6 親友(1)
この世で最も偉大な人物と聞くと誰もが大賢者と答えるだろうが、その大賢者は回復魔法で普通の人間より長くは生きたが結局彼は何を考えたのか大賢者の後継人に剣聖を置いた。それで大賢者という称号は受け継がれることはなく長い長い剣聖の時代が始まった、彼は一体何を求めたのだろうか。
「ねぇチュニス、なんであの先生達お休み取ったんだろうね。」
「何よナイア急に別に特別珍しいことでもないでしょ、カラス先生はこれが最初だけど他の二人に関しては結構あったじゃない、冒険に行きますとか友人に会いにいってきますとか。」
「まぁそうね、いつも通りか。」
カラスは臨時会議室の扉を開くとそこを通り抜けた。
カラスはメディア達のやかましい魔石のフラッシュを受けながら建物を後にした。
(さて、あいつどこにいるっけな。)
カラスは少し左右を見ると迷いが確信に変わるように右へと歩いていき、道中の出店などで買い物を少しすると、目的地の墓場についた。
カラスは少しお辞儀をして入ると、迷うもなく一つの墓の前へ来た。
「よっ久しぶり、すまねぇなほんとはもっと早く来れたんだが久しぶりにこっちに来たらやりたいことが多くなってな、来るのが遅くなっちまった。」
カラスは洋風な墓の前に白い花を置いた。
「デイジーの花だぞきれいだろ、お前この花好きだったからな今年もこの花だ、本当はもっといろんなのをやったら良いのかもしれんがお前のことだからこればっかで別に良いだろ、あぁ懐かしいな。」
学生時代は冒険者になったり教師のようになる気は一切なかった、本当は俺公務員になりたかったんだ。もっと細かくいうと魔法兵団とか魔法省とか、そういう安定するので金を貯めて貯まったらフリーターとかになって余生を過ごすつもりだった。でも今じゃ教師、案外人生ってどうなるかわかんないもんだな。
学生時代はもちろん俺はヨハネスとティラナと一緒にいた、てかもっと小さい時から、でもこれは今回関係ない。学園よりもっと前、ずっと昔の時の俺の親友エイン・ナッツ、俺の一番の親友。
「ねぇ、あなた何してるの?」
それは突然だった、家の庭で回復魔法の練習をしている時のことだった。木のかげでノートに魔法式を書いて、それを杖で発動できるかをやっている時のことだった、練習ではあるが他から見るとただ遊んでいるようにも見えたかもしれない。
「君人の家の柵によくもまぁそんなに体重かけれるね。」
「そんなの良いじゃない、ねぇ教えてよ。」
彼女は全く表情を変えず顔に手をついて言った。
その時俺はなんと面倒臭い人に出会ったなと思ったが自然とこの人は面倒じゃないとも思えた。
「今は魔法の練習をしてるんだ。」
「へぇ。」
彼女は躊躇いもなくジロジロと見つめてきた。
「もしかしてあなたの適性って回復?」
こう言われた時とてつもない嫌悪感を感じた、この時はまだ完全に回復魔法を好きになっていたわけでもないのと、今は俺のおかげというか回復の賢者のおかげというかで絶滅危惧種のレベルにまで減ったがこの時はまだ適性が回復魔法ということをバカにするバカがいたのが理由だろう。
「そんな顔しないでちょうだいよ、実は私の適性も回復なのよ。」
そういうと彼女は遠慮もせずにフェンスを大胆に超えて入って来ると彼女はそそくさと自分の隣に来た。
「私エインって言うの、エイン・ナッツ、あなたは?」
俺は先ほどの考えを改める事にした、このエインと言う子は恐ろしいほどに面倒臭い人なのだろう、出会って10分も経っていない初めましての人に対してなぜこんなにも馴れ馴れしくできるのかと否定的な考えしか出てこなくなった、だがここで無視をするのは人としてよくないと思い返事はしようと思った。
「、、、カラス・フラメル。」
「カラス、良い名前ね。」
彼女はそう言った後ノートに標的を変えた。
「それ何級の魔法?五級ではなさそうよね、もしかしてあなた四級魔法使えるの?」
「一応ね、まだ練習中だけど。」
「なんだか急に変なこと言うけど私たちって似てるわね。」
今日は一ヶ月分くらいは驚いたのではないだろうか、この人と俺とではあまりにも性格というか倫理観というか何かが大きく違うのが原因で予想だにしない言葉ばかりが次々と出てくる。
「何が似ているんだい、こんな少しの会話で。」
「少しだけだからじゃない?あなたと私はぱっと見の感じだけだけど同じくらいの年齢で、それで魔法使いでしかも同じ回復魔法の適性を持っている、それでさらに今練習してるのが同じ六級魔法だもの!」
この人は少し嬉しそうに言った。
「今のは初耳だけど確かにそう聞いたらまぁ似ているな。」
「素っ気ないのねあなた、ここまで来たらもう親近感が湧いて来ると思うのだけれど。」
「俺は今練習で忙しいんだ、雑談なら他の人としてくれ。」
俺はそういうとノートをたたみ、急ぎ足でその場を離れようとした。
するの突然彼女は唐突に言った。
「ねぇ、私と決闘しない?」
俺はあと何回彼女に驚けば良いのだろう。
「何を言っているんだ君は?」
「あなたって決闘協議会の人よね、ここら辺で結構聞くのよね『最弱にして最強の回復魔法使い』って。すごいわよね、ここは田舎とはいえ別に弱い人ばっかじゃないでしょ、元騎士団や冒険者の人も居る、だから私あなたと一度やってみたかったのよ。」
「そこまで知ってるなら評議会経由でやれば良いだろ、なんでこんな方法で行けると思ったんだ。」
彼女は少し笑うと手を口元に近づけてこう言った。
「あなた、ビビってるの?」
俺は今までで一度も味わった事のない気分になった、怒りや衝撃のような感情が一気に出てきた。だが、とても彼女は誘い上手というのがわかった。
「へぇ良いじゃん、気に入ったよ、ついてこいよ。」
カラスはそういうと数分ほど歩き森の奥にある空き地についた。
「ここなら良いだろ、来いよ。」
(なんだか変な人ね、さっき会った時はあんなに冷淡な人に感じたけど急にこんなになって、なんだか多重人格者みたい。)
「お言葉に甘えるわ。」
エインは収納魔法で大杖を取り出すと杖を地面に刺して大きな魔法陣を展開した。
カラスは相手が大杖使いで、最初から四級魔法を使っているのをみて相手が自分と正反対の魔力総量が多い長期戦タイプなのを察した。カラス杖を構えると相手の実力を見るために自身の周りに七級結界魔法を簡易的に自身の周りに纏わせると同時にもしもの場合に備えていつでも風魔法で避ける準備をした。
エインは一気に大杖に魔力流し込んで風魔法を発動させるとただ単純にバカみたいに真っ正面に風の斬撃を発動させた。
カラスは自分以外に強い回復魔法使いがいると思い、大きな攻撃、もしくは想像の斜め上の攻撃方法を見せると思ったカラスはがっかりした顔をすると少しだけ横に移動し一気にエインに接近しに行った。
だがカラスはここで想定外が起きた。本来、魔法の常識として魔法式を通った後は魔法式書き込んだ事以外での動きはしない、そしてカラスはエインが魔法式を熱心に書いている間にじっくりとその魔法式を読んでおり、その中身は一般的な操作回路が入っているのをしっかりと見ていた。普通ならただただまっすぐ綺麗に風の斬撃がカラスが先ほどまでいた位置に向かって飛んでゆくはずだったのが、カラスが斬撃の横を通り抜けようとした瞬間斬撃はカラスに向かって方向転換をした。
カラスはそれに反応し切ることはできなかったが、咄嗟の判断で自身にさらに結界魔法を上塗りした。
斬撃はカラスの作った二層の結界をことごとく破壊するとカラスを大きな木に叩きつけた。結界のおかげで大きな怪我にはならなかったが確実に傷を与えた。
カラスは完全には傷を治し切らずに応急処置だけをするとすぐさま六級風魔法を発動し、エインの周囲に十分に致命傷を与えれるだけの竜巻をエインの姿が見えないほどに発生させるとニヤッと笑い聖水を一本飲むと咳き込んだ、仕方がない、この時はまだ質が悪い時代だったのだ。
「あなたってこんなもの?」
気がつくと、エインは魔力探知にもかからずにカラスの背後に回り込みカラスの頭に大杖の先端についている大きな魔法石を軽く添えた。
「、、、俺の負けだ。」
「ふふっ、潔いのね。」
彼女はそういうと俺に回復魔法をかけ治してくれた。
「おm、、、君は一体何をしたんだ。」
「エイン、君じゃなくてエ・イ・ン。」
「、、、エイン一体何をしたんだ。」
「良いわよカラス教えてあげる、こっちきて。」




