単純バカ×博識クール
こんにちは。
初投稿です。はじめまして。
高野聖泉と申します。聖泉は「きよみ」と読みます。女性っぽい名前かもしれませんが、違います。
小説を書いたのは初めてではありませんが、人目に曝したのは初めてです。
処女です。いや処女作です。むしろ童貞作です。あ、なんかこう書くと私が童貞みたいですね。興奮します。
至らぬ点以外特にありませんが、何とぞ温かい目で見て下さい。あ、むしろ逆に冷たい目で見るのもアリかもしれませんね。興奮します。
兎にも角にも、それでは恥と失笑の混合物「おとぎ話のむだ話」をご賞味下さい。あ、こういうと自分の恥部を曝している気分ですね。しかも味わってもらうわけですか。興奮します。
【2月2日】
いざ自分のケータイで見てみたら25とかいう途方もないページ数になって恐れ戦いたので、ざっくりと分割しました。それにともなって、今までの「第1話」を「第1章」とし、本文にも多少の手直しを加えました。ですが、もともと分割するように書いてないため、若干違和感があるかもしれませんがお許し下さい。
第2章からは分割することも意識して書いていきたいと思います。
「お~っす!」
マワリは勢い良く扉を開け放ち、部室に入ると同時に、これまた勢い良く挨拶をした。
「こんにちは、橋里」
そしてそれに静かながらも応えたのは、椅子に腰掛けて読書に興じていたアリカだけだった。
「ありゃ?なんだ、まだアリカさんだけか」
「そうね。何か用事でもあるのかしら」
扉を閉めてテキトーな椅子に座るマワリを視界の端で認めつつ、アリカは尋ねた。
「うんにゃ。ヨウあたりはもう来てるもんだと思ってただけっすよ。あ、アイはなんか先生に呼ばれたらしくてちょっとおくれるかもってさ」
「そ」
興味なさげに素っ気なく一言返すと、アリカはあっさり本に視線を戻した……訂正、元々視線は本から少しも動いていなかった。
どうやら会話の流れ上尋ねたものの、その答えなどには別段興味がなかったらしい。
「…………」
そしてそのまま無言で読書に戻るアリカ……訂正、元々彼女は読書を中断していなかった。
どうやらこの少女は、目の前の少年の来訪自体には全く興味がないらしい。あるいは眼前の書物に興味が傾いているせいなのか。
いずれにせよ、その目の前の少年にとっても、1つ年上の少女が自分に興味があるのか否かなどという事項は、やはり眼前の書物以上に興味がなかった。
「なーなー、アリカさん」
「何かしら、橋里」
「なに読んでんの?」
マワリがそう問うと、ようやくアリカは本から視線を外した。そして本を持ち上げ、表紙が見えるように掲げる。
「……え、えんだかかくと」
「『円高格闘術~硬貨的に相手を堕とすには~』」
漢字に苦戦しているマワリの言葉を遮るように、アリカがそのタイトルを読み上げた。
「ふーん。なんかよくわからんけど、おもしろいの?」
「面白いかどうかで答えるなら……そうね、ま、面白いわ」
「へー。どんな内容なん?」
「まだ途中だけど、ざっとまとめるなら、近年稀に見る円高というこの現状を乗り越えるでも乗りこなすでもなく、あくまでもありのままを、精神的や経済的のみならず肉体的かつ暴力的に受け入れ、それを輸出入などの交易や商談での交渉、利害得失の調整、ライバルへの圧力、脅迫、切り捨て、打撃、締め技、重心移動、果ては銃火器の取り扱いに至るまで、様々な場面において活用できる概念へと昇化させるための方法、というかアドバイスのようなものを記した、ま、所謂ノウハウ本ね。理解出来たかしら」
「……zzZZ」
「橋里」
「……んぁ。ああ、おはよう、アリカさん」
「おはよう、橋里。貴方、相変わらず良い度胸しているわね。で、これが無駄な問答と知った上で、かつ駄目元で訊くのだけれども、理解できたかしら?」
「え、なにが?」
「貴方、本当に良い度胸しているわ。その飛び抜けた度胸で、もう総理大臣にでもなって停滞したこの国を変えてはくれないかしら」
「わかった!」
「決断力も飛び抜けていたとは驚きだわ。確かにそれは総理大臣に必要な資質の一つね。でも自分で言っておいてなんだけれども、それだけでなれるほど総理大臣は甘くないから覚悟なさい。ま、それはそれとして、で、橋里、一応訊くのだけれど、一体何がわかったのかしら?」
「この国を変える!」
「多分、私の言葉の最後の部分だけをぼんやりと記憶していただけなんでしょうけれど、あながち間違っていないから、今回は見逃してあげるわ」
「ありがとう!」
マワリはそう元気良く返した。
その返事に満足……訂正、嘆息しつつ、アリカは再び本に意識を向ける。
「なーなー、アリカさん」
「何かしら、橋里」
「その本、おもしろいの?」
アリカは再び顔を上げた。その顔には、先ほどまでなかった憐憫が浮かんでいた。
「そうね。愉快さでは貴方の脳味噌の方が一枚も二枚も上手よ」
「えっ、マジで!?」
「ええ、マジよ。ああ、そうそう。これは今までの話とは全く関係がないのだけれども、それにしても、三歩歩くと物事を忘れてしまうような人物を鳥頭と揶揄して言うけれど、座ったままで自分の発言を忘れてしまうようなどうしようもなく愉快な脳味噌の場合、何と呼べば良いのかしらね」
「……アインシュタイン?」
「アルツハイマーと言いたかったのでしょうけれど、無自覚に世紀の天才を残念な愉快脳へと貶めてしまったわ。今すぐにアインシュタインに土下座なさい」
「ごめんなさい!」
「潔さまで兼ね備えているとは恐れ入ったわ。いっそのこと本当に総理大臣になりなさいな。応援してあげるから。後援するつもりはさらさらないのだけれど」
「公園のツボはサラサラで良い?」
「ああ、どうやら悪かったのは、むしろ私の方なのかもしれないわね。私は、何よりもまず、目の前の愉快脳がアインシュタインという名を知っていた事実をしっかりと褒めるべきだったのだわ。ごめんなさい、橋里。そして偉いわね、橋里。きっと貴方は将来総理大臣になるわ」
「あ、あれ……もしかして、いま俺バカにされてね?」
「ああ、そんなことにも気がつくなんて、賢いわね、橋里。偉いわね、橋里。きっと貴方は将来総理大臣になるわ」
「え、マジで?い、いやー、照れるぜ」
「本当に、貴方は愉快ね」
閑話休題。