3 時代
時代は移り変わっていく、必ず一つだけの時代が数千年も続くことはありえないこと、それはこの世界でもどこでもそうなのである。
まだ日がやっと登って鳥が鳴き始めた時間帯の街に、ヨハネスとティラナは歩いていた。
「確かカラスの家ここら辺よね、いいとこ住んでるじゃないの私にも部屋くれないかしら。」
「それは無理な話だな、この家を用意したのは学園長だからな、カラスの所有物みたいになってるが学園長が不動産屋に話つけてタダでもらったらしいからな。」
「私たちってすごくナチュラルに学園長と話してるけど学園長って何者なのよ、なんだか急に恐ろしくなったわ。」
ティラナは唐突に鳥肌が起きた。
「まぁ今まで数えきれない種類の数えきれない攻撃を大事にすることがなかったのは今までの4代の学園長の4代目だからな、それはそれはすごい方だろうよ。」
「なんだか軽いわねあんた。」
「さ、話してる間についたぞ。」
そこには美しい街並みの中でも特別存在感を放つ一軒の豪勢を感じる一軒家があった。
「まだ5時だけどまぁあいつのことだから起きてるだろ!」
そういうとヨハネスはチャイムを鳴らそうとした瞬間。
「俺はここにいるぞ。」
「ダァ!もうびっくりしたなぁ驚かすなよ。」
「なんの連絡もなく朝5時に来る奴らよりマシだろ。」
「それはごめん。」
ヨハネスは頭を下げその頭の前に手を合わせた。
「まぁまぁそれは一回玄関の靴棚にでも置いといてくれよ。」
「結構使用頻度高いぞそれ、大丈夫か。」
(なんだかこいつらこのまま長くなりそうね。)と考えたティラナが会話を遮った。
「今日はこんなくだらない会話をするために私は早起きしたんじゃないのよ、いい。」
「ああそうだな、じゃあ本題なんだけどよ、昨日お前サインして倒れて起きたら俺と飲んだくれてただろ、それで肝心なこと言い忘れてたんだが早速今日から仕事だからな、早めにきてもらって色々説明しておかないといけないからな、さぁ行くぞ!」
「えっちょっま。」
カラスは全てを語る前に二人に担がれ学園へと連れて行かれた。
カラスは猫背になりながら学園の少し寂れた廊下を歩いていた。
(はぁ疲れた、まぁでもどうせやることを今やれたならよしと考えておこう。とにかくあの話が通ってよかった。もらった元講義室を自室兼研究室でいいよと言ってもらえたしさらにこんなに道具ももらっちゃったしな。)
「何やろうかな〜聖水の研究、製造の続きを、、いややっぱ学園に来たんだから他のことをやってもいいなぁ。」
カラスはそんな戯言を言いながら荷物を持ち講義室へ歩いていると講義室に着いた。
何も考えずに扉を開けると大きはないせせこましい前方に大きな黒板のある中央に大きな机がある講義室の中にはぱっと見でも7人いるのが分かった。
「あ!カラス先生やっときた!」
チュニスが意気揚々と言った。
そこにはチュニス、リガ、ナイア、プラタ、ヨハネス、ティラナ、それと。
「なぜここにお前らがいるのかは後で聞くとして、なんでここに第二王子が居るんだよ、」
カラスは視線をそこにいる笑顔の男に向けた。
「お久しぶりですカラスさん、いえ、今はカラス先生でしたね。」
ロンド・パラケル、オプティモス学園はソビリア王国の王都アイリントスにあるのだが、その王国の王、チェリーナ・パラケルの第二王子がこのロンドである、彼の言動から察せると思うがロンドと俺は初対面ではない。ロンドは第二王子であるがあまりにも文武両道すぎるがあまり次の王は彼ではないかという声もある。あと彼は見てわかるが女装癖がある
「カラス先生が学園で働かれると聞いてヨハネス先生に聞いたらここにいると聞いてきたんです、来なかったらどうしようと思ったのですがよかったです。」
彼は冒険者時代から俺をストーキングしている。
「あぁうん分かった、お前はもういいよ。」
カラスは中央の机の空いている椅子に座った。
「で、他の奴らはなんでここにいるんだ。」
ヨハネス「王子の付き添い。」
ティラナ「面白そうだからヨハネスについてきた。」
チュニス、ナイア「王子に誘われたからついてきた!」
リガ「先生の研究を一目見てみたくて。」
プラタ「こいつら(チュニス、ナイア)の付き添いです。」
「なんでしっかりした理由がリガだけなんだよ、ほとんど遊びに来ただけじゃねーか、ヨハネスとティラナはいいとしてお前らは生徒だろ、もうすぐ試験なんだから勉強しとけよ。」
ナイアが気に食わなさそうな顔で言った。
「じゃあ先生勉強教えてよ、魔法学の先生なんでしょ!」
ティラナが言った。
「お、いいね私カラスがどんな授業をするか気になる。」
「いいな、俺も気になる。授業やってよカラスせ、ん、せ、い。」
ヨハネスはこちらを煽るように言った。
カラスは腕を組んで少し悩むと一つ思いつき、口にした。
「じゃあ、俺とタイマンで戦いたい奴いるか。」
生徒たちは驚いた。
「え?こういうのって座学じゃないの?試験内容もそうでしょ。」
「いや、お前ら一年生とはいえ名家と王族なんだからここに来る前からそこらへんのやつよりかは座学できるだろ、なら体を動かしたほうが実技の勉強になるし細かいところも覚えられるだろ。」
カラスは軽いストレッチをしながら言った。
するとヨハネスが。
「はいはい!俺久々にカラスと決闘やりたいと思ってたんだよ、やろうぜ。」
「いいけどお前剣今持ってないじゃん。」
するとティラナが収納魔法を使ってまるで柱のような剣を取り出した。
「私こいつの控えの剣持ってるよ。」
するとカラスは。
「なんかお前らが結婚してから初めて夫婦っぽいとこ見たかも。」
とボソッと言った。
するとリガは心の中で。
(これって夫婦っぽいんだ。)
と思った。
二人は庭に出ると、数メートル離れて向かい合った。
「ルールはマスクア式、先に降参もしくは行動不能になったほうが負け、いいなヨハネス。」
「おうよ。」
ナイアが言った。
「決闘って普通ウィシントン式じゃないの?」
「本来ならそうなんですけどね、あの人達が異常なんですよね。」
チュニスが尋ねた。
「王子ってあの人たちと知り合いなの?」
「ええそうですよ、まだあの人たちが冒険者だった頃にお世話になりました。」
ティラナは二人の間に数歩近づくと二人を見てこういった。
「、、、、初め!」
ティラナが開始を合図すると、ヨハネスはそのあまりにも鈍そうで人間が持つとは思えない大きさの大剣を持ちながら空を切るような速さであと一歩のところまで近づいた。
ほとんどの人間が状況に追いつけていない中、プラタは追いつけていた。
(すごいな、人間のやる技なのか魔法も何も使わず純粋な力であのスピードが出るものなのか。)
みんなが距離を詰めたことに気づいた時、すでに場面は切り替わっていた。
カラスは距離を詰めてくるのを予測しており、回避などには力を使わず反撃に集中した。
全員は確かにしっかりとその戦いを目を凝らしてしっかりと見ていたが、おそらくこれが人間のfps(1秒間に動画が何枚の画像で構成されているかの単位 Google先生参照)不可解なことがそこに起きた。確かに少し前までヨハネスがカラスの首に向かって大剣を振り下ろしていたのに、次の瞬間には大剣は本当の柱のように地面に突き刺さっており、ヨハネスは地面に仰向けに大文字になりカラスはヨハネスの上に立ち、首元に向かって杖を突きつけた。
「この先もやっておくか?」
ヨハネスはお手上げの手をしながら言った。
「やめとくよ、お前のはかなり痛い。」
「そこでやめ!勝者カラス。」
おぉー、と声が上がった、カラスは気付けば見物客が数十人増えているのに気づいた。
「あの人カラス先生だっけか、すげえな違法呪物の遠隔制御ができてさらにあのヨハネス先生を一瞬で。」
「ヨハネス先生って去年のダンジョン潜りでも本気出さなかったんだよな、でも今のはきっと本気、それを軽くひねったのか。」
周りの声がだんだん大きくなってくるとヨハネスがこちらをすけべみたいな顔をしながら見つめていた。
カラスが少し引きながら聞いてみた。
「なんだよその顔、俺の知ってるヨハネスはそんな顔しないんだけど。」
「分かってないなカラスよ、ここまでの人気者になれたのは俺のおかげなんだぜ。」
「誰も頼んでないんだよ。」
カラスはそう言い頭を軽く叩くとイタイと聞こえた。
少しするといつメンになりつつある生徒5人組がやってきた。
「いやーやっぱりすごいですねお二方、事前予告なしの決闘、たった数秒しか戦ってないのにこの観客の人数、しかもきてるほとんどが有名な剣や魔法の家の人たち、ヨハネス先生の力とカラス先生の微弱な魔力を感じ取ったんですね。」
ナイアが困惑しながら言った。
「私今の見て思ったんだけど、いやうまく見れてはないんだけどね。あの一瞬で間合いを詰められて反撃なんか出来っこないんと思うんだけど、どうやったの?てかさっきからプラタ黙ってるよね、何かわかったの?」
「いや、何かしら魔法を使ったのはわかったけどそれが回復なのか風なのか派生魔法なのか常用魔法なのかさえわからなかった、多分王子も同じじゃないのかな。」
「そうだね、魔力は感じたけどそれが何なのかまではわからなかった、カラス先生あれはなんだったんですか?」
「5人中わかりそうなのは二人か、意外だなリガとかならわかりそうだったのに。」
リガは驚いた。
「いや、わかったとは思いますよ、でもあまりにも非現実的すぎる、これは人のやる技じゃないエルフだろうが魔族だろうができっこない、もしかしてとは思いますけどそれなんですか?」
カラスは笑っていった。
「おぉやっぱり風の名家はわかるか。」
チュニスが言った。
「風?風魔法が関係してるの?でも風魔法って風を作るのでしょ、そんなのであんなのできるの?」
「違うんですチュニスさん、確かに風魔法は魔力で風を作るものですがごく一部だけ、というよりも風魔法を愛用していた大賢者ニコラスにしかできないことがあるんです。」
リガは息を飲み、カラスに問いかけた。
「カラス先生、今の一瞬で解眼しましたね。」
:解説:
魔法には到達点と言われるものがある。無詠唱・特級魔法の完全発動・解眼である。
無詠唱は本来簡易的でも詠唱を挟まざるを得ない魔法を喋ることなく発動することで、たかが十級魔法で無詠唱したところでだが四級魔法以上で基礎魔法を発動した場合エリート街道に進むことも不可能ではないレベルに入ってくる。
特級魔法の完全発動はできれば人生安泰と言われているレベルのものである、特級魔法は大賢者ニコラス・ダルクが完成させたと言われている魔法で、それぞれの基礎魔法に一つずつ存在する。特級魔法は現在でも使用者は存在し、厳密な魔法式まで判明しているが詳しい発動の原理などは解明されていない。
そして解眼は魔法の到達点の中でも最高到達点と言われており、三級魔法以上の無詠唱、特級魔法の完全発動が成功させた者のみが挑戦できると言われている、解眼は自身の魔核を自身の利き目に移動させることで魔力を作るたびに外へと自身の魔力を放出させ自身の周りの魔力を自分のものにすることでどんな場面でも圧倒的に自分有利の状況へと変える必殺技と言えるものなのである。
チュニスが珍しく頭を回転させ言った。
「解眼?!あの一瞬で?解眼には最低でも2秒は必須なのが大賢者によって証明されていて、それは魔核の移動時間と魔核から魔力を生成する際のオーバーヒートを防ぐための制御の時間が最低でも2秒って一時期有名になったでしょ、それに先生には魔力が足りないんじゃないの?」
カラスは少し惜しそうに言った。
「惜しい!0点だ。」
「惜しい時は最低でも一点はつくでしょ。」
ティラナがナチュラルに突っ込んだ。
「まぁまぁそんなのどうでもいいんだよ、大事なのは内容。これは一応授業だからな、君たちが将来なるであろう境地の説明をしよう。」
この場で話を聞いていた全員
(将来あんなの出来ねぇだろ。)
と思った。
「今のは確かに解眼だ、風魔法のね。本来なら解眼はメインの適性の魔法でしかできないが、というのは大賢者が頑張っていた200年前の話だ、今は違う。」
「今は違うってどうやるんですか、今まで多くの魔法使いたちがやってきたテーマだけど誰もできなかったじゃないですか、どうやるっていうんです。」
「それが普通の考えだな、なんともリガらしい答えだ。なぜ発展魔法(火・水・風以外の基礎魔法の総称)は火・水・風の魔法が使えると思う?そうだなプラタ言ってみろ。」
プラタは少しも悩まずに言った。
「発展魔法は火・水・草の三大基礎魔法から発展してできた魔法であり、そのため大元となった魔法の波長などが一部受け継がれているため大元の魔法の適性が少量あるから、ではないでしょうか。」
「正解だな、教科書的には。」
全員が顔を見合って困惑した。
「今の教科書は個人的には古臭いと思ってるんだ。たとえ話をしよう、国が戦争で勝つにはどうすれば良いだろうか、経済だとか兵士の数とかは一回棚に置いておいてくれ、俺が思うのは既存の兵器を新兵器へと換装するか既存の兵器を改造して使い続けるかの二択だと思う、そしてこの国、世界で使われている魔法学の教科書はその後者、改造して使い続けられていると俺は思っている、この約200年間ずっとだ。」
辺りのいつメン含め見物客たちは静寂に包まれた。
「始まったね。」
ティラナがつぶやいた。
「こうなったら元に戻るまで長いよ。」
カラスは周りを少し見て収納魔法で教科書を取り出しペラペラとめくりながら話を続けた。
「考えてみてくれ、この教科書の中はずっとかの大賢者ニコラス・ダルクは、、、もしくは大賢者ニコラス・ダルクの著書より、、、ばっかじゃないか。まぁ仕方ないのかもな、大賢者が100年前に亡くなってから今までは跡を継いだ剣聖のブツナ・イズミの時代、つまり今は剣聖の時代で剣の名家などは今でも増加傾向、それで魔法使いなどは減少傾向で適性があっても魔法騎士になるからな、それまでの研究は大賢者主導だったのに亡くなってからはまともな指導者はいても大賢者に並ぶものは出てこない始末、これで魔法の発展とかできるわけもないか。」
周りから一つ声が聞こえてきた。
「それはおかしいんじゃないのか、確かに教科書はどこをみても大賢者ばっかりだが亡くなられてから全くの進歩がなかったわけではないだろう。」
カラスは答えた。
「じゃあそこの今発言した君、大賢者が亡くなってからの一世紀で「到達点」は生まれたのか?」
さっきの博識そうな彼は言った。
「到達点は魔法のゴールのようなものだろう、それを大賢者じゃない人間が作るのは不可能だ。」
「なぜ決めつける。」
キッパリと言った。
「別に魔法省は今まで一人しかいなかった地位の大賢者にならないと調達点は作ってはいけないだとか書いていないだろう、なぜ諦める。」
彼は黙り込んだ。
「みんな酔いしれているんじゃないのか、だから俺が数年前に完成した解眼の短略化も100年経ってやっとできたのではないか。」
別の女子が言った。
「そりゃ、今まで数々の有名な魔法使いが挑戦して失敗したらあたしたちができると思わないじゃん。」
「それは間違いだ。」
もう一度キッパリと言った。
「その魔法使いたちが挑戦したのは何年前だ、俺が言ってる限りでも数十年前だが。」
辺りは静まった。
「俺は別に革命を起こそうというのではない、俺たちは成長しているのを説明したかったんだ。」
場がどよめいた。
「なぜ魔法は大賢者の手で100年間研究され続けてきたか知ってるか?それはあまりにも一般市民たちの魔法レベルが低かったからだ、そのため大賢者は自らがやらねば誰がやると考えてやったんだ。でも今はどうだ、一般市民でも四級以上の魔法を使うものたちがたくさんいる、そういうものたちよりも確実に上の実力を持つ君たちが集まって研究でもしたら確実に魔法は今までのよりきっと良くなると俺は思っている。」
「今から一週間後の午後2時、ここで志願者を集める、それは魔法をより良いものとするためのものたちの集まり、『人類魔法進歩協会』を作る。あ、怪しい組織じゃないよ、ほら。」
そういうと懐から一枚の書類を取り出した。
「学園長の許可がある、怪しむ者がいるなら近くで見せてあげてもいい。さて、入りたいものはいるかな。」
数秒静寂が続いた中、一人また一人が声をあげて前に出てきだし、気づくと大勢の志願者が出てきて盛り上がった。
「一週間後の午後2時、入るものはここに来るように、いいな!」
カラスがそういうと大きな声が起きた。
カラスはいつメンたちの方を向き、話した。
「さて、授業に戻ろう。」




