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Let's goooo!!!!




さぁ、出かけよう♪

想いでの溢れる道を駆け抜け〜♪

さぁ…フーフフフフーン♪



歌詞が思い出せなくて鼻唄になりながら歌う。

足取り軽く、ホップステップジャンプ。


俺の名前は斐川尚之。大学卒業したてのフリーターだ。

今俺は、これからの生活に最も必要な、自宅に向かっている。

と、いっても一軒家は流石に無理なので、マンションを借りてもらった。

それでも田舎からでてきた若僧が、こんなに簡単に住居を持てること事態、この物件を探してくれた母に感謝しなければ!!!


「え〜ぇと、この道の角を曲がって、真っ直ぐいけばいいんだな。」









☆☆☆★where?



「で、デケェ!さすが東京、迫力が違うな!」

曲がり角の先には、空まで届くんじゃねぇかと思う程の高さを持つマンションが立っていた。

「スゲェなかあちゃん、ここを借りれるような金どこにあったんだよ。」

でも、今日からここが我が家になるのも悪くない。いやいい、バッチいい!


そんな想いを胸に秘め、顔がにやけたまま俺は新居へと足を急いだ。









急いだ。つもりだ。急いだつもりだ。なのに中々前へ進めない。


「…あっれぇ?」


どんなに足を早く動かしてもマンションの自動ドアには届かない。

いや、まず俺の足が地面に付いてない。


「なっんでだっ…!」

首元に違和感がある。

なんかまるで引っ張られて持ち上げられてるような感じだ。

それにそういや、背後にとてつもない気配がするようや気もする…。


俺は恐る恐る後ろを振り向いた。






「っぁぅ!!!!!!!!!」


あまりの驚きに、つい変な叫び声をあげてしまった。



男だ。すっごいデカイ男だ。んでゴツイ。これでもかってぐらい筋肉があるんだよ。着ているTシャツやジーパンもピチピチ。二の腕が鉄パイプ4本分ぐらいあるし。女の子はきっと、こういう腕に抱かれたいと思うんだろうなぁ…










…じゃねぇよ!!!ちょちょちょちょとまて!なんで俺がこのゴツイMr.シュワ様に持ち上げられてんの!何?これが東京名物カツアゲか!?いやまて、カツアゲは俺の地元にもあったなぁ…じゃない!意味分かんねぇ!

と、とにかく逃げねば!!俺はまだこんなとこで死にたくない!




そうして無我夢中で暴れていると、シュワ様が口を開いた。


「お前、斐川美恵子さんの息子か?」



「あ?斐川美恵子って俺の母さんだけど、何で名前を知ってんだっ、てウワップ!?」


そういうや否や、シュワ様は165cmの小柄な俺の体を軽々ともちあげ、米俵を運ぶような感じで歩き出した。何故かマンションの隣の道へ。




「おぃ!ちょとまて!まっ待てって!何処に連れてくんだよ!誘拐か?んなもんしてもウチの親は何にもしねぇぞ!おい!とりあえず落ち着く暇をくれ!」

必死に抵抗してみたが、シュワ様の前ではコンニャクでコンクリを壊そうとするようなものだった。

ちなみに、中学での握力は22でした。弱。






「ついたぞ。」





…へ?何処によ?

まさか人身売買の取引場所か!?いやー!!まだ死にたくねぇ!

せめて最後に味噌煮込みうどんを食わせて…







ドサッ




「痛ぇ!!」


俺は地面に落とされた。久々の土、会いたかったよ。


辺りを見回してみた。

連れてこられた場所は、人がいそうな気配がしない寂しい空き地だった。

そして、そのど真ん中にこじんまりとした、よく刑事ドラマで見る古びたアパートがあった。

二回建ての赤屋根のアパート。近くにあるマンションとは月とスッポン、いや蟻だ。







「ここの202号室。今日からここが、お前の我が家だ。」








はい?


どうゆうこと?Doゆうこと?Do you know?


「どっ、どうゆうことだよ!俺の家は、すぐそこの【フローレンス板橋】っつうマンションじゃ…第一、母さんから来た地図にも書いてあるし…」


「見せてみろ。」


シュワ様は地図を見た。

しばらく見た。




そんで破いた。「えぇ!?おい、何するんだよ!」

「この地図は最近のやつだからここは乗ってない。美恵子さんも分からなかったんだろう。」





「実は最初は、確かにそこのマンションに住むはずだったんだ。けど色々手違いで契約やなんやら取り消されたみたいでな。だから美恵子さんは、しょうがなく古くからのゴルフ仲間である俺に、ここにおかせてやってくれと頼んだんだ。つい最近きまったから、連絡し忘れてたよ。」
















なるほど。つまりは、俺の新生活はレオ〇レスのような美しい場所ではなく、こんな古びたアパートで送らなきゃいけないって訳か。



「なんでやねぇぇぇぇぇぅぅぅん!!!!!!!」



けど仕方ない。

どのみちマンションには入れないから、ここに住みたくないってったら間違いなく俺はホームレスの門をくぐるだろう。

ないよりはあったほうがマシだ。多分。




「どうやら腹をくくったみたいだな。お前の部屋に荷物があるから見てこい。」

「あと、いい忘れてたが俺は此処の管理人の志木だ。なにかあるなら101号室に来ればおれがいる。」









俺は力なく頷き、202号室に向かっていった。

マンションの時とは違い、両足に将来の不安という名の足枷があるようで、とってつもなく足取りが重い。













202号室に上がるまでの階段に、このアパートの看板がぶら下げてあった。





《冬月荘》



名前はとても素敵だった。名前は、とっても。









冬月荘。ここで俺の新生活が始まる。









そう思うと、長い溜め息が出てきた。

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