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魔物(モンスター)にも心はある。


魔物(モンスター)にも心はある。」


その不思議なタイトルに惹かれて本を開く。




・魔物の行動様式について


魔物の中には人間と同様に言語を発する種族が存在することが、魔王軍との戦闘などによって確認されている。しかし、現在学会では、魔物の発する言語は動物の鳴き声の派生系であり、意味そのものを理解しているのではなく、あらかじめ用意された言語のパターンを組み合わせることによって、機械的に処理を行っているという説が主流である。

また、精神構造の面についても、現在学会では、魔物には人間が生まれ持っている心というものが存在せず、意思の疎通は不可能であるという説が一般的である。


たしかに、魔物の行動には人間への模倣が含まれていることは否定できない。魔物が話す言語が我々の話す言語と同一であることからも、魔物が人間を模倣しているには確実である。また、王国軍に容赦なく襲ってくる魔物を見れば、お互いに意思疎通を取ることが不可能ではないかと想像ししまうのも無理もない。さらに、魔物は人間の行動を理解し、感情のある模倣を行うことによって、人間を油断させ、追い詰めようとする利己的な思考を持っているという学説もある。


しかし、敵対する相手には良心が存在しないと初めから判断することは、王国の人道的な視点から反するものであると筆者は考えている。王国軍は人道をもって、魔王軍と武力衝突をしている。もし、人道を外れてしまえば、それは魔物と区別できないだろう。以下の資料から魔物にも心が存在していると考えることができる。




(中略)




・「キメラの待遇格差に対する反応の実験」


王国軍は魔物と対峙するにあたって、魔物の生態を調査することは、今後の戦闘を有利にするために必要不可欠である。

王国軍は王国内の魔物を捕獲し、数種類の実験を行った。本実験では捕獲したキメラに対して以下の実験を行った。


実験内容:

捕獲したキメラ2匹を隣り合った檻に入れ、檻に入れた石を差し出すことで餌がもらえることを覚えさせた。

初めの状態では、石を差し出した2匹に対して、餌としてキュウリを与える。これを30回繰り返した。

次に、右の檻に収容されているキメラ(キメラ1と呼称)に対しては、これまでと同様に石を差し出したらキュウリを餌として与える。一方で、左の檻に収容されているキメラ(キメラ2と呼称)に対しては、石を差し出したらブドウを餌として与える。


実験結果:

初めの状態では、キメラ2匹は与えられたキュウリを喜んで食べた。

その後、キメラ1は初めは喜んで与えられたキュウリを食べていたが、キメラ2がブドウを貰っていることを目撃すると、露骨に不機嫌になった。その後、キメラ1が石を差し出した後にキュウリを与えようとすると、キメラ1は威嚇し、与えようとしていたキュウリを弾き飛ばした。その後、キメラ2が収容されている檻に攻撃を加えた。


考察:

キメラのような原始的な魔物であっても、待遇の格差に対して不満を抱くことがこの実験から証明された。この結果から、魔王軍に対して王国軍が非対称作戦を展開することにより、下級魔族間に格差を発生させることによって、魔王軍に対する不満を募らせ、分断を誘う工作が可能であることを示唆している。




(中略)




・「(秘) 王国軍 尋問ファイル #1065」


魔王軍が占領していたフルール村を王国軍が奪還した際に、村に残留していた魔物を生け捕りにすることに成功した。有益な情報を得るためにフルール村近くの砦にて尋問を行った。


[魔物(No743):オーク種 男 成人済みと推察]

[尋問官:王国軍 情報将校 シュミット中佐]


<記録開始>


尋問官:それでは尋問を始めよう。


魔物:この村は魔王様が徴収された土地だ。もはやお前らの土地ではない。この土地を侵略したならば、魔王軍からの猛烈な反撃が待ち受けているだろう。


尋問官:お前らが占領していた村の管理者の名前と所在地を言え。


魔物:じきに魔王軍の増援が来る。そうなれば貴様らも終わりだ。


尋問官:とりあえず、指詰めから始めよう。道具を持ってきてくれ。


[下士官によって魔物に指詰めが行われる。指詰めによって魔物の両親指が潰されるが、魔物は叫び声一つ上げない。]


魔物:何をやっても無駄だ、、、俺はこの村に残されたメッセンジャーだ。いくら拷問されても、何一つ吐くつもりはない。


尋問官:たしかに、指詰めでここまで声を上げない検体は初めてだ。相当辛抱強いことを認めよう。それでは、尋問の種類を変えよう。あれを連れてきてくれ。


[尋問官の合図により、下士官が別の地域で捕獲したオークを連れてくる。]


尋問官:もし、情報を吐かないなら、こいつが大変な目に合うが、もう一度質問するぞ。

お前らが占領していた村の管理者の名前と所在地を言え。


魔物:そいつには悪いが、人間に捕まったのが運の尽きだ。なにも言うつもりはない。


尋問官:なるほど。


[尋問官がナイフで連れてきたオークの首を切断し、その首を尋問机に置いた。]


尋問官:まぁ、これは一種の確認だ。気にしないでくれ。それでは次だ。


[下士官がオークの子供を8匹連れて尋問室に入り、並ばせる。]


魔物の態度が明らかに変わった。今までの全てを覚悟した表情から、明らかに気が動転している。特に左から6番目のオークの子供を凝視している。


魔物:あの子たちは遠くに疎開させたはず、、、、


尋問官:今回の攻勢では勇者たちの活躍が目覚ましくてね。300キロの範囲は領土を奪還できたんだよね。その子供たちはその端っこの村で見つけたんだ。


魔物:俺の命はどうだっていい!その子たちを助けてやってくれ!


尋問官:それは君が話す情報によって決まることだ。


[尋問官が並んでいるオークの子供を1人ずつ見つめると、左から5番目のオークの子供を掴み、机の前に突き出した。]


それを見た魔物は、一瞬ビクッと反応したが、その後少し安堵しているように見えた。


尋問官:君たちが占領していた村の管理者の名前と所在地を言ってくれ。


魔物:お願いだ。その子を解放してくれ。


尋問官:そうだな。「解放」してあげよう。


[尋問官が机の上で縛り上げられているオークの子供の首にナイフを突き立てる。オークの子供は悲鳴を上げるが、ナイフが首の半分を超えた辺りから静かになり、切断された首を尋問官が先ほど机に置かれた首の隣に並べた。]


魔物は言葉を失い、ただ、尋問室に並ばされている左から6番目、今となっては5番目のオークの子供を見つめていた。


[下士官がニヤつきながら左から5番目のオークの子供の首にナイフを突きつけようとするが、それを尋問官は制止する。尋問官は魔物に対して呟く。]


尋問官:この子供には情報を引き出す「価値」があるようだ。慎重に取り扱おう。


[そのオークの子供に対して爪を剥がし、そこに釘を打つ拷問が加えられた。3枚目の爪が剥されたときに魔物が口を開いた。]


魔物:俺たちの村の管理者はフィメル将軍だ。バルクト高原に城がある。だから、その子は、、ブルックの命だけは助けてくれ。


[それを聞くと、尋問官が手元にある書類に笑みをこぼす。]


尋問官:貴重な情報をありがとう。君の情報は書類の情報と一致しているから正しいと推察される。しかし、ここまでの情報は正直既に持っている。本当に知りたいのは、そのあとの情報だ。フィメル将軍の欠点・弱点を教えてくれ。


魔物:そ、そんなものはない。フィメル将軍は無敵のお方だ。お願いだ。本当に知らないんだ。お願いだから、その子だけは助けてくれ。


尋問官:それでは、尋問を続ける。


その後、オークの子供の爪を全て剥し、そこに釘を打ち付けたが、魔物から有益な情報は得られなかった。次に、オークの子供の片目をスプーンで抉ったが、それでも有益な情報は得られなかった。最後にオークの子供の足の肉を徐々に削いでいったが、肉を削ぐ途中で尋問対象の魔物が舌を嚙み切って死亡したため、尋問は終了となった。


<記録終了>


[結果]

今回の尋問の結果より、フルール村近郊に対して侵略を仕掛けたのがフェメル将軍であることが確実となった。この情報は王国軍情報局に直ちに共有され、フェメル将軍が報復対象リストの上位に載ることが予想されるであろう。

また、フェメル将軍などの将軍クラスの弱点などの重要な情報については、下級兵には知らされていないと考えてよい。重要な情報を得るには上級将校を生け捕りにする必要があることが今回の尋問から判明した。

また、残ったオークの子供については、今後情報取得に対する活用の見込みがないと判断され、内部で処理が行われた。




(中略)



・まとめ


以上の資料が今回の仮説を裏付ける証拠として挙げられる。

(中略)

「キメラの待遇格差に対する反応の実験」より、原初的な魔物のキメラであっても、不平等な待遇を強いられれば、不満を持つことが示された。

(中略)

「(秘) 王国軍 尋問ファイル #1065」の結果は特筆するべき内容であった。魔物、特にオーク族は残虐で利己的な性格であると従来考えられてきたが、この結果より、自らの子供に対する愛情は人間と大差ないと考えて差支えがないように思われる。


これらの結果を総合して、私は「魔物(モンスター)にも心はある。」と結論付ける。




本を閉じる。


魔物(モンスター)にも心はある。」


それは異世界に転生してから絶望しかなかった自分にとって、一筋の光のように見えた。

どんなに屈強な魔物にも心があるのであれば、今の非力な自分でも十分対抗することができる。

そして、その対抗する手段を自分は知っている。


私はひとり呟いた。


「集団ストーカーで魔王が倒せるかもしれない。」


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