダウダくっちゃべります。


 ではよろしければお付き合い下さい。そしてあわよくばお楽しみ下さい。


「あ、アイ先輩。こんにちはです」


 職員室の前の壁に寄りかかって立っていたアイへ、ヨウは声をかけた。

 背中に届くほどの長さのふわふわの髪を指に巻きつけて弄ぶ姿は、何かを待つように見える。



「ヨーくんだー。やほー」


 ヨウに気付いたアイが手を挙げて応えた。


「どうしたんですか?」

「んー。せんせーを待ってるのー」


 案の定、アイは人を待っているらしい。


「何かあったんですか?」


 アイの隣の壁に背を預けつつ尋ねる。

 身長の低いヨウが女子の中でも身長の高い方であるアイの隣に立つと、僅かに見上げるような姿勢になってしまうのだが、それを今さら気にするほど、ヨウの意地は強くなかった。


「んーとねー。なんだっけー」

「わ、忘れたんですか……?」

「えーちがうよー。少し覚えてないだけだよー」

「……それを忘れたって言うんですよ」

「そーだっけー?」


 無邪気に首を傾げるアイ。

 空気を含んでいるかのようにふんわりとした髪が無造作に揺れ、前髪の間から覗く少したれ気味ながらもぱっちりと大きな瞳が、真っ直ぐにヨウを見つめた。、

 その仕草は、彼女の名の通り、愛らしいと評するに相応しく、現にアイと出会ってある程度たつはずのヨウですら、時々ドキリとさせらてしまう。


 もしこれが演技なら恐ろしい、とヨウは密かに思った。


「でもなんだっけなー。なんでわたしはせんせー待ってるんだっけー」

「……どうしてなんでしょうね」


 ヨウは「ボクが知るわけないじゃないですか」というツッコミをグッと我慢して、話を続ける。


「ホントに何も覚えてないんですか?」

「んー」


 アイは虚空を見つめながら人差し指をアゴに添えて考え始め、


「あ、そーいえばー」

「思い出しました?」


ぱあっと明るくした顔をヨウに向けた。


「現国の細山せんせーってどーして結婚できないんだろーねー」

「ボクが知るわけないじゃないですか!」


 さすがにヨウもツッコまざるを得なかった。


「やっぱりハゲてるからかなー」

「は、ハゲって……」

「それともなんか臭いからかなー」

「……先輩って、かなり容赦ないですよね」


 アイの毒舌っぷりには、ヨウもいつも唖然とさせられていた。

 しかしアイにとってはただ事実を述べているだけであって、それが誹謗中傷の類になっている認識がない。

 マワリといいアイといい、ヨウの周りには無自覚に毒を吐き散らかす先輩が多かった。ちなみにアリカは自覚して毒を吐くタイプである。

 下手な悪意がない分、自覚することができず、自覚することができない分、反省することができない。結果、簡単には治らない悪癖となる。

 なんて始末に負えない人たちなのだろう。


「なんの匂いなんだろーね、あれって。タマネギに似てるよねー」

「……細山先生を視界()に入れたくないってことですか?」

「えー。細山せんせーなんてでっかすぎて目に入らないよー」

「……まあ、そうなんですけど」


 アイが天然であることは重々承知しているヨウではあるが、繰り返される彼女のピンポイント毒爆撃に、つい何らかの意図を深読みしてしまうことが多々あった。


「細山せんせーを目にいれたらすっごく痛いよー」

「そ、そうですね。痛いですよね」

「そーだよー。きっとがんきゅーがぐしゃーってなって、すいしょーたいがぴゅーってなって、のーみそがどばーってなっちゃうよー」

「……先輩の話し方のおかげで平仮名だらけになっているのが唯一の救いです」

「なんのことー?」

「いえ、何でもありません」

「ふーん……あ、そーいえばさー」


 アイが話題を変えようとしている。ヨウにとってはややこしい解説をしなくて済むので、渡りに船だった。


「細山せんせーを食べちゃだめなどーぶつってなんだっけー?」

「全部ですよそりゃあ!」


 しかし船は泥舟だった。


「あ、間違えたー。タマネギを食べちゃだめなどーぶつってなんだっけー?」

「それホントにわざとじゃないんですよね!?」


 動揺するヨウを尻目に、アイは右手で頭をコツンとこずくとペロリと舌を出した。

 コッテコテの仕草ではあったが、ヨウは僅かにときめいてしまっていた。アイによるとんでもない間違い方を目撃した直後であるのにも関わらず、である。


 もしこれが演技なら恐ろしい、と密かに思っていたヨウは、むしろ天然だからこそ恐ろしい、と思い直した。


「なんかのどーぶつはタマネギ食べるとたいちょーが悪くなっちゃうってきーたことがあるんだよねー」

「……ああ、それは多分犬ですよ」


 言いたいことは山ほどあったが、気にしていると話が進まないため、とりあえず会話を合わせる。


「あー、イヌかー。そーいえばそーだった気もするねー」


 するとアイは何かをひらめいたかのように、ポンッと手のひらをうった。


「じゃー、おまわりさんに逮捕されそーになったら細山せんせーに助けてもらえばいーねー」

「……? せ、先輩? いまいち意味が分からないんですけど」


 アイが意味が分からないのは今に始まったことではないのだが、会話する上で言っている意味が理解できないと会話を進められないため聞き返すヨウ。


「ほらー、イヌはタマネギが苦手なんでしょー?」

「方々にケンカ売りすぎですよ!!」


 目の前の無邪気な(ゆえに恐ろしい)先輩の脳内では、すでに「細山先生=玉ねぎ」「犬=警察」という図式が成立しているらしい。

 せめて後者が、あの有名な童謡に影響されたものだと信じたいヨウである。


「でもなんでだめなんだろー」


 軽く怯えるヨウに気づかず、首を傾げるアイ。


「……ボクも詳しくは知りませんけど、玉ねぎに含まれる成分のせいで中毒になってしまうらしいですよ」

「ふーん、そーなんだー。じゃー、イヌの口にタマネギを入れたくなったら我慢しなきゃだねー」

「それってどういう状況なんですか!?」

「代わりにネギにしとこー」

「先輩それもアウトです!」

「えー。ならハンバーグかなー」

「玉ねぎ含まれてますよそれ!」

「じゃー、チョコレートならだいじょーぶだよねー」

「どうしてそんな針の穴を通すようにピンポイントなんですか!」


 タマネギはもちろん、ネギやチョコレートも、犬に食べさせてはいけない筆頭である。そしてハンバーグは当然タマネギが使われている。

 そんなことおそらくアイはろくに考えていないのだろうが、挙げる食材挙げる食材全て犬が中毒を起こす類のものでは、さすがに意図的なものを疑ってしまう。

 まあ、それが全くの徒労に終わることは目に見えているのだが。


 そこで、ふとヨウはあることに気付いた。


「あの……アイ先輩」

「んー、どーしたのー?」


 ヨウは不安な表情を浮かべ、


「先輩の家って……動物飼ってます?」


言いづらそうに訊いてみた。


「うーん。ネコ飼ってるよー」

「……ちなみに名前は?」


 ゴクリと唾を飲み込む。


「えーっとー……『スルメ』」

「逃げてー!スルメ逃げてー!」






   閑話休題。



 って今回童話に一切触れてねえじゃん!?


 まいっかー。

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