作戦タイム ~ コロシアムギャンブル! ~
さてさて来ました読者参加型の作戦タイム。前回同様ストーリーに大きい変化はもたらしませんが、彼女たちの冒険が楽になったり面白いことが起こったり……!
慎重に展開予想をかねて、見事大当たりを当ててみせるべーし!!!
(後書きの萌え絵も忘れないように閲覧閲覧♪ お持ち帰りだっっ)
「……あるぇ?」
――少し考え事をしていたのだ。だからとりあえず姉の後ろ姿についていっていて――どこではぐれたのだろう。ナツは、ミナと背格好の似た見知らぬ中年女性についていっていたらしい。本屋で女性がポンチョのフードを脱いでその化粧肌を日にさらした瞬間、ナツの理性が氷のように固まった。
マッシルドの大通りの混雑の中、ナツはポンチョのフードから顔を出して、姉を捜すべく前後を見回した。
「あれれ…………………………………………………………も、もしかして迷ったかなぁ…………………………?」
迷子、が正しいのだろうが、そんな事をつっこんくれる人間はもちろん周りにいない。観光客や、荷を背負う商人らが鬱陶しそうにナツを押しのけていく。
「ね、姉様? 姉様ーっ!? ばばっばばバウムさんっー! ヤークくぅうううん!? うわ、うわあ――! はぐれちゃったぁ! 本当にはぐれちゃった!
ど、どうしようぅ~~~ーーーーーーっっっ!」
飛び上がらんばかりに髪を振り乱して辺りを見回すナツだった。大天街マッシルド。その広さと人の多さはナツも数日間の観光で重々身に染みている。現代のように携帯もないこのマッシルドで、一度迷えば三日会えない。蟻の巣よりも行き来の激しい人と物資に揉まれて、最悪生き別れることだってあるのである。
真っ青な顔になったナツは、ポーチの薬瓶が急に重さを増したかのように、目を見開いたまま俯く。どうしよう。どうすれば。頼りになる姉は側にいない――、とミナを想像した辺りで、ナツは一縷の希望に瞳をひからせて、がばっと顔を上げた。
『いいですかナツ、貴方は特によく聞いておくのです。はしゃいで迷子になるのは目に見えてますから。
いいですか? 迷ったらとにかく――、』
「そ、そうだ、迷ったならホテルに………………ぅう、」
――自分が迷うことを見越していたのかも知れない、と安堵する反面、口惜しい。
「わ、わたしだって……………………………………ぅう、何にもないや…………はぅ、」
情けなくみんなに迎えに来られて謝るハメになるのか、とナツはしょんぼりと肩を落とした。
迷った理由だって、エマのことが心配だったからだ。けれどそんな理由を口にすれば、姉は納得するだろうがバウムやヤークが気に病むのは目に見えている。……じゃあ別の理由を、といっても、誤魔化そうにも正当な理由が思い浮かばない。となると、お菓子につられて、とか、呆れられるような事くらいじゃないと自分には信憑性がない――。つくづく姉と比べて子共扱いされる運命なんだなぁ、と、姉のと比べるように自分の控えめな胸を見下ろす。
(私だって、考えてるんだもん…………)
「――お嬢ちゃんや、探しものかい」
「ひゃわっ! …………あ、はい?」
気が小さくなっていたナツは驚き混じりに呼びかけられた方を向く。……路地裏に続く道の入り口付近、一階がアクセサリ屋の六階建て――の、日陰。……鼻が歪に大きく長い黒フードの老婆が、小さな椅子に身を預け、小さな机の、頭より一回り小さいくらいの水晶玉のような宝石を両手で挟むようにして持ちながらナツを見据えていた。ぎょろりとした目が半眼の瞼から飛び出るかのように突き出ていて、ナツは背筋がぴんと伸びた。
「どうやら探しものしているようじゃて……占ってあげようかねぇ?」
「う、らない? あ、占いか……いや、あの、」
「……………ふむ、ふむ、……む。
探しものと言うより迷子になったんじゃね。ん?」
「……!!
何で分かるんですかっ…………まさか占いで……!?」
ナツはすぐさま老婆の前へ、机に身を乗り出して聞いた。
「いや、さっきお前さんとおそろいの儀礼服を下に着たお嬢ちゃんが通ってね。姉かな、とねぇ……一緒にいた坊主がなにやらローブをめくったからその時見えたんだよ。嬢ちゃんの襟から見える布と同じだったわぃ」
「なんだ占いじゃないんですね…………………
………………………………………………………
………………………………………………
………………って、それ本当ですかっっ!!??
ほ、本当なら、姉様はどっちに…………」
「はて、どっちにいったか。うーむぅ……?」
だが、ひぇっひぇ、と低く笑ってみせる老婆は、背中から一枚の板を取り出して、ナツに見せた。
『コロシアム本戦予想オッズ』
「あ、あの? ……あの~…」
「一〇枚買ってくれたら思い出すかもねぇ」
こっち? いやこっちだったっかね? と思わせぶりに指を道の至る方向に向けてとぼける老婆である。
「そんなぁ……、
…………………ぅううう、背に腹は代えられない……、でも、でも賭け事なんて………」
「――妹が大当たりしたら、迷った事もチャラになっちゃうんじゃないかい?
……お、またアラスト様が上がりよる。ダランも0.2倍加算と…」
水晶玉を見て呟いた老婆は、予想オッズの板の数字を書き直す。どうやら水晶玉は通信用だったらしい。
「で、どうするかね」
「…………た、確かに……」
ミナが歓喜して自分を抱きしめるほどに褒めるシーンを想像して、……むくむくとやる気が入るナツだった。
……現金だった。
実は同時刻、ナツを探していたミナ達一行も同じ手に引っかかり、予想オッズ表と別の老婆を交互に睨むようにして向き合っていたりした。
●――当てろ! コロシアム本戦優勝者は誰だ!――●
賭券売り「ここまで大荒れが予想されるコロシアムは十数年ぶりだぁね…まぁ、賭けが盛り上がって私らは万々歳だわ。酒かっ食らう男どももそうだが、あんたみたいな嬢ちゃんも金賭けるんなら真剣にやんな。気になる選手は簡単に説明してあげるよ」
ナツ「は、いっ、……よ、よぉーし……姉様から渡されてる四000シシリーあるからこれで20枚っ……!」
(姉様達が少しでも楽できるように、良いとこ見せなきゃっ!)
――その頃の、別の賭券売り――
ミナ「……今後の旅の資金になれば上々、ですね。ではソルム・ソネット・ラ・ヒカルを三〇〇枚いただきます。六〇〇〇〇シシ、」
賭券売り「あ、ああああんた正気かいっ!?」
ミナ「正気も正気です。三〇〇枚を早急に用意してください。妹の場所を教えていただかないとなりませんので」
賭券売り「は、はぁ……ちょっと、待っとき! ………………かぁ~、なんて客だい……」
※番号は予選でのグループ番号であり、本戦の対戦番号ではありません。
●1番 サラブエ・コーエンアドニ・ラ・ナナルダ
オッズ 135.4
賭券売り「コーエン郡域南部出身の蛇顔の獣人。両手と尻尾の剣の三本の剣舞、土魔法以外はめっきり魔術を緩和しちまう蛇皮の皮膚が武器って感じかね」
●2番 クルック・カントピオ・ラ・カプト
オッズ 331.7
賭券売り「カントピオ砂漠の北西部出身。戦士としてよりトレージャーハンターとしての方が名が売れてる奴だよ。鋼の鞭と多彩な幻惑系の魔術が特徴さ」
●3番 マルーディ・クム・ラ・サーヘバルッハ
オッズ 446.1
賭券売り「マキシベー王国領地のクム村出身の偏屈者さ。ニスタリアンの英雄の生まれた村だけにトラファルガーの真似をして逆手剣な格好だけど、ほとんど運だねぇ」
●4番 ノースランド・タンバニーク・シュトーリア
オッズ 94.5
賭券売り「タンバニーク王国では唯一の出場者だ。王宮魔術師を凌駕する魔力で強化した肢体でもって重戦士並の一撃を放つ。正統派の剣士、いや騎士といった感じかねぇ」
●5番 マハル・マキシベー・ラ・ブックナー
オッズ 631.4
賭券売り「ニスタリアン戦士学校の生徒さ。剣も魔法も中途半端、だがそれゆえに上手く組み合わせて辛勝してきているガキンチョ。どうかねぇ、怪我しないと良いんだけど」
●6番 ダルルアン・エレティノ・ラ・パーミル
オッズ 48.3
賭券売り「ニスタリアンの第一位。去年の大会はなんと二位だったね。地力もつけて今度はもっと良い線いくと思うよ。優勝に十分絡みうる、両手剣使いだ」
●7番 テオ・アグナルン・ラ・カッツィオ
オッズ 222.5
賭券売り「砲撃系の魔術士だね。『圧縮速射』……曰く『ぴすとる』って概念の高速狙撃が見せ所。ゼファンディア魔法学校を中退して旅に出て、その旅先で会得したんだとさ」
●8番 キーシクル・マッシルド・ラ・ファンナ
オッズ 75.2
賭券売り「ニスタリアンの生徒で第三位。決勝戦では第二位を下した弓使いさ。地元だから人気も高くて少々倍率は低めだがね。距離をとった戦いなら一二を争うはずさね」
●9番 アエラ・クロテッサ・ラ・マグダウェル
オッズ 9.6
賭券売り「ゼファンディア魔法学校第一位の、一ヶ月前の予想では優勝候補第一位だった子さ。魔良し武も良し。革新的な魔術技術を発明したってもっぱらの噂だよ。この子はかたいねぇ」
●10番 ペトー・クロテッサ・ラ・ルリューゼル
オッズ 110.9
賭券売り「ゼ魔校の第二位だね。お嬢様らしくない、魔力を拳に載せての近接戦闘がウリだよ。今は顔が真っ白のマスクをかぶってるみたいになってるがねぇ。どうしたのかね。……酷く不気味さ」
●11番 ペンテニュー・ドロングフ・ラ・トスラード
オッズ 149.7
賭券売り「隣大陸のドロングフ島っていう小島の灯台守さ。海竜すらも押さえ込む雷力は近隣国から強く求められてる。雷電竜、っていう大規模固有魔法を持っているよ」
●12番 カイオイ・コーエンアルバ・ラ・オルチノ
オッズ 287.3
賭券売り「コーエン郡域北部の天才魔法少年だね。最年少の11才。良く奇声を発するけど実力は本物。他の対戦者にひけはとらない――まぁ、出場も早すぎる感があるけどねぇ」
●13番 ソルム・ソネット・ラ・ヒカル
オッズ 456.5
賭券売り「信じられないけど魔力容量955、今大会二位を占めてる。ギルドも最近始めたみたいで情報がないが、ラングクロフト近隣出身の巡回神官って話さ。ひっひっひ、予選でも貴族らにケンカ売ってたしねぇ! うちらの中では、アラスト姫が制裁に当てられるんじゃないかともっぱらの噂さ。勝てない奴には誰も賭けないよ。重力の使い手らしい」
●14番 エナ・サートス・ラ・エマ
オッズ 44.9
賭券売り「全盲の殺人鬼、といった感じだね。華奢な女の子の見た目をして巨大な槍と小斧を振り回してる。とにかく力がバカ強いし雷のように速いから、棄権の声を上げる前に輪切りの死体にされてる。本戦でも死体の山を築くと思うとゾッとするよ……勿体ないねぇ可愛いのに」
●15番 ボンモンル・アグナルン・ラ・キャスパード
オッズ 55.4
賭券売り「王都の若き王宮魔術師。天水のキャスパード、の異名を持ってる。マグダウェルに練習試合で負けたのが腹いせで出場したとか情けない理由だけど、ネームバリューのせいかオッズも低め。地力はあるんだけどねぇ」
●16番 バルテミッサ・テティオラ・ラ・アラスト
オッズ 1.1
賭券売り「バルティートニア大国次期王位継承者。見た目はまるっきり幼い子共だけど……圧倒的としか言いようがないね。予選でもまるで底を見せない。たぶんこのままいったらすぐに1.0になるから賭けない方が面倒なくて良いよ。今世紀最強の魔術師と呼び声も高い、大本命さ。まぁ飽きたら棄権するかもだけどね」
●17番 テテロペテル・ホンバレーズ・ラ・ムロゥ
オッズ 243.1
賭券売り「隣大陸の、魔王に潰されて廃国となったホンバレーズ王国の出身らしい。暗殺者然とした感じの通り、ナイフの柄で相手をほぼ一撃で仕留めてる。派手さがないから倍率も高いけど、何か隠し持ってるんじゃないかと思うよ」
●18番 アーラック(姓地・秘匿希望)
オッズ 5.9
賭券売り「……一番賭けを荒らした奴と言ってもいいね。信じられないけどこの名の通り、大陸を騒がしてる大盗賊団の首領さ。圧倒的なネームバリューはアラスト陛下代理の次点。一貫してフードに身を隠したままで不思議な剣と魔法を使う、正体不明の男さ」
●19番 バルドーウェ・ランラン・ラ・ダラン
オッズ 155.5
賭券売り「隣大陸出場の巨人で、放浪の大剣使いさ。八ニール(四メートル)もある極太の鋼剣に火炎の魔術を付加して自由自在に振り回すんだ。私も予選を見てみたけど、あながち竜王種の首を落としたって話も嘘じゃないと思うね」
●20番 サリウス・ベーツェフォルト・ラ・ヴァルサー
オッズ 238.0
賭券売り「ベーツェフォルト公国の若い女王宮魔術師だよ。オドオドして対戦者の顔も見れないような子だけどけど、木力による『吸収』は予選でも重傷を負わせちまうほどさ。自分で怪我させといて自分が棄権しかけるなんて言う事もしたし、どうもいまいち賭けとしては信頼できないかねぇ」