203 is RED and BULE 〜They are demoniac!?〜
窓から見える東京の空は曇りのち晴れ。
ところにより、暗闇
★★★★cloudy…
「はぁ……。」
さっきから溜め息がつきることなく出てくる。ダセェ。
この部屋は少しのダンボールと、俺の荷物。
それと目には見えない二酸化炭素で息苦しい。あぁダセェ。
俺の名前は斐川尚之。田舎から東京にやりたいことがあって、そのやりたいことってのは…はぁ、なんか今いう気分じゃないからまた今度。
ま、とにかく夢のようなスイートライフが約束されて………いたんだよなぁ。
本当は、隣の【超☆高☆層賃貸マンション】に住むはずだったのに、色々手違いがあったらしく、目の前にあるはずのオーシャンビュウは今や只のカ、ベ。
ちくしょう…ここ日当たり悪いんだよ。
母さんは悪くない。あんなに頑張って、俺のために家を探してくれたから。
俺は自分の部屋を見渡してみた。
だいたい広さは2LDK…っていうのか、この狭さは?とりあえず、人がきたらまず『狭っ、こんなとこ住めるの?』というような狭さだな。
キッチン。これはそこそこ綺麗。コンロも二つありきちんと火がつくので料理の点では心配はないだろう。
問題は風呂場だ。
「なんだこれは…」
蛇口を捻ってみるが、水が少しづつしかでない。お湯も同様だ。
シャワーだって使えないぞ、これじゃあ。
それに湯船が狭い。俺はけっこう小柄な体つきだが、体育座りでギリギリという大きさ。
それと、びっしりと壁をはっている、かべ。じゃねぇや、カビ。これはドン引きした。
しまいには…
「うわっ、痛っ!!」
天井から壁の塗料の破片が崩れ落ちてきた。
剥き出しになった所に、何か紙が貼ってある。
不審に思い、はいで見ると文字が書いてあった。
《悪霊退散》
「…おふだですか?」
母さん、いくらなんでもこれは理不尽です。
俺はここでの暮らしに、改めて一抹の不安を覚えた。
その時、俺の隣の部屋でとてつもなく大きな怒鳴り声がした。
「くっそマジムカツク!!!テメェここで晒し首にすっぞ!!というかマジで死ね!!無理だったら俺が手伝う!!」
随分荒っぽい声の主は、若い男のようだ。にしてもかなり怒ってる…。
「黙れ備蓄倉庫の単細胞。お前が先に死ね。そして僕は後からゆっくり生きる。」
こっちの男は割と落ち着いた喋り方だ。口はさっきの男同様悪いけど。
「カァァ!!!マジウゼェ!!今日という今日は許さねぇぞ!!おい蒼馬、表でやがれっ!!決着つけるぞっ!!」
「まったくこれだから馬鹿って嫌いなんだよね。勝負は見えてるのにわざわざ挑んでそして、惨敗。いいかげんウザイんだけど、ねぇ紅平君。聞いてる?君のことだよ、小学校までお漏らししていた紅平くー…
「それは言うなぁぁぁぁぁ!!!!」
ドスッンッッッ!!!!!
これはヤバイんじゃないのか?〔火事と喧嘩は江戸の花〕とはあるが、実際おこっているものをほったらかしにするのは危険だろう。
常識がある人間としては、止めに行かなければならない。野次馬根性がないこともないが。
俺は、どうやら外の空き地でおこっている喧嘩を止めに行くことにした。
「テッメェのその腐れ根性今日こそ俺が叩き潰してやるわぁ!!」
「うーわ、いい迷惑。」
その喧嘩はすさまじかった。喧嘩というよりも、死闘といった方が正しい。
片方の、怒鳴りちらしてる金髪の男。
右耳にピアスを空け、みた感じヤンキーといった感じだ。恐らくこいつが《紅平》だろう。
片やもう一方の男。
こいつは紅平とは違い、綺麗な黒髪。
学ランを着ているところを見ると、学生のようだ。
しかしこいつも、左耳にピアスをしている。
落ち着いた毒舌口調をしてるので、こいつが《蒼馬》らしい。
そしてこの二人が、お互いが互いにバットを持ち、本気で相手に殴りかかっている。
それ、鉄バットですよ、お二人さん…。
あまりの恐ろしさに、俺は止める気が一気に崩れ、そこで只々ことの成り行きをみていた。
数分後。蒼馬が勢い良く振り下ろした鉄バット(よく見るとエクスカリバーと書いてある)が、紅平の両アキレス健にクリーンヒット。
声にならない悲鳴が轟き、事は結末を向かえた。
「ほら、言ったでしょう。」
蒼馬の問いにも紅平は応えず、相変わらず悶絶している。
俺は堪らず紅平の元へ駆け寄ってしまった。
「おい!!大丈夫か!」
反応しない。とりあえず、管理人の所に行って手当てを。それかひとまず病院へ。
「その必要はないよ。」
んなこと言ったって………ってえぇ!?
「君さっきから思考が口から漏れてるよ。」
……あ、そう。
「おいアンタ。喧嘩にも限度ってもんがあるんじゃないのか。」
これは本音だ。いくら何でも可哀想すぎる。
「だからさっきから言っているでしょう。大丈夫だって。」
そう言って蒼馬は、紅平の体を顎でさした。
その通りのようだ。
等の紅平本人は、倒れていながらも地面に大量の死を書き殺害願望をアピールしている。
「ね、馬鹿は簡単には死なない。」
はははっ。笑うことしか出来ない。
「…んで、何であんたら上がり込んでいるんだ。」
俺の部屋には今、当たり前のように茶を飲んでくつろいでいる蒼馬とここまで運ぶために蒼馬が気絶させたまま、ほったらかしの紅平がいる。
「ま、お隣のよしみってことで気にすしないで。気にするとハゲるよ。」
そうだった。すっかり忘れてた。
こいつも冬月荘の住人である。俺の右隣、203号室の部屋主だ。
「なぁ。あんたこの紅平って人とはどういう関係なんだ?」
「兄弟だよ。しかも双子。一卵性。」
に、似てねぇ!共通点の欠片もねぇ!
「あ、そうだ。僕らお互いの名前まだ知らないよね。隣人どおしの挨拶がてらに自己紹介といこうよ。こっちの話ばっかも嫌だし。」
それもそうだよな。一応お隣さんだし、仲良くしといた方がいいよなぁ。
まず、この人たち怒らせるとやっかいそう…。
「えっと、俺の名前は斐川尚之…です。昨日此処に越してきま…した。」
な、なんか俺ダセェ…?今日はダセェDayだ。
「コンパの自己紹介みたい。てか敬語使うなよ。」
「僕は蒼馬。七式蒼馬。で、こっちで寝ている阿呆は七式紅平。両方高3だからね、これでも。んじゃ。」
そういうと、蒼馬は紅平の首ねっこを掴んで引きずりながら自分の部屋に帰っていった。
「ちょ、ちょっと待てよオイ!!」
あぁ、今の俺ちょいキムタク気分。てか
さりげなくお菓子悔い散らかしてそのままかっ!?いくら隣人だからって年下相手になめられてたまるかっ!
「だから待てっ
「斐川さん。」
ハイ?
ドアの前に立ち、出ようとした動作を止め、蒼馬がふりかえる。ゆっっっくり。
「仲良くしましょうね。こ・れ・か・ら・も。ね?」
そういう蒼馬の眼は笑っておらず、どこから出したか右手にあの時の鉄バットを持っていた。
「………ハイ。」
隣でドアの閉まる音がした。
母さん。いくらなんでもこんなのは嫌です。殺生です。殺生。
この時見た月は。綺麗な満月のはずなのに、霞んで、にじんでいた。
不安だ。不安でしょうがない…。
読んでくださってありがとうございました!!!!