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五八話 邪神の瞳で踊る、銀/赤 (前)

 ――『ではこれから、お嬢様、って呼ばせてもらいますね』――


 ――『お前が嫌いだ。だから貴様に生徒会長の座は渡さない』――


 ――『やれやれ、行ってくださいカイチョー。足止めしときまさぁ』――


 ――『お嬢! どうして隣で授業受けてると思ったら、いつの間にかいなくなってるんですか! もぅ……ええと、これが今日の宿題の――』――




 マグダウェルは、ハッとして瞳を露わにすると、悩ましく額を押さえた。


(……ああ、眼を閉じるのは止めなければ。起きているのに夢を見てるみたい)


 マグダウェルの目の下には、ファンデーションにブルーベリーを混ぜたような、うっすらとしたクマができている。体調管理は万全なはずだ。なのに、毎夜毎夜見る夢のせいで、疲れはいまいち取れない。


 前の対戦がいつの間にか終わっていた。ダランという選手だったか。二メートルあまりの、四肢が丸太のような巨躯を8人がかりのタンカで運び、脇を抜けていく。

 自分はずっと直立不動のまま、思い出の暗闇に没入していて、試合観察も忘れていたらしい。


『さぁ! それでは各国お待ちかねの対戦が始まります! まずはマグダウェル選手ですが、今日こそは噂の新技術をお目にかかれるのでしょうか――それではまず、これまでのマグダウェル選手の試合を振りかえって、』


 魔法によって音声拡大された司会者の声が、潮の香りのする闘技場から響いてくる。褐色の煉瓦造りの闘技場全体を揺らすかのように。


 お待ちかね、という言葉にも、マグダウェルは気にも留めなかった。

 周囲からの期待。

 魔術の研究者として名を知られている自分には、慣れきった肌触りだったからだ。

「さて、」

 マグダウェルはようやく動いた。壁に立てかけていた鞘から、細くて刃のない、まるで長い針のような愛剣――フルーレを抜く。


 だらりと重力の前に切っ先を地面に向け、――ヒュン、と目の前に突き出す。

 イメージの向こうでは、今まさにこれから対戦する女性の額に切っ先を突きつけたところだ。

 あの女。ペトー・クロテッサ・ラ・ルリューゼルの、恐怖と動揺で歪む表情が、もう少しで手に入る。

 そう思うと、知らず、フルーレを握る手に力がこもる。

 皆から引き継いだ呪いの言葉で、死後の世界までも苦しめ続けるのだ。もはやゼファンディア第二位とはいえ、マグダウェルにとっては真の目標の足がかりでしかない。

 アーラック。

 貴様の目の前で、貴様の手駒だった女が無様に殺される様を見せつけてやるのだ。

 ――次はお前だ、と。


「――ダウェル選手? マグダウェル選手!?」

「あ……は、はい」

 制服の肩を叩かれてようやく、マグダウェルは顔を上げた。

待合室前で警備をしていた、係員の男性のようだ。

(……全く、先が思いやられる)

 空いている左手で頬に触れる。

 大丈夫なのか。

 人がいなければ、そのまま頬をつねりたい気分だった。


「……すみません。考え事をしていたもので」

「いえ、試合場の整備が整いましたので、ゲートをおくぐりください。」


 目先の砂利の闘技場では、もう闘技場中央まで後、十と数歩を残したところまで対戦相手が悠然と歩を進めていた。

 仮面の女。髪もなく、眼も口もない、輪郭しかない、真っ白な顔の模型のようだった。だが仮面をつけるところを見ていたから分かる。真っ白な仮面が顔から侵食し彼女の髪までも覆い尽くしただけのことだ。強力な隠蔽の魔力を持った仮面なのだろう。

 燃えるルビーを金で溶かしたような、赤白金の髪色。

 派手さでプライドの高さを表現(あらわ)したような、大きな竜巻の花を背負ったかのような、髪型。

 いつも生徒会長であるマグダウェルをねたみ、影口をささやいたあの女。

 学園に、自らの欲のために売春組織を蔓延(はびこ)りさせ、アーラックの魔の手を手引きした愚者。

 尊大で高慢ちきな――そして腹黒い笑みが、眼に浮かぶ。

 






五八話 邪神の瞳で踊る、銀/赤 (前)







 アエラ・クロテッサ・ラ・マグダウェル

VS

 ペトー・クロテッサ・ラ・ルリューゼル




 闘技場の、貴賓席側から見て真正面に当たる魔法の大スクリーンにはもう名前が表示されていた。


「大陸の誇り、魔術の粋、名高きゼファンディアの華――第一位と第二位による対戦を迎えようとしています!

 マグダウェル選手、対、ルリューゼル選手!」


 ぱっ、と、スクリーンの文字が変わる。


 マグダウェル HP 152/152 MP 533/533

 ルリューゼル HP ???/??? MP ???/???


『お、おやぁ、不具合があったようですね……ルリューゼル選手のステータスが表示されていません。……はい、報告によるとステータス隠しの魔具を使っている、とのことです。不具合はなかったようです。対戦中にでも取ってくださると、美麗な顔が窺える意味も含めて望ましいですね!』


 ざわざわとした浮き足だった観客の声が、二人を包む。

 目の前の敵に集中しているマグダウェルには、雑音など耳に入ってない。観客の存在を忘れていると言ってもいい。研究を発表する場や、生徒会長として振る舞う壇上よりは何倍も多い人数だとしても、所詮は有象無象にすぎないと知っているからだった。


「よく、逃げなかったですね。棄権などされたらどうしようかと思っていました」


 銀髪の姫カットが、ゆっくりとそよ風に薙いだ。黒と赤バラを模したような柄のカチューシャが、陽光に照り返し、銀細工に添えられた黒曜石と赤珊瑚のように気品高い。

 胸には、金色の王冠の刺繍。赤いブレザー、栗梅色のロングスカート。大陸の少女達が憧れる、最高学区の制服を、当然のように着こなしている。

 本当なら、マグダウェルの胸元には、正統会長の証である、山吹色の宝珠のペンダントがついていたはずだった。

 それも、目の前の女に、奪われたのだ。

 大切な仲間の、命と共に。


「正直な話、私としては、会場に入る権利さえもらえれば良かったのですけれど」


 腕組みをして肩を落とすマネキンは、男性とも女性ともつかないノイズのともなった声で気疲れを露わにした。

 同じ、ゼファンディア魔法学校の制服。

 第二位などと呼ばれているが、コロシアム前の学校内でのトーナメントでは、ハンデまでつけたにもかかわらず、圧倒的な敗北をさせた。第一位と第二位の差を見せつけるかのように。

 ――今思えばそれすらも、この女の裏切りに拍車をかけたことになるのだろうが。


 ルリューゼルは、両手に何も、獲物を持ち合わせていない。

 マグダウェルでさえ魔術媒体で便利だという意味も含めて(フルーレ)を持つというのに、この女はあろう事か拳に魔法を込めて戦闘するという魔法使いらしからぬ戦い方をする。


「ヒカル君が言っていた話は本当のようですね。貴方は、どうやら私への執着をどこかに落としてきたとしか思えない」


 試合前にヒカルが待合室に乗り込んできたが、聞く耳持たなかった。唯一耳にしたのは「あれは、あんたの知り合いじゃない」ということだった。

 たしかにこの変わり様は、人格が変貌したとしか思えないほどだ。

 なぜだかはわからない。

 およそ二十歩先に立つ宿敵は、あの仮面をつけている時から、マグダウェルに動揺しか与えてこなかった。


「ですが、付き合ってもらいます。ここが貴方の墓場です」

 フルーレの切っ先を、素早くルリューゼルの胸へ真っ直ぐに向けた。風の魔法が伴ったなら、既にその心臓を射貫いていただろう。

「はいはい、そーですの。どうしたものか……こっちはやる気がないというのに、何だか私までシリアスにならないといけないような気分になりましたわ。嫌な配役ですわね」

 ルリューゼルは、コキ、と首の骨を鳴らす。

 まるで試合の行方などどうでもいいかのように――。


(……ッ、…………ルリューゼルごとき(・・・)が、舐めてくれるものですねッ……!)


 マグダウェルは眼をすがめ、呪いの怨嗟に全身の毛を逆立てて、射殺さんとばかりに、ルリューゼルを睨んだ。




『それでは、試合開始ぃいいいいいいいいいいいい!』




 ビーッ、と会場中からブザー音がなる。火蓋が切り落とされた合図だった。

 マグダウェルは青天を突くようにフルーレの切っ先を掲げる。

 ぽぅ、と赤でも水色でも黄色でもない、何色にもなりきれない魔力が切っ先にともる。

 ――儀式のように、光の弧を描いて地面へ降ろされる、切っ先。

 そして、自分の身体を軸に、ぐるりと、光の軌跡を地面に残しながら円を描いた。

「我が身に集え、六式/色陣(ろくしきじん)!!」

 円のうち側に六角形の魔方陣ができあがる。マグダウェルの正面から火、右回りに水、雷、風、土、木の輝きを持って、マグダウェルの腰の高さまで浮き上がった。

 六色の光がマグダウェルに集い、マグダウェルと同じ姿の電子ホログラムを纏ったかのように、残像する。


「どうしましたルリューゼル。いつもの貴女なら、既にインファイトに持ち込んでいるところですが?」


 六式/色陣(ろくしきじん)。魔法の基本である、六力の属性魔法に対するカウンター魔法である。身体に属性魔法を受けたとき、同属性の魔法が抵抗し、相殺する。魔術師にとっては、全ての中距離、遠距離魔法が使用不可になったも同然である。


「……えっ……そんな芸当、六力全てを扱えないとできないですわよ?

 ……貴女、まさか全属性に適正があると? ……ますます興味深、」


「何を今更。ルリューゼル、とぼけた真似は止めなさい。……虫酸が走る! エノート!」


 マグダウェルは滑らかに高速化魔法を付与し、最初の一歩で矢のごとき勢いに乗り、ルリューゼルを貫きにいった。


「くっ、!?」

 ルリューゼルの鼻先、というところで、右拳の殴打がフルーレの切っ先をはね除ける。


 だが、マグダウェルはさらに身を走らせ、空いていた右手に、稲光る黄色の魔力光を込めて腹に叩き込む――!


 バチィッッッ!!

 電撃の拳がルリューゼルを打ち抜いた。


「どうしましたルリューゼル!」


 ――そして、魔力光は、突如拡大し、中位魔法となって解放される。


槍雷(ディノーエ・ドッド)!」


 パァァアアンッ!

 まるで稲妻が放たれるように、ルリューゼルの身体を激しい雷の槍が貫いていく。

 あまりの電圧に、バチバチバチバチッ! と空気が電子分解されて火花を伴った。

 想像を超える威力に、ルリューゼルは堪らずにつばをこぼし、身体は宙を舞った。


 ――中位雷力魔法の過程にある雷魔法を経由、攻撃を当てた後、魔力を霧散させずにそのまま中級魔法として完成させ、撃ち出す――


 奇しくも以前、アーラックがミナ達に見せつけた上級技術『隠蔽魔術』だ。初級魔法を経由しながら中位魔法を完成させる、ゼロコンマの時間差の中で競う戦士達の、凡人と一線を画する目安になる技術である。

 勿論フルーレの一突きが見せかけ、というわけではなかった。

 一級の剣士の鋭さを持って、一撃必殺でルリューゼルを貫こうとしたのだ。

 会場全体の、腕に覚えのある戦士達が、息をのんだ。

 マグダウェルを、当初は魔法学園のお嬢様とバカにしていた人間もいただろう。


 魔術師殺しの六式/色陣(ろくしきじん)

 魔術師らしからぬ、歴戦の剣士のそれの、一突き。

 一瞬の隙もない雷魔法による術式隠蔽、中位魔法の発動。


 ――試合開始、わずか十秒にも満たない時間で、格の差を見せつけた。

 ゼファンディアの第二位を、文字通り秒殺(・・)してのけたのだから。


 ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


『こ、これは凄まじい一撃……! マグダウェル選手、開始十秒にして早くもルリューゼル選手をノックダウンです!! 素晴らしい動きでした! これこそゼファンディアの切り札、アストロニアが誇る一輪の華ぁー!!』


 会場は、マグダウェルを褒めたたえるムードで満ち始める。


だが、マグダウェルは、十メートル先に大の字で倒れたルリューゼルを、氷の表情で、これ以上ない憎悪色の視線で、見下した。


「なぜ、受けたのですか」

 絞り出すように言ったマグダウェルは、じんじんと赤くなった手を、ぎゅっと握りしめる。

 まるで、鉄を殴ったようだった。


 (……仕込み鉄板? 魔力発動の予兆はなかったし、身体硬質(プロソリクス)は土の近親属性。それならば六式/色陣が突破するはず……)


 だがマグダウェルの槍雷を乗せた手の平は、あまりの堅さに怯んで、本来の威力を出し切れなかった。

 元々の魔力があまりにも凄まじいので、中位魔法の不完全さに気づく者は塵ほどもいないが。

 確かに、ルリューゼルは格闘魔術師ファイティング・ウィザードであるから身体能力はそこらの魔術師の比ではない。

「ルリューゼル。……まさか私相手に、ハンデを?」


「――さぁ? 初手を譲って差し上げたと考えたらよろしくてよ。

 こちらの都合もありますし。相手の手を見て、自分の手を考えるのは、試合の常套手段ですわ」

 中位魔法を腹に食らった矢先、とは思えないほど簡単に、ルリューゼルは起き上がる。痛みを堪える様子もなくパンパン、と制服についた砂埃をはたいた。

「る、ルリューゼル選手、立ちました……。あの見事なマグダウェル選手の一撃から立ってみせる魔術師が、この大陸にどれだけいるというのでしょうか……!」


「さ、次はルリューゼル(・・・・・・)である私の拳が、お相手しますわ。よろしくて?」


 ボクシングのように両拳を上げ、重心を下げる。


 呪文を何(・・・・)も纏わずに(・・・・・)


(――ッ、おかしい、おかしすぎます! なぜ高速化すらつけない!!!)


 六式/色陣を警戒してかもしれない。攻撃魔法などに対しては強力な守りであろう。

 だがそうではない。エノートのように身体が高速化して生まれた物理攻撃力(・・・・・)に対しては、六式/色陣は全く無意味だ。


 ――ここでオリジナル魔法『六式/式陣』にすがり続けるなら、ただの魔術師。

だがマグダウェルは違う。自ら目の前の、知り合いの姿をした違和感を無視しない。何が優先されるかを彼女の天性が告げるのだ。

 ゼファンディアの切り札。

 誉れ高き最高学区の第一位。

 5000人の王宮魔術師候補の頂点に立った、文武両道の天才。

 彼女のフルーレは、見せかけではない。


 マグダウェルは未練もなく六式/色陣を解いてみせる。

身体硬質(プロソリクス)反射上昇・改(シラークス・メイ)

 黄色と黄緑の光が、マグダウェルの全身からあふれ出す。

「良いでしょう、貴女の得意な近接戦、受けて立ちます」



§



「むぅ、確かにゼファンディアの第一位ともなると凄まじいな……」

「シュトーリアも噂くらいは耳にしてたの?」


 観客席の一角に俺達はいた。


「ひゃ、うわわ、……おぉー、」

「すごいぞー!やれやれー!」

 スクリーンをお菓子を食べながら見つめているのはナツ、なんだかヒートアップ中のブクオ(ヤーク)。二人が抱えてるバケツには、キャラメルコーンみたいなヤツが山盛りで入っている。さっきもらったが、白色が塩こしょう、茶色はカラメル味。


「……が、今の術式は中位の二段ですか? しかし、ならば魔力の低消費と詠唱省略をいつしたのかが見えませんが」


「うむ、しかしむしろ単純に、先に放った熱波の魔力が、次弾の火炎陣の展開を早めたと言える。魔力は指向性が消える寸前までは、まだ術者のコントロール下にある。それを利用したんだろうが……」


 ミナとバウムはマグダウェルの使う魔法について、魔術談義に忙しいらしい。さっぱりわからん。



 で、余った俺は銀鉄の鎧姿のシュトーリアと話している図、というわけである。

 マグダウェル、対戦相手のルリューゼルの説得に失敗した俺は、心配になって観客席に戻ってきたのだ。本当は他にすることはたくさんあるのだが。


「しかしフルーレ、対、徒手格闘か。大会上位ともなると特徴ある選手が増えるんだなぁ」


 目先ではちょうどマグダウェルがフルーレで払い、彼女の背後の魔方陣から野球ボール大の氷玉の弾幕がマネキンを襲っている。タァン! と軽やかにバックステップしたマネキンはすぐさまボクシングスタイル、地震に迫る氷を一発も直撃せずに、目の前で破壊、受け流してのける。手が痛そうだ。


「ヒカルが言うか、ヒカルが……」


「まぁ、オーソドックスな剣士の見本みたいなシュトーリアにゃ言われてもしょうがないけどさ。……うわ、見ろあれ、あのマネキンまだ頑張るみたいだぞ」


 なんでだろうな、マネキンの方はなんでここまで上がってこれたのか、いまいち分からない。大した魔法も使ってないみたいだし、徒手格闘でここまで上がるなんて――。


「……あれ? 俺、今、何かおかしい事考えたような……」


 嫌だな、今なんか違和感に気づいた気がする。

 あのマネキンは、見ていると、こんな大きなコロシアムで勝ち残った選手だというのに『なぜかそんなに凄くないように思えてしまう』のだ。


「シュトーリア。もしかしてお前もマネキンが普通に見える?」


 シュトーリアは小さく頭を振った。


「……ヒカルも気づいたか。私も最初はそう思った。しかし逆に考えた方が良い。本来『強く見えなくする』ほうが、遙かに難しい。むしろステータス隠しのように、何かのマジックアイテムが彼女の強さを隠していると考えた方がいいだろうな」


 なるほど――マジックアイテムか。俺のいた世界と比べちゃいけないな。こっちにはこっちのルールがあるんだから。もうちょっと頭を柔らかくして考えよう。


 仕切り直しするために、俺は、ふぅー、とシュトーリアの耳に息を吹きかける。


「んぁあ……っ、は!? な、ななななななななななななななななッッ!? な、何をするんだヒカルは!?」


 ズシャァア! と飛び避けながら、右耳を押さえて顔を真っ赤にするシュトーリアだった。


 周囲の人がなんだなんだ、あーシュトーリアちゃんだ! サインサイン♪ マジ萌え……っ、おかーさんあの人達いちゃいちゃしてる、だめでしょ貴女にはまだ早いわ見ちゃダメよ、と騒がしい。


「冷静になるにはこれが一番だと思って」


「代わりに私がびっくりするだろうっ!? 人の耳の穴をなんだと思ってるんだっ」


「耳の穴、って、なんか卑猥なひびき」


「ん? そうか? まぁいい。……そうだ、前から思っていたんだ。ヒカルが私にそうするってことは、私もヒカルにやり返して良いってことになるな!」


 気づいたぞ! と言わんばかりに顔を輝かせて、シュトーリアは自信満々に胸を張ってみせる。


「チッ。気づきやがったか」


「ふふん。よってだ、ヒカル。私は今ここでお前に対して、相応の嫌がらせができるということだ!」


「まぁ、そんなことした瞬間にお前、全裸で闘技場の真ん中に召喚するけどいいの?」


「私の人権は一体どこへ……」


「得意げになったり落ち込んだり、今日は元気だなお前」


「……ふん、待ちに待った大会だからだ。見ていろ、今日ヒカルに勝って、この神獣召喚の呪印を消してもらうからな」


「でも負けたら、問答無用でされるがままになるけど、良いの?」


「ミナに言いつけてやるぅっっ!!!(泣)」


 半泣きになって訴える面白騎士をせせら笑って、俺は試合に目をやった。



 

 ――何だか胸騒ぎがしたのは、きっと気のせいじゃない。






§




 

 空中に待機させていた魔方陣が、マグダウェルを援護するように岩石の砲撃を放つ。


「シシシシシシシシッ!!」

 ルリューゼルが痛みのフィードバックを感じさせない拳速で一瞬で土くずに変える。

 だが一瞬、土くずは砂埃となり、煙幕となる。

「フラガトリカ!」

 マグダウェルのフルーレが()いた。

 ヒュババババババババババババババババババババッ!!

 砂煙を突き破るようにして暴風する、突きの弾幕(・・・・・)である。

「くっ!?」

 さすがのルリューゼルも、これには堪らずに後退する。

 身体を高速化、反射上昇させたマグダウェルは、まるで新撰組の沖田総司の三段突きを思わせる圧倒的速度でルリューゼルを襲う。

 その刺突の総数、秒間およそ21……!


「ハァアッ!!!」


 しかも最後の一突きには水流魔法がこもっていて、後退したルリューゼルの左腕を水の綱がまとわりつく。

 その瞬間に凍結し、ルリューゼルの動きを一瞬だが封じてみせる。

 その一瞬こそ、最大の好機だ。

 周囲二メートルからルリューゼルを囲うように、八つの魔方陣が展開される。


「早い! ……いや、この氷に残った魔力をそのまま使って……!?」


 一撃あたり、もう少しで中位に届くほどの魔力を圧縮した、(やじり)型の氷弾……!


「食らいなさいルリューゼルッ!!」


 ドドドゥン、ドドドドドゥンッッ!!!

 ルリューゼルに全方位から氷弾が襲いかかる。

「ぐううううっ!?」

 氷の粉が小麦粉をばらまいたよう飛散する。



 マグダウェル HP 103/152 MP 344/533

 ルリューゼル HP ???/??? MP ???/???



「く、あ、ぶなかったですわ……! く、上手いですわね」


 霧が晴れるように、うっすらと視界が晴れる。

 彼女を守るように展開された、丸形カーテンの土の障壁だ。直撃の瞬間に発動させたらしい。


(でも、予想通りです!)


 マグダウェルは、バックステップで、およそ四〇メートルを飛び跳ねながら後退する。

 口元は、短縮された詠唱に素早く動かしていた。

 完全展開されつつある曼荼羅(まんだら)のような魔法陣を頭上に背負いながら、必殺を確信する!

 

「……るは天命の、 集え百炎、散りて千炎、届け万炎、炎神鍛えし、彼方より、罪焼き尽くす罰の炎よ! 我に従い、今この手に契約と為せ!」


 瞬間、土円カーテンでその瞬間も隠れたままのルリューゼルを中心に、赤色に脈動する複雑な幾何学模様の魔方陣が、半径五メートルを埋め尽くす。

「この術式構成――クッ! 突破できないですわ!」

「終わりですルリューゼル!」

 紋章から光の壁がドーム状に形成され、周囲から、陽光から、光という光をドームの中にブラックホールのように引きずり込んでいく。

 ベキュベキュベキッ、と空気の焼ける音。

 地面が持ち上がるような地鳴りを(ともな)いながら、ドームは張り詰めた限界直前の水風船のように――。

 ピィン――。

 一瞬、ドームが激しい白に、(きら)めいた。


「『火刑・千火虐罰(せんかぎゃくばつ)(ことわり)!!」


 まさに、小さな核爆発だった。

 爆風が円形に拡大する。あまりの空圧に衝撃波は刃となって地面をめくり上げながら観客席の壁を襲った。

 観客を防護する魔法障壁が、悲鳴を上げる。砂粒一つ、小石一つが弾丸のように疾風して竜巻でも産むかのよう。

 極大の炎が立ち上る。

 幾層にも織りこまれた魔方陣の魔力が誘発して、空から雨あられと局地的に爆弾でも降ってきているかのように、次々に炎の中から爆発が顔を出す。

 

 コロシアム一帯に暗闇をもたらすほどの、キノコ雲。

 

 対軍・決戦魔法に分類されるに相応しい、火力上位の大魔法だった。


『……す、凄い爆発したね……、会場は衝撃に混乱していますが、実況を続けます。たった今、マグダウェル選手の大魔法が炸裂しました! もの凄い威力です!!』


「はぁ、はぁ……! ……身体回復(エクサム)


 MP200。自身の最大魔力の5分の2……王宮魔術師二人分の魔力をごっそり(から)にするほどのMPを一度に使い切る。しかしこれが戦争なら二個中隊を完全に破壊、周囲一〇〇メートルの戦域を沈黙させるに等しい『兵器』だ。

 勝利も確信しようというもの。しかしマグダウェルは、肩で息をしながらも、回復魔法で体力と、乳酸進行を回復させる。回復魔法に天性の才能を見せるシュトーリアのエクサムラースには及ばぬものの、魔法使いの体力程度ならば問題ないほどに。


 未だ残炎と煙が続く中、マグダウェルは油断せずにフルーレの切っ先をルリューゼルに向け、眼を細める。

 大魔法は、完全にルリューゼルに直撃した。マグダウェルの持つ大魔法の中でも、最初に魔力結界を形成するものを選んだ。捕縛するためではなく、魔力を逃がさないため、そもそも爆発力を高めるための結界ではあるが、一石二鳥だったというわけである。 


「これはさすがに効いたか――ルリューゼル選手はどうなったのでしょうか! ダウンを確認できましたらカウントを取りたいところですが――、」


 でもそれは、身体が残っていた場合だ。

 これだけの爆発、火炎を受けて、死体も残るかどうか怪しいところである。

 少なくとも、マグダウェルは可能ならば魂ごと、消し炭にするつもりだったのだから。




  「――見事ですわ」




 マグダウェルは、聞こえた声に、大きく目を見開いた。

「……な、に」

 炎の中からゆらり、影。土のカーテンなどとっくに吹き飛び、障害物や、瓦礫すらあるようには見えない。

 人の影だ。

 ざっ、ざっ、ざっ。

 悠然と歩を進めるマネキンの姿は、悪い冗談にしか、思えない。

「あらら、スカートの裾が滅茶苦茶ですわね。……いい加減動きにくくて邪魔だと思っていたところですけど」

 突然屈んで、ビリビリッ、と制服のロングスカートを引き裂く音。

 下着がギリギリ見えない程度に、チャイナ服のようにスリットが入る。


 マグダウェルは記憶を探して、ゴクリと生唾を飲んだ。

 ――ゼファンディアの学生であることをあれほどまで誇り、それ以外を見下していたルリューゼルが、たとえ戦闘の邪魔になるからといって、自ら制服を破く――?


「ふぅ。そろそろ――いい加減、頭も冷えまして?」

 ルリューゼルは立ち止まり、両の肘を抱くようにして、言う。

 ルリューゼルの背後の、未だ消えぬ業火と煌々とした光点に逆光して、マネキンの影を深めた。



 知らず、マグダウェルは一歩後退していた。

 総魔力の5分の4を使った。大魔法も直撃した。マグダウェルが知るルリューゼルは回復魔法だって使えないのだ。なのに、傷どころか、動揺すらみてとれない。マネキンの魔具のせいだと信じたいマグダウェルだった。胸が、わずかに緊張して力む。こんなにも表情が見て取れない戦いが心を削るものだとは思いもしなかった。


「……貴女、本当に…………本当に、ルリューゼルだというのですか」


 替え玉ならまだ納得できる。地力が、過去のルリューゼルとは明らかに異なるのだ。

 額にじっとりと汗が滲む。

 不気味だった。本物のルリューゼルを食い、その皮を被った悪魔か何かのように思えて仕方なかった。


「いい加減、その気持ち悪い魔具を外しなさいルリューゼル。アーラックに悪知恵でも入れられましたか。――これ以上の愚弄を続けるようなら、身を以て覚悟してもらわねばなりませんが」


「よく言いますわ。それだけ目をギラギラさせておいて、覚悟も何もないじゃありませんの。……人の気も知らないで。いい迷惑ったらありゃしない」


「言ってくれますね。――ええ、建て前ですとも。元より貴女に選択肢など、ない」


 マネキンのちょうど『口元辺り』が、ニヤり、と歪んだように、マグダウェルには見えた。

 何か、気味の良い悪戯を思いついたように。

 目の前にちょうど良いおもちゃ(・・・・)があると言わんばかりに。


「ああ。――ごめんなさぁい、って言って欲しいんですの? 貴女の大切なお友達を売っちゃって。でも切り刻まれたり泥にまみれて死ぬより、綺麗なまま死ねてよかったんじゃありませんの。氷漬けですけど? ウフフッ!」


「ルリューゼルッ! 貴女……!」


「そうですわね、こんな時、(かたき)役ならどんなセリフが良いかしら。ホラホラいいの、そんなに悠長に構えて。貴女があんなに欲しがってた首はすぐここにありますわよ? フフフッ、みんなも愛しの会長サマに『頑張って!』って冷たい冷たい雪の下から応援してますわ。ウフッ!」


 ルリューゼルはあろうことか、お腹を抱えて、クスクス! と笑い始めたのだ。


「黙れっ! 急に饒舌になったかと思えば! ……それ以上、それ以上、皆を愚弄す、」

「――隙、アリ」






 ずどん。




「ェ、――え?」




 マグダウェルの身体が、くの字に折れる。



『……あ、』

 実況の女性が、言葉を失う。



 マグダウェルは一瞬、何が起こったか、分からなかった。

 かはっ、と胃液混じりのつばが、口から吐き出される。

 急な、胸への衝撃だった。肺が一瞬でつぶれ、脳しんとうを起こしたかのように意識が明滅する。

 組かけていた術式5つが脳内で崩れ落ちる。

 フルーレを握っていた握力が、消えた。


「何、が」


 メリリリッ…………!

 避けることもできず、お腹に食い込む何か。

 まるで深々と掌底でも、もらったかのような――。


「う、嘘」


 マグダウェルは、今にも気絶しそうな意識の中、下を見た。

 驚愕に、歯がカチカチと震えた。

 これ以上ないと言うほど、目を見開く。

 地面から丸太大の石柱(・・)が生え出て、自身の腹目がけて突き出ていた――。



「――なぁんてね。町で私を見つけるなり襲ってきた仕返しですわ。おかげでこれでも、随分と予定が狂いましたのよ?」



 コロシアムにも出場する気はありませんでしたわ、とマネキンは肩をすくめながら言う。

 パチン。

 指を鳴らしたかと思えば、石柱が地面に埋まっていくようにして消えていった。

「ア、あ」

 マグダウェルは自身を支えるものを失い、受け身も取れず、うつぶせに倒れ込む。


『る、ルリューゼル選手が初めて攻撃を放ちました! マグダウェル選手の鳩尾に深々と一撃ィ! マグダウェル選手ダウンです! これは効いたぁ……! ゼファンディアの切り札の初ダウンに、観客も動揺を隠せません!』


マグダウェルは、唇に砂がつくのも構わずに、荒い息を吐く。

 ――速過ぎる。

 術式も何もあったものじゃない。

 次元が、違う。


 詠唱の短縮? 紋章陣による即時展開? 待機呪文? 詠唱破棄? 全部違った。


 魔法を使っていなかったのではない。

 発動が、あまりにも速過ぎた(・・・・)だけだったのだ。


『7、6、5、まだ立てないかマグダウェル選手! 4、3』


「もう終わりですの? ま、いいところに入ったみたいですけど」


「ほざ、くな……ぁあああっっ!」


 全身に鞭を打ち、フルーレを握りしめる。

 マグダウェルは、剣を支えに、目を血走らせながら、ふらふらと身体を起こした。


『立ちました、立ちましたマグダウェル選手! ですが持ち直したと言うより気力で立っているだけでしょうかー?』


「貴女は――………………」


「ん?」


 マグダウェルは、ここへきて初めて、目の前のマネキンの女性に対して、敵意のない疑心を向けた。


「貴女は、……誰だ」


「ふん、ようやくですの。ま、気づけたことに免じて、この趣味の悪いお面は取ってあげますわ」

 性別すら隠蔽された声で言う。でもどこか――安心したような声色に、マグダウェルは思えた。


 マネキンは、一瞬観客席にちらと視線をやった後、顔に手をかけた。

肩まで侵食していた石膏が、ぬるぬると肌を伝って顔に集約していく。

 徐々に浮き彫りにされる少女の輪郭。ぽん、と手品で出した花束のように、赤金色の髪のスプリングのような一本ロールが後頭部に生え出る。

 白磁の面が顔から外れる頃には、オペラ座の怪人の面のように顔サイズのものになっていた。


 観客席の一角で、少年が何やら驚いたように叫んだようだが、マグダウェルにはどうでもよかった。


 そっくりだ。――だが似ているだけで、何かが違った。

仮面を胸元にしまった少女は、腰に手を当てて鷹揚に言った。

 

「初めまして。……うん、その目は分かっているようですわね。いい子ですわ

 確かに、察しの通り、私は、貴女が知っている女性とは違いますのよ」



 マグダウェルには、分かるまい。

 彼女は現代における魔術師『典法術士(アヴェスト)』。

 日本支部の二大ルーキーの、一角。

 ヒカルパーティの特攻隊長として世界を救った一人で。

 世界唯一の、黄金(・・)の典法術士。





 地面から生まれ出でた、金色に光る何かが、小町の周囲に漂い出す。次第に渦を描くように回転を始める。

 端から見て、液体だった。

 マグダウェルは、液体の金属だ、とすぐに理解した。

 液体金属達は自身でも微光しながら――それよりもむしろ、太陽の光こそを反射して、宝石のように瞬いていた。


(――ありえ、ない。金属を操る魔法など六力には存在するはずがない! 世界の六力理論の構造に反することに、……いや!?)


 理解できるマグダウェルは、全身を総毛立たせて身構える。

 一瞬でも不可能を断じた自分を恥じた。


 魔法の研究者としてのマグダウェルがいたからだ。

 世界を、もっと効率的に。

 魔法とはなんなのか。

 いつだって法則性のある姿に疑問を覚え、世界を知るために法則を探したはずだ。

 この世界にいずれ革新をもたらすであろう『マテリアル・ドライブ』。

 その発明のきっかけをくれた言葉が、ふと脳裏に蘇る。

 大陸の発展のため。魔法技術を世界中のどこよりも先進するための、画期的な技術に悩んでいた時のことだ。性別も忘れるほどに、こもりきりで精神を切迫するほどに悩み考え抜いていた私に、紅茶を渡しながら、今はもういない愛する従者であり友達だった少女が、困った笑顔で言ったのだ。


『目の前にあることに、とても身近にあるのに、私達は気づかずにいますよね。

 この紅茶みたいに、底まで透き通ってて、味も知ってるから。

 お嬢はいつも集中したとか理由をつけて結局紅茶を冷ましてますけど、もしかしたら目の前の一杯がこれまでの人生で一番美味しい可能性だってあるんですよ? 一瞬を大切にしなきゃですよ、お嬢』


 ――ああ、そうだったとも。

 この世界の秘密が、一杯の紅茶で語れることを知ったのだ。

 

 だから、目の前に起こる全ては真実だ。

 それまでの価値観や常識など関係ない。




 マグダウェル HP 152/152 MP 129/533

 ルリューゼル HP 483/549 MP   0/  0




 たとえ頭上のステータス・スクリーンの数値の異常さも。

 魔法を使っているのに、MPがない不可解も。

 ルリューゼルの姿をして、全く別人である目の前の女も。

 全て、この世界の真実の一つにすぎないのだから。


「姓は戸泉、名は小町。

 二つ名は先咲く赤バラ(オルタ・ローズ)

 好きなようにお呼びになって。

 ――いい目。

 そういう目を見たかったんですのよ」


「……いいでしょうコマチさん。

 今までの非礼をお詫びします。

 ――ですが、立ち塞がるつもりならば、それ相応のお覚悟を」


 ゼファンディアの切り札と呼ばれた、かけがえのなかった仲間達が信じたマグダウェルだからこその、強気な宣言だった。

 分からないなら理解するまで。

 気づきさえすれば自身にできぬことなど、ありはしない、と信じているのだ。


 向かうは、(かたき)とうり二つのイレギュラー。

 赤い竜巻を背負った少女の拳には、いつの間にか握られたのであろう、黄金のナックルがうち光っていた――。

 

 








 担当絵師陣のご紹介~

 http://www7b.biglobe.ne.jp/~kirisame/index.htm/index.html

 ↑おなじみの雪さん(今は和良に改名)と並んで取り組んでくれる人がこの人!


 http://etherweiss.blog135.fc2.com/ 

 穂里みきねさん


 ロリのマエストロだとぅ……!? 

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