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十話 邪神と無力とその答え (前)

 有り金を駆使して最低限の装備をした私は、夜の草原を奔る。


「くそっ…クソクソクソ…! くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ…!!!!」


 旅人服にマント、ショートソードと黒皮の楯。

 一歩一歩はギリリーやアグネといったベテランをも上回る速さと距離で、すれ違いざまに現われるモンスターは、止まらずにそのことごとくを安物の剣で八つ裂きにした。



 自信が。


「あのゲスめ…女の敵め…!!」


 自分を組み伏せて弄んだ男の顔ばかりが脳裏を埋め尽くす。

 噛みしめた。

 白い歯が、星々に照らされて(りん)とうち光る。


「くっそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


 自信が、足りない…――!!!







「ミナ、シュトーリア見なかった?」


「いいえ? あのままお休みになっていたのではないですか?」


 ようやく話にも満足したのか三人でお茶をいただいているところだった。ミナのを一口俺ももらう。今、女将さんが俺の分もとお茶用のカップを取りに行っていてミナとナツと俺しかいない。どうやら他の宿泊客も今日はいないらしい。


「ギルド登録はしてきた。もうベーツェフォルトに行く必要はないよ。ここを中心に公国の様子を探ろうって思うから」


 ほれ、とB級のレリーフの入ったギルドカードを見せる。


「わ…わ――っ!!! すごいヒカル様! いきなりBだなんて…!」


「君は僕が邪神だって事忘れてるだろう」


 一瞬驚いたような顔をしたミナだが、


「いえ…ヒカル様のことですからうまくやったのでしょう。ではこれからギルドの依頼を受けていくと?」


「そうなんだよなぁ…でもチッチ達を置いておくわけにも行かないし、離れ離れになってるの正直きついし…」


 あの声を聞きながら寝れないなんて切なくてどうにかなってしまいそうだ。起きるなら『ぱぴよー』で起きたい。寝起きた俺の腰にダイブしてぴょんぴょん元気にジャンプしていてほしい…っ。


「では一度村へ戻りましょう。シュトーリアのことは心配ですが、彼女も冒険者です。こういう場合の心得も分かっているでしょう。まぁ、本来なら…ヒカル様にはなくとも、私やナツに一声かけていくのが筋だとは思いますが…」


「姉様、でもあの傷ではまだ歩くのがやっとのはずですよ。足の筋肉を負傷されていましたから、余程の回復魔法でも…数日の安静を必要するはずです」


「それにしては痛そうな素振りなかったよな…」


 全身をくまなく触って確かめたから分かる。大体アキレス腱とかを切ってしまった場合、そこをいくら縫われたとしても一ヶ月は触ると痛いし妙な感覚がつきまとうもんだ。左腕やっちまった時はやばかったな…このまま俺左腕上がらないのかなと本気で心配したし。何より一週間はまともに夜寝れない痛さだったのだ。


「ヒカル様、私シュトーリアさんの部屋見てきますね。姉様はどうします?」


「………………いえ私は良いです。どうやら、外が騒がしくなってきたようですから」


 片目を閉じて顔をしかめるミナに、察したのかナツはそれ以上追求しなかった。





 一〇分もしないうちに村長が宿屋に駆け込んでくる。


「ヒカル殿! またもや魔物の大群じゃと! 

 ハッハッハ、ヒカル殿にはギルドになっての初陣ですぞ!!」


 もうよい子は寝る時間な雰囲気なのに、完全装備で受付前で仁王立ちする六〇才である。腰には両刃の剣を二本携えていて、無双する気満々な気概が伺える。


「俺一人いなくても…」


 あの程度だったら正直ねぇ。俺はシュトーリアの捜索がしたいのだ。あのまま返したとなると俺の良心の呵責が酷い。


「なら、討伐が終わってからで良いですから人捜し手伝ってもらえませんか?」


 こんな女の子です、と簡単に容姿を伝える。


「そのような女子でしたら直ぐにでも。ハハ、この村の傭兵はほとんどが戦友でしてな、数日足らずでヒカル殿にお知らせできるものと。もちろん銭は支払ってもらいますが、な」


 なぁにたかが一村の人捜し、200シシリーくらいで満足しますぞ、と、何とも。







「あれ?」


 二〇〇人近い傭兵団の一番後ろの所でナツが空を見上げて不思議そうに言う。


「何か空に…星を横切った感じがしたんだけどな」


「鳥獣か何かでは?」


 ミナがナツを振り返りつつ言う。その隣で俺はくすりと笑った。まぁ飛行機とかないしな。


 夜の草原を二〇〇本の松明を頼りに進軍する俺達は、注目の的。

 だが臨むところな彼らは、まるで魔物を、火に寄ってきた虫か何かのように互いの話の片手間に行い、進軍していく。正直後方の俺達の所に回ってくるのは死骸だけだ。ナツが下を見ないように必死だった。宿屋で待ってれば良かったのに。


「まるで…波ですね」


 ミナが目を閉じつつ言う。


「いくつもの魔物の群れがこちらに向かってきていますが、群れの層が幾十にも。まる砂漠で爆発し、出来た大穴に飛び散っていた砂が転がり込んでいくみたいなのです」


「数って分かるの?」


「いえそこまでは。精々群れの、飛び抜けて力の強い魔物の位置が分かる程度ですから」


 ミナは前方の傭兵団を一望し、


「その力の強い魔物も傭兵団の方々はよどみなく片付けていっています。確かにこれは国有の軍隊とも互角に戦い分けられるでしょう」


「あ、またちらっ、てなった…」


「上ばかり見ているからですよ。貴方も戦士として出た以上周りに気を配りなさい」


「だって……」


 ミナが言うも、ナツがとうとう俺にしがみつきながら呟く。影が怖いのではなく下が怖いだけなのがなんとも口惜しい。


「そーら、ナツ」


 てい、とお嬢様だっこしてやる。


「きゃぁああああっ! や、やだヒカル様! 下ろしてくださいっ、恥ずかし…いっ、すごく、………………・・見てるぅ…」


 おいおいそう言うのは部屋でやれよー! と荒くれどもがはやしてくるが俺は笑って無視した。


「首に捕まってくれるか?」


「ナツ。ヒカル様は下ろす気はないそうですよ」


「姉様まで………………………もう…」


 し、失礼します…と首におずおずと捕まってくる。少し軽くなって俺とナツの顔がぐっと近くなった。

 ミナが持つ松明に照らされて、ナツの上目遣いがとてもよく見える。

 靴の先は見えないように俺の抱く手の向こう側だ。いくら『穿いてない』とはいえ他の奴らに見せる気はみじんもない俺はしっかりスカートを巻き込むようにしてナツを抱き上げている。タイトスカートはいてるように太股がむっちりしてるのを想像するとちょっとイイ。


 ミナが、隊列の情報を直ぐ近くの女性に聞きに行って俺達を少し離れた。

 少しだけ暗くなる。だが辺りは松明で満ちていて、顔のすぐ側のナツの顔が見えなくなることはないのだった。


「ナツ」


「は…い?」


 ナツの吐息が、俺の首筋に当たる。俺の息も頬辺りに感じているだろう


「お前はミナが…残り少ないって知ってるのか?」


「………………………………どうしてそれを」


 ナツの顔は見ない。話ながらも周りに気を配っていたからだ。


「ミナからちょっとね。で、ナツは色々考えてる女の子なんだって教えてもらった」


 ざっざっ、と傭兵団の足並みは一定の速度で。俺の腕の中のナツも、俺と一緒の足並みに揺れている。


「ミナは好き?」


「…………勿論です、私の自慢の姉です。この世界の誰にだって負けませんから」


 お世辞じゃないんだろうなぁ…事実凄まじいしな。


「俺に奪われるためにそうなった、としてもか」


 どうしても聞いてみたいことだったのだ。

 こんな時に聞かなくても良かったのだけど。


 ほら。


 もしかしたら。俺がマサドで生活するようになったら、…ミナは巫女だからと行って俺についてきてくれるだろう。彼女には邪神としての俺の安否を常に知り置く必要があるんだからな。

 だけど、ナツにはその義務はない――。


「それは姉様だけじゃないのです。あの家は…邪神様をお迎えするためだけにあったのです。私達姉妹も、そうです」


 洞窟から出てきた俺を最初に出迎えた村人は、ナツだった。

 ミナも言っていた。ナツは、自分が食された後の、家までの案内役だと。


「…姉がいなくなった時、ヒカル様を村の発展へと導くのが妹である私の役目だったのです。今回は…姉がいなくならなかっただけのこと。だからといって義務から解き放たれたわけではありません。残り少ない命なら、最後まで助け、引き継ぐのがニルベの巫女の妹である私の役目ですから」


 なんともはや、勇ましい。あの姉にしてこの妹在り、か。


「と言うことはやっぱりナツに恩を売っておくのは正解だな」


「…ヒカル様は本当に邪神様なのかどうか、私、疑問ですよ」


 姉がいれば怒られているだろう毒を、笑いながら吐いてくる少女。

 どきっとした。毒のつもりなら良いけど。


「当たり前よ、あの女ホント二人きりになったら女でな…」


「あ、ああ、…………それはそれは…」


 別に聞きたくもないといった無理矢理な態度でそっぽ向く。

 耳がぴくぴくと動き、聞きたくてたまらないのを俺は分かっていたので、あったことなかったことを真実みを込めてあれこれ話してやった。

 ふふ。さぁ空を妄想()べ少女達よ。




「そろそろ分散してきたようですね…ここが中心となりそうです…!

 ナツ、私とヒカル様とで三つどもえの陣を!」


 片手ずつ八つの火炎弾の輪っかを作ったミナが言う。

 

「底より至る炎蛇の血、とこしえの灯となりて――」


 その隣で詠唱するナツ。既にその一文の前に四つの呪文を編んでいる。ミナが言っていた件の高位呪文だろう。ついと見上げてみるとナツの頭上一メートルほどにマグマがたぎっているような小さな炎玉が、


「…この呪文は威力はありませんが待機性と索敵性があります。私も楽が出来そうですね」


 何やら呟くとミナの両手の炎輪がすっと腕に引っ込む。


「双炎蛇の陣!!」


 炎球はナツの身体をすり抜けて地面にドン!と音を立てて染みこんでいく。するとまるで波紋のように半径一〇メートルに魔方陣が広がる。冒険者が一瞬慌てるが、相打ちの心配がないことを確認してか安心して戦に戻っていった。


 両手で△を作るようにして目を閉じ集中しているナツ。


 ドン!

 突如地面から飛びでてきた幾多もの炎の蛇の奔流が、暗がりから俺を狙っていたウルフを食い殺し、跡形もなく。


「攻撃の度にしか魔力を消費しません。精神的にも籠城戦に向くやり方ですね」


「籠城戦? 掃討戦の間違いだろ」






「いえ。これは『罠』です。――申し訳ありません。早く気付くべきでした」








 一時間前――


「おか、しい…」


 魔物の大群に遭遇したシュトーリアは、あろう事かその群れを正面から突っ切っていた。

 魔力で強化された脚力は腕にまで及ぶのか、彼女の一撃一撃も重戦士の斧撃と相違ない。低級の魔物は一切相手にせず、中級レベルから対処に当たる。ゴブリンなどは蹴り飛ばして武器に代えてしまう。

 二倍の体格差があるオーク兵を剣風で吹き飛ばし、小さなクレイドラゴンの障壁を踏み台に跳躍、その首を刈り取る。今のシュトーリアを彼女の師匠が見たのなら、その成長に涙すらしたかも知れない。ほんの三年前までは寝たきりの生活だったのだ。

 彼女自身自分の戦いぶりに不満はない。

 最高潮と言って良い。

 だが怪訝な表情はいつまでも晴れない。


(群れは本来一種から二種類が限度のはず…)


 だからこそ群れの『層の薄さ』を前提にしての突撃だったのだ。

 このような混成群聞いたこともない。

 何より、本来ならこの地域にいないような魔物まで出現しているのだ。初めて見る魔物もいる。だが彼女は魔物を視認した瞬間にその魔物の見た目から攻撃手段を予測し、その通りに対処を取る。

 Dランクの戦士のそれを越えていた。C…Bに届くやも知れない。彼女の身体能力はC。最初は圏外のα-…つまりEからスタートした彼女が大の大人を投げ飛ばす筋力を得たのは、彼女の、いや彼女だからこそ許された――強力な魔術のおかげだった。


 オーク兵のリーダー格が打ち込んでくる。彼女の疾走はそこで止まり、彼女は鍔迫り合いながらも自分に群がってくるだろう周りを警戒した。だが、


(なぜ素通りしていく…!!!!)


 まるで自分を相手にしても仕方がないかというように。あるいは逃げるのに必死、と言った風に。


「ちぃ…このオーク兵、…魔力付与されているのかも…!!」


 人間が使う呪文よりは効果は低いが、それでもオーク兵の筋力を考えると均衡するのがやっとだ。

 シュトーリアは半身を退くと素早くその懐に滑り込みオーク兵を一閃した。血のりが吹き上げてくる前に身体を蹴り倒す。血のりを振って払い、初めて大きく息をつく。

 魔物の群れが自分とオーク兵を避けるように通り過ぎていく。

酸素を欲していたらしい自分の身体は慌てるように酸素を吸い込んでいた。あまりの連続戦ゆえ、時間を忘れていたらしい。

 星々の灯がなくなる。




 闇だ。




 星々の光りが、そこから先は失われている。

 見上げるとそらまでも、その『辺り』から先が見えない。

 冷汗が、自分の身体から水分が一斉に逃げ出すかのように――。


 それが余りにも大きすぎる魔物だと知ったのは、突如闇が円上に赤く光り咽せるほどの悪性を含んだ光線で自分を飲み込んでから、だった。








『籠城戦』は続く。


「アルが、やられた!!!! 誰か回復魔法を頼む!」


 言われるまでもなく、とギリリーが手をかざす。起き上がるも朦朧としているアルを隊列の奥に押し込むと、


「おいおめぇら、俺の前で無様な戦い方しやがったら承知しねぇからな!!??」


 オーク兵を頭突きで即死させるギリリーに傭兵団は士気を高める。


「そーらおつぎだよっ!!!!」


 アグネが鉄球の一閃。三〇もの低級中級を胴体やら頭部やらを『薙ぎ取って』みせる。


「アグネ後ろ!」


 風を切る矢の一撃がアグネの後ろで振りかぶっていたからくり騎士を射殺す。


「ティンいかしてるぅー」


 ティンと呼ばれた大和アマゾネスがアグネをしかりつけると、すぐさま次の矢を次ぎ、


「アグネ、『アレ』なんだと思う」


「魔物ね」


 身体は動かしながらも冷静に言うアグネ。でも二人の意識の先にいるのはまるで小さな森だ。夜視に優れているティンはその身体の表面に触手のようなものがついているのを捕らえると、すぐさま戦術を『撤退戦』に切り替えた。


 その時、突然赤いおぞましい光が触手の主から展開された。円状だ。赤い丸その物だがティンには分かった。あれは円内に隙間なく術式が展開された高密度の魔方陣であることが。



 放たれる。


 雷にも似た一撃は地面に向かって斜めに放たれ、地表に溢れる魔物達を圧倒的な大呪文級の爆風で打ち上げてみせた。



 その爆発の光にその巨大な肢体が露わになった。



 自身が照らされることも計算済みならなんと『理解している』魔物だろうと、ギリリーでさえも総毛だった。

 少なくとも自分達CやB級の冒険者ではまるで刃が立たない。AA級…もしくはS級といった、個で一国が落とせる実力を持った者が必要なのは明白だった。弱点などあるはずがない。

 たとえ、この魔物がそれでも『頭部を失っている』ことを知っていたとしても、である。ヒカルがそれを完全に目視していたなら巻き貝だ、と呟いていただろう。


 これが、大悪魔のなれの果て――『死体』だと誰が知ろう?


「アレなんだ」


 かあっ、と今赤く向こう側で光ったけど。


「…………………っ、やっと感知圏内に入りました。視認できているのに遠すぎて感知が届かないなんて…!!」


 八万と三〇〇〇…ミナは周りの兵士達の苦しいかけ声の中、呟くような声でそう言った。


「…………………………無理だろ、今すぐ俺がいかないと」


「でも…私達だけ撤退するのは難しくありません……………………ナツ」


 はい、と陣を解くナツ。足下の結界陣が消え、辺りは剣音と火花の暗闇に戻った。


「ちょっと待て。俺が出れば死人も…」


 いつものように魔物だけ対象とした結界を展開すれば、


「ヒカル様には分かりませんか今の状況が」


 ミナは周りを見回すように、と、広く、横に手で空を切った。

 魔物と人間が入り乱れていて、前衛も後衛もなく、今にも決壊しそうな――。


「この状況です。魔物の中には既に冒険者が飲まれている可能性があるのですよ。今日の昼、魔物の雪崩でマサドの囲いを破ったことをお忘れですか?」


 もう何十発炎弾を撃ったか分からないその腕で、額の汗をぬぐいつつ言うミナだった。


「もし魔物の雪崩に冒険者が巻き込まれるなら、『もしかすると』たすかっていたかもしれないその冒険者は、魔物の海に巻き込まれ確実に死ぬでしょう。ヒカル様のせいで」


 冷静に言うミナと俺達の周りでは、文字通り『死闘』が繰り広げられている。

 敵味方が入り乱れ。

 きっと、本能に近い魔物と違い、賢い人間は――既に感じているのではないか。

 ギリリーが避けろ、と吠え猛る。

 アグネが肩の負傷に顔を歪め、未だ途切れぬ魔物の群れを睨むが、既に力がない――。


「これからヒカル様は有名になられるでしょう。なにせニルベが誇る邪神です。圧倒的な結界魔法、そこに人々は恐れ、また希望を見出したりもするでしょう。

 ――ですが、」


 オークの剣を受けきれず片腕を切り落とされる剣士がいた。

小さい翼竜に目を潰されて、行動不能の所を空に連れて行かれる魔術士がいた。

 負傷した仲間を楯で庇い、庇った腕をそのまま『持っていかれた』戦士がいた。

 

「だからこそ、今ここでマサドの不運な傭兵を殺して不信感を与えてはなりません。

 我がニルベの望みはベーツェフォルトの陥落、ニルベの民の自由の確立。

 そのために傭兵団は必要な戦力になってくるでしょう」


 ミナは言いながらも、村長さんが俺達を歓迎してくれた姿を思い出せ、と目で言う。

 俺にとってはこの世界に『生まれてから』二度目の歓待。

 でもアレはミナにとっては、目的のための繋がりだったのだ。


「私達にできる事はここで終わりです。すぐに撤退し、ニルベ村にてこの魔物の群れについて対策を練りましょう」


 ナツと俺の手を引いて引き出すミナ。

 その身に王宮魔術士五人分を宿しておきながら、この戦いを『見限った』のだ。




「まだ分かりませんか」




 足がまるでその場所に杭で縫い付けられたかのような俺に、






    「ここでは、今のヒカル様は、何の役にも立たない」









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