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孤児で平民の私を嫌う王子が異世界から聖女を召還しましたが…何故か私が溺愛されています?  作者: 灰銀猫


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あれからの事

 その後私は、湯浴みをしてから軽い食事を頂きました。三日も眠っていた私でしたが、スープを二杯も頂いてしまったのは私にとっても想定外でした。しかも、それでもまだ物足りなかったのですが、レリアに「三日も食事をしていなかったのに急に食べたら身体に悪いです!」と言われてしまったのですよね。でも、三日も眠っていたのに凄く体調がいいのは、聖力が満ちているからでしょうか…


 そして今、セレン様の応接室です。リアさんはクルルの姿で私の膝の上で、ルドさんも何故か似たような子犬の姿になって、リアさんと一緒に私の膝の上です。えっと…ルドさんって鳥みたいな姿ではなかったでしょうか…何と言いますか、当然のように膝に乗って来られたのが余りにも自然だったのと、ビックリして何も言えなかったのですが…


「あの後の事を話そうか」


 セレン様がお茶を一口飲んだ後、そう切り出しました、そうです。気になっていたのは意識を失った後の事でした。リアさんに危ないと思ったら離れるようにと言われた私でしたが、結局限界を超えてしまったのか、気を失ってしまったのです。あれは…失敗しました。


「まぁ、実を言えば私も、意識がなかったんだが…」

「じゃ、私が説明するよ」


 クルルの姿のまま、リアさんがあの後の顛末を話してくれました。あの後、異形のルドさんを抑え込んだリアさんは、陛下達を一喝したそうです。ろくな知識もなく召喚を二度も行ったのは、リアさんにとっても許し難い事でした。元々セレン様は術式が不完全で危険だからやめるようにと忠告していたのに、それを丸っと無視したのだから当然でしょう。リアさんはセレン様の従魔なので、セレン様を蔑ろにする事は自分を蔑ろにするも同然だと大層お怒りだったのだとか。

 聖女様だと騒ぐ陛下達の前に雷を落として黙らせたリアさんは、今度やったら王宮ごと吹っ飛ばすと宣言し、ルドさんもまとめて私達を回収してこの離宮に戻ってきたそうです。


「リアは私の世界でも相当な力を持つ聖獣だからね。こっちではより力の利きがいいから、この世界じゃ最強かもね」

「でも、ルドさんもお強そうでしたが…」

「ルドも強いだろうが、リアに比べたらまだ子供だからね」

「ええっ?」

「ああ、リアはもう三百年は生きている筈だよ。ルドはまだその半分も満たないんじゃないかな?」

「さん、百年…」


 セレン様の世界は…私には理解出来ない事ばかりです、ね。二十代半ばに見えるリアさんが三百歳で…私よりちょっと上に見えるルドさんはその半分って…しかもあんなに暴れていたルドさんを…


「リアたち魔獣は強さが全てだから、自分より強い相手に歯向かったりはしない。だからルドもリアには反抗しなかったんだろう。強い者に手を出すのは自殺行為だからね」

「そう、なんですか…でも、ルドさんって鳥みたいな姿だったのでは…」


 もう、私の想像の範囲を超えた事ばかりで、何でもありみたいな感じですわね。何と言いますか、色々と麻痺している感が否めませんが、気になった事は聞いてしまった方がよさそうです。


「ふふっ、ルネがこの姿を気に入ったからよ」

「ええ?」

「ルドもルネの魔力が気に入ったみたいね。ルネはこの姿が好きだって言ったら真似したのよ。きっとルネに気に入られたいんじゃない?」

「ええ?でも、この世界に呼ばれたのは私のせいで…」

「そう?でもルドは気にしていないみたいよ」

「そうなのですか、ルドさん?」


 あの、まだ自己紹介も何もしていないので、ルドさんとお呼びしていいのかわかりませんが…私が話しかけると真っ黒な子犬の姿のルドさんは、ちらっと私に視線を向けましたが、直ぐにまた丸まって目を閉じてしまいました。


「ふふ、照れてるみたいね、ルド」

「えぇ?」


 て、照れてるんですか、これで?何だか話しかけるなと言われたように感じましたが…


「ルドったら素直じゃないわね。まぁ、まだお子様だからね。でもルネの事は嫌っていないから大丈夫よ」

「そ、そうなんですか、ルドさん?」


 一応そこは確認しておきたくて、思い切ってそう問いかけると、ルドさんは軽く尻尾を振りました。ほら、そう言ってるわよ!とリアさんが言いましたが…それでいいのでしょうか…


「ルドはこっちに来たばかりだし、立て続けに魔術を使ったから疲れているのよ。ルネの魔力が落ち着くんだろうね」


 リアさんが得意げにそう言いますが、ルドさんは無反応でした。本当に疲れているみたいですね。私の魔力で疲れが取れるのならいいのですが…背をそっと撫でると、一瞬ビクッとしましたが、その後力が抜けるのを感じました。リアさんが言うように、落ち着いてくれている、みたいですね。


「それで…国王陛下達は…」


 そうです。いくらルドさんを抑えたとはいえ、陛下達を魔術で脅したリアさんにお咎めはないのでしょうか。いえ、リアさんに陛下達が歯向かう術はないのかもしれません。でも、一国の王ですし、あちらにはたくさんの臣下や騎士達もいます。もし本気でリアさんやセレン様を害しようとすれば、出来ない訳ではないでしょう。リアさんだって無敵でもなければ不老不死でもないでしょうから。


「ああ、そこは心配ないわよ。ちゃーんと対策はしてあるから」

「対策って…」

「私達に危害を加えたら、この国の結界を今直ぐ破壊するって言ったのよ」

「えええっ?」

「ああ、ルネ、ごめんね。ルネが今まで頑張って維持してきたのに。でも、それくらい言わなきゃ、あいつら理解しないと思って」

「そ、それは…陛下達のせいでもありますし…でも、破壊って…」

「この国の結界、かなり綻んでるから、ちょーっと魔力で突けば壊れるわよ。別に私でなくったって、ルドやセレンでも可能だし」

「そ、そうなんですか…」

「そうよ」


 迷いなく言い切ったリアさんに、私は何と答えていいのかわかりませんでしたが…でも、陛下や国にとっては結界を壊されたらたまったもんじゃないですよね。今は維持するのに精いっぱいで、新たに結界を張れる人なんていませんし。そう言う意味では、リアさんの言う通り、手を出してくる人はいないのでしょうし、そう願いたいです。



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