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レリアとの再会と懸念

「ルネ様!」

「レリア…!」


 王太子殿下との謁見の後、私は聖女宮の自分の部屋ではなく先ほどの客間へと案内されましたが、部屋に入るとレリアに声を掛けられました。ずっと彼女の事が気になっていたので王太子殿下に尋ねてみたところ、直ぐに侍従の方に話をしてくれたのです。

でも、こうも早くに会えるとは思っていませんでした。嬉しくて私は、思わず抱き付いてしまいました。


「レリアは今までどうしていたの?」

「私は謹慎を命じられて、ずっと自分の部屋におりました」

「そうなのね。酷い事をされなくてよかったわ」

「ルネ様こそ、よくご無事で…」


 そう言ってレリアは涙ぐみました。そこまで心配をかけてしまっていたなんて…申し訳ないと思いながらも、こんな風に思ってくれる事がとても嬉しいです。私の容疑も晴れたのは間違いないようですし、一安心、と思っていいのでしょうか。


「それにしても…ルネ様、一体そのドレスは?」

「あ、これ?私にもよくわからないのよ。牢から出された後、湯浴みしてこれを着せられたから…」

「聖女のご衣裳ではなく、ですか?」

「ええ、そうなの」


 レリアが疑問に思うのも仕方ありません。私が聖女になってからは、聖女用の衣装以外を着る事などなかったのですから。聖女用の正装以外でも、聖女様にと誂えた白を基調とした服を支給されていて、それ以外を着る事は許されていませんでした。


「何だか変な感じだわ」

「何かお心当たりになる事はありませんの?」

「それが…」


 私はレリアに、王太子殿下から聞いた話をしました。あの異世界から呼ばれた男性が私を望んでいる事、男性の魔力が強いため、それを緩和するには私の力が必要な事、私が側に居るのが結界を維持する条件など、です。


「それって…まさか情婦として、とかではありませんよね?」

「まさか…だって、私は聖女よ。そんな筈は…」

「でも、これからはその男性が結界の維持をされるのですよね?」

「え、ええ…そう伺っているけど…」

「だったらルネ様が聖女でいる必要もなくなりますわ。それなのに側に置きたいだなんて…」


 レリアが眉を顰めましたが、私は言われた事が予想外で混乱してしまいました。だって、情婦だなんて…


「でも、私は美人でもないし…そんな、情婦だなんて…」

「では、そのドレスは?今まで聖女の服しか支給されなかったのにおかしいではありませんか」

「それは…」


 そう言われてみれば、確かにその通り、です。ですが、私などガリガリで木の棒のような体型ですし、背も低いし、顔だって美人には程遠いです。頬もコケて骸骨のようだとよくセザール殿下に言われていましたし、目の下のクマは年中無休で消える事はありません。外に出ないせいか顔色も青白いですし、目は血のような赤で気味が悪いと言われています。そんな私を情婦になどしたがる男性がいるでしょうか…しかもあの男性は、これまでに見たどの男性よりも身目麗しいのです。私でなくても、女性などより取り見取りでしょうに…


「あの男性はとっても美しい方だったわ。どんな女性でも虜にしてしまうような。そんな人が私を情婦にしたがるとは思えないわ。きっと私の聖力が必要なのよ」

「ですが…」


 レリアはまだ何か言いたげでしたが、それはきっとあの男性を見ていないからでしょう。きっと一目でも見れば、私が言いたい事は伝わる筈です。


 そう言った私でしたが、一体男性の側で何をするのかはさっぱりわからないままでした。王太子殿下がお付け下さった王宮の侍女にそれとなく聞いてみましたが、皆さん何もご存じないのか、有力な話は聞けませんでした。

思い切って王太子殿下にお手紙を渡しましたが、何も心配いらない、必要なものはこちらで手配する。特に何かをして欲しいとも聞いていないから安心するようにとのお返事が届きましたが…それで安心出来る筈もありません。




 そんな状況で三日を過ぎた日に、王太子殿下が訪ねて来られました。


「ルネ殿、明日から彼の元に顔を出して頂きます」

「はい。それで…私は何をすれば…」

「特にする事はないと、彼は言っていました。ただ、時々、彼の力を中和して欲しいと」

「中和、ですか?」

「ええ」

「それは一体どうやって…」

「詳しい事は私も…私は聖力もありませんから、説明を受けても多分理解出来ないでしょう。詳しくは直接聞いて下さい」

「わかりました」


 それから私は、男性の事を簡単に教えて貰いました。お名前はセレン=アシャルティと仰い、二十五歳だそうです。元の世界では王族に連なる身分である事、強い魔力をお持ちで魔術というものが使える事、その力を使った魔道騎士をされているそうで、かなり偉い方だそうです。

 魔力はこちらの世界では古の邪悪な者達が使った異端の力と伝えられていますが、その男性の話では聖力も魔力の一種なのだそうです。ちょっと信じられませんが、男性の世界ではそのように言われているそうです。男性は聖力も使えるとかで、結界の維持が出来るのはそのせいなのだとか。


「何だか、夢のようなお話です…」

「そうだね、こちらの世界では魔力は既に失われた力と言われているからね」


 男性の事は何となくわかりましたが…正直言って不安しかありません。中和と言われても、何をさせられるのかもわかりませんから。それでも、私には選択権などありません。せめて痛い事や苦しい事がない様にと祈るしか出来ません。

 それでも、聖力切れを起こしたあの時、助けて下さったのはあの男性だったと聞いています。ほとんど覚えていないのですが、まずはそのお礼を申し上げないといけませんわね。





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