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スライムに負ける。


先ほど私は勇者になったのだが、何をするべきだろうか。

そういえば、自分はほとんどお金を持っていないことに気がついた。

学生時代にやったゲームではお金を得るためにはモンスターを倒せば良かったはずだ。


そこで、とにかく私はモンスターを倒すことにした。

私でも倒せそうな、なるべく弱いモンスターを。


王都の外に出てふらふら歩いていると、看板を見つける。


「危険!スライム出没注意!」


ここらへんにはスライムが出るのか。

スライムと言えば、昔やったゲームでは最弱と言ってもいいモンスターであったはずだ。

とりあえず、スライムを探すか。


草原でスライムを探す。全然いない。

たしかに、クマ出没注意の看板があったからと言ってクマと遭遇するのは稀だ。あの看板も同じ様なものだろう。


しかし、スライムがいなければお金が手に入らない。今夜の宿代もない。由々しき事態だ。とにかく、スライムがいそうな場所を探し回る。


すると、道の外れに薄暗い森があるのを見つける。

じめじめとしていて、いかにもスライムが居そうであった。

森の中の道を30分ほど歩く。


そのとき、道のはずれに青い半透明な物体があることに気が付く。よく見ると、その物体は少し動いている。


スライムだ。


私は鋼の剣を手に取り、スライムに近づいた。

そして、間合いに入るとスライムに対して剣を振り下ろした。

剣はスライムを両断し、青いゼリーは真っ二つになった。


これで倒したのだろうか?

正直、全く手ごたえがなかった。


それもそのはずで、真っ二つになったスライムが、平然と動いていた。

私はそのスライムを何度も切りつけみじん切りにした。


しかし、スライムは生きていた。


周りを見る。

周囲には30匹以上のスライムがいることに気が付く。

自分がかなりまずい状況であることを理解した。


スライムたちは自分との距離を縮めようと徐々ににじり寄ってきた。

剣を構えると、正面のスライムの動きは止まったが、背後のスライムはにじり寄り続けた。

全てのスライムの動きを止めるために、あらゆる方向に剣を構えて威嚇したが、焼け石に水であった。


一匹のスライムが私に跳びかかると、それをきっかけに何十匹のスライムが次々と跳びかかってきた。痛みはないが、体が徐々に重くなっていくのを感じる。


しばらくして、私は立つことができなくなり、道に転がり倒れる。

スライムは体中を覆っている。

「とにかく気道を確保しよう。」そう考えた私は鼻と口を手で覆って、来るか分からない助けを待った。


動けなくなって数時間が経過し、辺りが暗くなっていくのをただ眺めていた。

すると、遠方に小さな明かりが近づいてくるのが見えた。

明かりが近づくと、それが松明を灯した馬車であることが分かった。


馬車を操縦する御者は25歳くらいの男であり、私を見つけると馬車を止め、馬車の中の人間に向かって言った。


「フレイヤ。火。」


「はい。火。」


自分の体がほのかに暖かくなっていくのを感じた。しかし、すぐにそれは火傷しそうなほどの熱さに変わった。炎魔法で私を覆っているスライムを蒸発させているのである。初めは覆っていたスライムが断熱材の役割を果たして熱さを感じなかったが、スライムが蒸発して薄くなるにしたがって炎魔法の熱さをじかに感じるようになっていた。


「あっっっっつ!」


自分が声を出したときにはスライムは完全に蒸発していた。


「大丈夫かい? っておいおい(笑)」


御者をしていた男が私に話しかけるが、私が立ち上がると馬車の一団が大爆笑していた。


「勇者がスライムに負けてる(笑)。こんなの初めて見たわ(笑)。」

「スライムなんて剣に炎を纏わせて切れば一発だろ(笑)。」

「ちょっと、炎が使えないかわいそうな勇者もいるかもしれないじゃない(笑)。」


一同がひとしきり笑うと御者の男がまた話してきた。


「いやいや失礼、見習い勇者君。

 私の名はアレフ。

 王国軍憲兵勇者隊 隊長だ。」


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