国王との謁見
一ヵ月が経過して国王との謁見まであと一日となった。
国王という言ってしまえば門外漢の人物に、いかにして集団ストーカーが効果的であるかを簡潔に説明するイメージを、自分の頭の中で繰り返した。しかし、確実に承認をしてくれるイメージを得ることはできなかった。
そこで、私は別の方法で国王を納得させようと考えるようになった。
国王との謁見の当日、私はアレフ一行と一緒に王宮に入った。
今回は、勇者就任の時とは異なり、中央ホールではなく、国王のいる玉座の間へ直接案内された。玉座の間に入ると、アレフ一行が国王に向かって跪き、こう述べた。
「国王陛下、この度は公務で多忙な中、お時間をいただき感謝申し上げます。」
私も彼らに倣って跪くと、国王が答えた。
「いや、今回はそなたらから面白い話が聞けるということで楽しみにしている。」
「どのような話なんだ?」
国王が聞くと、アレフが答えた。
「この転生者であるルークが、魔王を打倒する”名案”を持ってまいりました。」
「ルーク、説明してくれ。」
その話を聞くと、玉座も間を警備する甲冑姿の衛兵がピクッと動いた。それは、もしこの話が聞くに堪えないものであったのならば、私の首が刎ねられる、という印象を与える最小限の動きであった。
私は国王に集団ストーカーについて説明した。内容はアレフ一行に説明したものと変わらないので割愛する。国王はひとしきり私の話を聞く。その上でこう質問した。
「ルーク、お前が言うには集団ストーカーでは、ガスライティングによって魔王を追い詰めるというが、具体的にはどのようなことをするのだ?」
的確な質問だ。私は答える。
「ガスライティングでは生活する上で、非常に些細な変化を相手に与えます。例えば、現在国王はルビーで装飾された杯を右手に持っておられますが、それを翌日、サファイアで装飾された杯に差し替えます。」
国王は少し考え、こう発言する。
「その行為に何の意味があるのだ?きっとワシは翌日、杯がルビーからサファイアに変わったと思うだろう。しかし、それだけだ。」
「たしかに、最初はそう思うでしょう。しかし、その些細な変化を断続的に与え続けると、心境は大きく変わっていきます。」
私は少し反論した。しかし、国王の疑問を解消することはできなかった。
「仮に毎日杯の装飾が変わっても、ワシの心境に変化はないだろう。ましてや、相手が魔王ともなれば、ワシよりも遙かに強靭な精神をしていると予想される。そんな行為をしても無意味と言ってよいだろう。
転生者は皆、ワシに名案があるといって、各々が考えた魔王の対抗策を提案してくる。
それ自身は、王国内で議論が活発になるいい効果になると考えている。だから、転生者の提案をワシは聞くし、悪い提案であっても処罰は出さない。
しかし、転生者達の提案はどれも稚拙で非現実的と言わざる負えない。それは、転生前の彼らの人生経験の浅さから来ているのかもしれないが、王国軍の犠牲に対して何の重圧も感じていないように思える。王国軍の兵士一人一人にも家族がおり、かけがえのない命がある。
だから、お前の言う集団ストーカーが意味のある作戦でなければ、王国軍の兵士たちの大切な命を預けさせるわけにはいかない。」
議論は終わったように見えた。しかし、私は諦めていなかった。
「陛下は集団ストーカーをされても問題ないと仰っていますか?」
「ああ。」
「では、誠に差し出がましい提案になってしまい申し訳ないのですが、私が陛下に対して集団ストーカーをしてもよろしいでしょうか?」
「よかろう。私の家臣も使ってよいぞ。」
「ありがとうございます。」
こうして、国王に集団ストーカーを行う権利を手に入れた。
実際に集団ストーカーを体験してもらうことによって、国王に納得して貰おうとしたのだ。
そして、半年後、国王から魔王への集団ストーカー作戦が許可された。




