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実行部隊の訓練


集団ストーカーのターゲットは決定したが、すぐに実行とはいかない。ターゲットに対する詳細な調査と集団ストーカー実行部隊への訓練が必要になる。私はニューマン将軍の推奨していた魔導求道者 グリニフェス卿に集団ストーカーのターゲットを変更したこと、ターゲットの変更に伴いより詳細な身辺調査を要求すること、魔王軍側の集団ストーカー実行部隊に対して王国軍側で訓練を行うこと、を明記した手紙を書き、ニューマン将軍宛てに送った。


ニューマン将軍からの返答は、どれも肯定的なものであった。集団ストーカー実行部隊の訓練については1カ月後に行うことが決定された。魔王軍側の筋書きとしてはこうである。

ニューマン将軍は王国軍領土の偵察のために、軍勢の一部を偵察隊として再編。再編した1000人規模の偵察隊で王国軍領土に侵入し、情報を持ち帰る。

実際は秘密裏に王国軍と接触し、集団ストーカー作戦実行のための訓練を実施する。表面上必要となる王国軍の情報については、王国軍が精査して、流出しても問題ないと判断された情報を魔王軍側へ報告するという取り決めとなった。


1カ月後、集団ストーカー実行部隊に対する訓練は、国境周辺の廃村で行われた。もちろん、私も教官として、この訓練に参加した。参加した魔王軍の内訳を見ると、兵士が200人程度で、それ以外の800人が下級魔物(モンスター)で構成されていた。規律正しく整列する兵士と比べて、下級魔物(モンスター)はぞろぞろとゾンビのように(たたず)んでおり、知能が低そうであることが推察される。しかし、知能が低そうな個体を集団ストーカー実行部隊に選定するように指示したのは私である。


創値学会が集団ストーカーを行うとき、実行部隊に知的障碍者を利用することが通例となっている。集団ストーカーでは、指示されたタイミングで単純な動作を機械的に何度も行う事が重要になってくる。その際に、知的障碍者が持つ、単純な行動を何度も集中力を欠かさずに繰り返すことができる能力が役に立つ。また、集団ストーカーでは奇声を上げるなどの一般人が行うと目につく行動も含まれる。その際に、知的障碍者であればその行為を怪しまれることなく実行に移すことができる。


そして、知的障碍者は他の一般人と比較して、集団ストーカーを行う上で、指示に対して忠実に実行を行う傾向がある。一方で、その指示される行為の背景については理解できていないため、もし、集団ストーカー実行犯として尋問されたとしても、相手に対して情報を与えないという利点もある。つまり、知的障碍者は集団ストーカーを行う手足として最適なのである。


まず初めに、私は下級魔物(モンスター)たちに基礎的な訓練を行った。大声を上げたり、笑ったりする練習である。ターゲットとすれ違い様に笑い声を上げる。ターゲットが隣の部屋にいると想定して、ターゲットが特定の場所に行ったときに、声を上げるなどの練習を行った。この練習をしていると、創値学会平和記念会館で同じ訓練を行ったときのことを思い出し、なんだか懐かしい気持ちになった。


下級魔物(モンスター)に対する訓練はそんな感じであり、次に情報部隊への訓練を開始した。

情報部隊はターゲットを常に監視し、定期的に実行部隊を通してターゲットに対して”打撃”を与える。その際に、効率的に”打撃”を与えるために、ターゲットの心情を詳細に理解する必要が生じる。被害者の心情を理解したうえで、的確な加害を行う。これが情報部隊に最も必要とされる資質である。


その資質を有した上で、次に重要であるのが、現場の実行部隊との緊密な連携である。集団ストーカーにおいて、タイミング管理は極めて重要である。集団ストーカーはターゲットと”偶然”遭遇するというアプローチが主に取られる。そのため、ターゲットの行動を監視し、その行動の予測を行い、あらかじめ準備していた実行部隊に命令を行い、その実行部隊が偶然を装ってターゲットに遭遇して、初めて嫌がらせが実行される。この一連の動作が短ければ短いほど作戦の成功率は上昇する。よって、実行部隊との連携は非常に重要である。


しかし、タイミング管理が重要と書いたが、正直なところ、今回の訓練でタイミング管理を完璧にする必要はない。その理由は二つある。その理由の一つとして、タイミングをミスしたからと言って、その時の”打撃”が不発に終わるだけであり、リスクが全くないためである。集団ストーカーの技能は実行していくうちに自然と上達していくものだ。初めから周到に訓練する必要はない。二つ目の理由としては、実行部隊と情報部隊の連携が拙い方が、実行部隊に”不自然さ”が生じ、集団ストーカー初期においてはむしろ効果的な”打撃”

になるのである。そのため、今回の訓練ではタイミング管理については最小限の訓練にとどめた。


そんなところで、今回の訓練は完了した。

手ごたえはまずまずといったところだ。


ニューマン将軍の部下の兵士の熱心さには舌を巻いた。要所要所でメモを取り、詳細な箇所については何度も質問された。今回、ニューマン将軍は本気で七賢将を狙っているらしい。


魔王軍の集団ストーカー実行部隊には、王国周辺域の地図と戦闘時に自軍が有利になりそうな地形の情報と今後の通信用の水晶玉を持たせ別れた。


1週間後、通信用の水晶玉から初めて通信が入った。ニューマン将軍からである。内容は以下のようなものであった。


七賢将 魔導求道者 グリニフェス卿への集団ストーカー作戦は3カ月後の魔王様とグリニフェス卿の一対一の会食の翌日に実行に移す。


Xデーは3カ月後になった。


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